工場の世界観です。
工場にもさまざまな分野がありますが、共通しているのは、手作業で作業を行うライン処理と、専門的な機械による処理です。
僕は、今通っている作業所の関係で、さまざまな工場見学をしたことがあります。
工場では、ライン処理と呼ばれるベルトコンベアの処理、あるいは、専門的な機械を操る機械処理があります。
機械処理については、工場とほぼ一体になっているような巨大な機械装置もあれば、人間が操作する工業用の道具の一種のような機械もあれば、あるいは専門の車両のような人間が乗って運転する機械もあります。
人間が操作する場合は、ベルトコンベアのライン処理をできるだけ止めないようにします。また、食品であれば温度の管理や衛生に気を付けます。ごみなどの選別であればケガをしないように注意します。
このような工場のシステムを「生産システム」と呼びます。そして、システムエンジニアの大きな仕事が、このような生産システムの開発です。エンジニアはこのような工場のシステムを、滞りなく行われるようにシステムの制御などを実現するソフトウェアを開発します。
現代の工場は、さまざまなものを作る工場に分かれています。
たとえば、自動車ならエンジンを作る工場、小さな部品を作る工場、組み立てをする工場などに分かれています。
パソコンのマウスでも、ガワを作る工場、くるくる回る部分を作る工場、基板を作る工場など、さまざまな部品を作る工場があって、そして全体の組み立てをする工場があります。
工場は機械だけではありません。さまざまなものや、例えば食品を作る工場もあります。
実際に製造する工程に入る前に、部品をどのように組み合わせて全体の機械を作るか、という「設計図」を考案します。
設計は、ハードウェアがどのように連携して一つの機械になるか、ということを考える段階であり、この設計の段階で機械の全体像が決まります。
作りながら設計を変える場合もあります。
また、設計はハードウェアだけではなく、ソフトウェアの設計もあります。ソフトウェアはコンピュータ上で実装するため、実際の製造の工程が必要ないこともあります。よって、ソフトウェアは専用の開発ソフトが動くコンピュータがあれば、工場を必要としません。
後日注記:コンピュータ・プログラムのソースコードは「設計図を公開する」という表現がされることが多いですが、ソフトウェアは設計図だけを必要とし、製造を必要としない(既に製造済みである現実のPCハードウェアでソフトウェアが仮想的に動作する)特殊な機械です。そのため、オープンソースと親和性が高いのです。
工場とは、大量生産を行うための施設です。
工場には「ライン」というものがあり、ラインを動かすことでできるだけ効率的にたくさんのものを製造します。
ラインでは、従業員がライン作業を行います。これは単純作業で、工場にあるベルトコンベアで製品や部品が流れてきて、指示される作業を行い、またベルトコンベアに戻します。
このラインを管理するためのソフトウェアやコンピュータシステムを「生産システム」と呼び、ラインの管理を「ライン処理」と言います。
エンタープライズ用途でのコンピュータは、こうした工場のライン管理の現場で使われています。
後日注記:この工場のライン処理は専門用語で「生産システム」と呼ばれます。生産システムの設計と実装は商用ソフトウェアの大きな一分野です。
生産した後は、製品用に箱詰めして、それを全国の小売店舗に輸送します。この輸送のことを「物流」と言います。
また、製造元から商品を仕入れて、それを実際の小売業者に販売する際に、中間の部分を担当する業者のことを「卸売業」と呼びます。
実際の小売店舗では、消費者から払われる代金として少し上乗せした定価で販売します。ここで卸売業者は差額によって儲けることができます。
後日注記:インターネットの普及はこうした物流に大きく変化を起こしました。Amazonのように物流業界の市場開拓につながっただけでなく、インターネットを使ってソフトウェアを配布することで、機械を実際に送らなくても、電子情報だけを送受信すれば新しいアプリケーションを導入できるようになった点もあります。
昔の工場は、大変でした。たくさんの従業員がラインにまるで「備え付け」のもののように並び、それぞれが何時間も同じ作業を繰り返し行いました。
この頃の工場は、チャップリンの「モダン・タイムス」などで比喩されたように、「工場労働者」という新しい仕事でした。
このような工場労働者を平等にするために、労働者の地位向上を訴えたのが昔の社会主義者であり、8時間労働を順守するようにするなど、一定の成果を上げました。
しかしながら、今の工場は違います。ほとんどがコンピュータ制御となり、作業をするのは人間ではなく機械が中心で、そこにはロボットアームやロボット車両などがあり、人間は機械を使ってