中東の世界観です。
日本では、日本の文化を体現しているものとして、「サムライ」と「ゲイシャ」が世界に広まっていますが、僕はアラブの同じようなものとして、ラクダを使って砂漠を旅する遊牧民の「ベドウィン」が居ると思います。
ベドウィンとは、アラブの伝統的価値観を体現するとされる、生粋のアラブ人のことです。
日本のサムライ文化と良く似ているのが、アラブのベドウィン文化ではないかと、アラブの民話を読んでいて、少し感じました。ジンやイフリートを信じるところも、日本の八百万神と同じで、同じ魂を共有していると思います。ですが、アラブ人は多神教や邪教の神が嫌いです。そこは汎神論の日本に当てはまることでしょう。
中東は、イスラム教の地域として知られています。この中東という言葉は北アフリカや西アジアに対して使われる言葉で、エジプト、トルコ、パレスチナ、サウジアラビア、イラン、パキスタンのような地域を指します。
中東では、イスラム教の神「アッラー」と、天使ジブリールの啓示を受けて神の言葉クルアーンを記述した最大の預言者「マホメット」を信じています。
イスラム教の特徴は、6信5行です。6つの存在(神や預言者)を信じ、5つの行い(礼拝、断食、巡礼など)を行います。
イスラム教について詳しくはイスラム教を参照してください。
イスラム圏において、本当に国王とされるのは、サウジアラビアのサルマン国王だけです。
他の国は、サルマン国王の配下として「首長」と呼ばれます。この首長たちが、アラビア地域のそれぞれのエリアを「王」として支配しています。
イスラム教には、シーア派とスンニ派の2つの宗派があります。
世界的に見れば、スンニ派が圧倒的に多数です。サウジアラビアなど、多くのイスラム教国はスンニ派を信じています。シーア派は、イランやイラクなどの中東の一部の地域で信じられています。
ですが、イスラム教は世界宗教であるため、これには中東以外の東南アジアやアフリカの国も含まれています。中東だけに限ってみれば、シーア派とスンニ派の勢力は同じぐらいになります。
スンニ派とシーア派の違いは、シーア派はムハンマド(マホメットのことをイスラム圏ではムハンマドと呼ぶ)と血のつながりのあるアリーという人物の子孫をムハンマドの後継者とするのに対し、スンニ派はイスラム教の教義である「スンナ」により、アリーとは無関係にみんなの意見で指導者を決めます。
アリーは、第4代正統カリフであり、ムハンマドの従弟に当たります。また、ムハンマドがイスラム教の教えを広めようとした際に、最初の段階で入信した人のひとりとして知られている、ムハンマドにとても近い人物です。勇敢な戦士としても知られます。シーア派では、ムハンマドと同じぐらいアリーを崇めており、シーア派の初代イマームとされています。
シーア派とスンニ派は良く対立し、争いごとが起きます。最近も、イランとサウジアラビアの対立が問題になりました。ですが、イスラム教には変わりがなく、「お祈り(礼拝)を行う際の祈り方や祈る数が若干違うぐらいにすぎない」と言われています。
詳しくは以下を参照のこと。
イスラム教の原理主義者とは、イスラム教のもともとの原理を主張する集団であり、必ずしも過激派であるとは限りません。
今のイスラム教徒は、原理と世俗の間でバランスを取った「世俗主義者」であり、イスラム教の教えは守りながらも、現実とのバランスを持ってなあなあでやっています。
これに対して、原理主義者は「イスラムの教えに回帰すべきだ」として、コーランの厳格な教えを守ろうとします。
そういうわけで、原理主義者は必ずしも間違っていません。
ですが、イスラム教は特殊な宗教で、原理主義者になると「聖戦・ジハード」を厳格に守り、戦争で世界を変えようとするところがあるのです。
北アフリカにはエジプトなど、アラブ系人種のイスラム諸国が多いため、地理学的に中東に含む場合があります。
アフリカを参照のこと。
アラビア語は、イスラム教で公式の言語として有名で、コーランもアラビア語で読めということになっています。
実際には、セム系の言語(ヘブライ語などと同じ)で、右から左に書くとか、文字がアルファベットなどと全く違う「続き文字」になる、などという特徴があります。
また、母音はa, i, uの3つしかありません。子音であるミミズのような線に対して、点を振ることで母音を組み合わせます。
文法的には、ドイツ語のような格があります。主格は「は」、目的格は「に・を」、所有格は「の」を表します。斜格は目的格と所有格をどちらも兼用する格です。
要するに、ドイツ語と日本語をセム系にしたような言語です。
(基本アラビア語入門を参考に執筆しました。)
アラビア語には、コーランに書かれている共通語(書き言葉)と、日常で話す言葉(話し言葉)がある。
話し言葉では、書き言葉の文法が単純化されており、辞書には書かれていないようなそれぞれの地域のたくさんの語彙が存在する。
民話の伝承の際には、話し言葉をどのように書き記すのか、ということが問題になった。書き言葉で表すと極めて形式的になってしまう。
(アラブの民話を参考に執筆しました。)
アラビア語は、右から左に書くことや、文字が曲線の続き文字になることが大きな特徴だが、母音と子音の表現方法がはっきりと分かれており、ドイツ語や日本語などによく似たきちんとした格の概念がある。
これに比べてヘブライ語は格の概念が薄れており、文字としては子音だけを使う(母音を明確に記述せず、文字の形から慣習的に判断する)などの特徴がある。
ある意味、中東の言語としてしっかりした文法を持っているのはアラビア語で、中東の中でも特に簡素化されたシンプルな言語はヘブライ語であると言えるかもしれない。ヘブライ語は、ドイツ語に対する英語のような言語に近い。
2022.12.06
イスラム圏の人々が住んでいる土地である「中東」は砂漠ですが、現代では、この地域では「石油」がたくさん採掘できるようになりました。
石油は、自動車に必要なガソリン、石油ストーブに必要な灯油、プラスチックなどの化学製品、それから火力発電などでの原料など、現在の文明社会によって、欠かすことのできないエネルギーです。
そもそも、石油とは、太陽の光を大きく浴びた植物たちが地中に深く埋められ、液体の化石となったもので、これを燃料として使うことで、「何万年分の太陽エネルギー」をいっぺんに取り出すことができます。
石油の枯渇問題や温暖化などの環境問題などもあり、最近は電気自動車(EV)などの普及も進められていますが、中東では石油がバンバン取れるため、それを国際社会に売ることで、「爆発的な富」を得ることができると同時に、原油の価格問題から「世界の主導的影響力を支配する」こともできるようになりました。
中東の人々は、多くの人々が豊かで、誰もが美味しい料理を食べて莫大な富を持っています。彼らは料理の値段は見ません。今何が食べたいか、しか考えないで生きられるのです。
最近は、アメリカでもシェール・オイルが取れるようになり、アメリカは原油大国になりましたが、シェール燃料の過度な開発から、既存の石炭・石油産業が疲弊し、トランプ大統領はそうした産業を保護する「保護主義」を打ち出しています。
また、最近では、イスラム圏の石油が出る国でも「脱石油」の動きが盛んであり、石油以外の主力産業を作って、「もう石油だけには頼らない」ということを打ち出している革新的な指導者も多いです。
パレスチナ問題についてはイスラエル・パレスチナ問題を参照のこと。
また、中東はユダヤ教をはじめとするセム系宗教の発祥の地です。ユダヤ教やゾロアスター教や古代イスラエルを参照のこと。
また、今、もっとも問題なのが、シリア内戦と難民・移民の問題です。
シリアでは、独裁者と呼ばれるアサド大統領と、反体制派の革命集団が対立し、内戦の形相を呈しています。この内戦が長引いているのです。
そもそも、アラブの春と呼ばれた中東の革命・反独裁者運動は、チュニジア、リビア、エジプトなどで起きていましたが、それがシリアにも飛び火した格好です。
アサド大統領と反体制派(アサドからはテロリストとされている)の対立も問題なのですが、ここには大国の関与があります。反体制派を支援するアメリカ・イギリス・フランスなどの西側諸国と、アサドと長い間関係のあったロシアが対立して、アメリカとロシア双方の関与があって、今でも戦争が終わらないのです。
後日注記:シリアでは反体制派がクーデターで首都を制圧し、アサド大統領はおそらく逃げて行方不明とのこと(2024年12月8日)。ヤフコメでは「昔のシリアは旅行者を手厚く歓迎する安全な国だった」と言う人がいる一方、「今のシリアは内戦で旅行どころではない危険な国になった」と言う人が多いです。早く元の平和な国になってほしいです。
2024.12.08編集
2024.12.13編集
もうひとつの問題が、難民と移民です。シリアだけではありませんが、イスラム圏などから、たくさんの移民がアメリカやヨーロッパにやってきます。アメリカの場合は、中南米などからも多く移民がやってきます。ヨーロッパでは、EUにより貧しいポーランドなどの東欧諸国から移民がやってきます。彼らは働き口が無く、アメリカ人の雇用を奪い、犯罪や麻薬を持ち込んでくるのです。
そのため、アメリカやフランスなどの、比較的人権に寛容な国であっても、移民排斥や反イスラムが唱えられるようになりました。彼らはEUやグローバル主義に否定的で、自国の労働者ファーストを唱え、イスラム圏からの移民の入国を認めず、トランプなどのような過激な人種差別運動を行って、ハーケンクロイツのような極右の旗を掲げます。
極右の運動はインターネットと結びつき、それまで縁のなかった若い純粋な世代にも、自分の国に対する不満や不安のはけ口として、白人至上主義者が再熱しています。
極右・ポピュリスト・陰謀論やナチス・ドイツも参照のこと。
また、極めて過激な集団がイスラム圏にはいます。彼らは、イスラム教のコーランの記述を曲解し、ジハードや女性蔑視を持ち込み、「テロリストとしてキリスト教などと戦うことは聖戦だ」と考えて、「唯一の神アッラーを信じないものは殺しても良い」という過激な思想から、テロリストとなります。
多くの人はそうした人ではありませんが、アルカイダなどのテロリスト集団は、昔から「自爆テロ」という手法を取ります。これは、爆弾を自分の体に巻きつけて、自分ごと爆発して多くの人を殺す、という卑劣で残忍なテロです。アルカイダのような組織は、下っ端の命などどうでも良く、下っ端を洗脳して自爆テロをさせることで、国際社会に自分たちの存在をアピールします。
これがさらに発展したのがIS(イスラム国)という国際テロ組織で、シリアやイラクなどで活動して、自分たちの「イスラム国」という「国」を設立し、かつてイスラム圏だったことのある全ての国を占領下に置こうとしました。
ISは残忍極まりのない手段で、イスラム圏のイスラム教徒だけではなく、ヨーロッパやアメリカなどの「不満分子」に対しても支持者を拡大し、一時はとても危険なほど勢力を拡大しました。
シリア内戦でも、親アサド派と反体制派に加わって「三つ巴の争い」を呈していました。
ですが、数年のアメリカやヨーロッパ、ロシアなどの努力もあって、なんとかISの勢力はシリアやイラクなどでは少なくなりました。今でもスリランカのような場所で、「ニュージーランドで起きたイスラム教徒への白人のテロに対する報復だ」として自爆テロは起きていますが、ISの影響力は小さくなってきています。
今、僕は文学の勉強の最初のとっかかりとして、「アラブの民話」という本を読んでいる。
以下は日記からの引用。
2019-07-21より。
それから、僕はデザイナーやピアニストになると言ったが、むしろ、文学作品を読みたい。さまざまな物語を知りたいと、そういうどこかから来る欲求が言っている。
昔買った「アラブの民話」という本があったので、今、その本のまえがきを読んでいる。まえがきだけで30ページもあるためまだ全ては読めていないが、この本はアラブやイスラムのことが良く分かる本である。
僕はこう見えて、隠れイスラム教徒である。よって、僕はイスラムの神の物語のことをとても身近に感じる。
ラマダーンの断食の意味の1つが、「食べられない貧しい人の気持ちを思い出すため」であることを知った。また、巡礼(ハッジ)を通じてアラブのさまざまな人が交流し、民話の伝搬の役割を果たしたことも知った。ハッジから帰ってきた主人を、家族は手厚くふるまい、主人の旅の話を聞くことも知った。アラブの人々も、民話を上手く杖や小道具をもって吟じる「講壇師」のような人が居て、コーヒー屋でそうした話を披露することも知った。イスラム教徒は酒が飲めないため、男たちはコーヒー屋でタバコをふかしながら集まる。また、人々の来ている衣装の刺繍などで地域が判明すると言うことも知った。
この本を読むと、アラブ通になれる。そういうわけで、文学は馬鹿ではない。僕は家にある全ての本を読みたいと思う。それで、この世界のこと、人生のこと、そして神のことが全て分かるのではないかと、考えている。そのまま、くたばるまで文章を書き続けて、文豪のような作家になれれば良いと思う。
以下はアラブの民話を参考に執筆しました。
用語 | 説明 |
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アミール | 王子、英雄、リーダー、ヒーロー。 |
イフリート | ジンの世界の精霊。 |
インス | 人間のこと。特に「神によって土くれから創造された」ということが強調されることがある。 |
カーディー | 裁判官・判事。 |
カリフ | 預言者ムハンマドの後継者でありイスラム社会における指導者。 |
グール | 砂漠に居ると信じられる怪物。 |
シャイフ | 長老。コーランの教えに造詣の深いイスラム学者。 |
ジン | 神によって煙を出さない火から創造された精霊。 |
スルタン | 皇帝・国王・権力者。 |
ベドウィン | アラブの古典的価値観を体現する、生粋のアラブとされるような砂漠の遊牧民。 |
ムスリム | イスラム教徒。 |
砂漠でラクダを使う理由は以下のようなものがある。以下はアラブの民話より引用。
潅木が群がって生えていて、幾頭かの駱駝が十分な餌にありつけるところであれば、ベドウィンは、そこに黒いテントを張って家畜を放牧する。まばらに生えている葉や草を家畜たちが食いつくすと、テントをたたんで、新しい遊牧地へと移動する。彼とその家族の生活は、家畜たちが十分な餌をとることができるかどうかにかかっている。駱駝の乳は、そのままで、あるいは、発酵させてヨーグルトとして飲むことができるし、その肉は、彼らにとってめったにありつけない御馳走なのだ。テントや上着は、駱駝の毛で織られていて、強い日差しを遮ってくれる。潅木が生えていない所では、乾燥した駱駝の糞は燃料として用いられる。だが、それにもまして駱駝が珍重されるのは、他のいかなる動物よりも渇きに長時間耐えることのできるこの家畜が、一つの水場から次の水場の間に広がる乾ききった地帯を、テントとその住人を乗せて踏破することができるという点にある。
ここで、ベドウィンとは砂漠を横断する遊牧民のこと。昔はラクダのコブの中に水が入っていると信じられていたが、入っているのは脂肪である。最近では血液中に水分が多い、ということになっている。
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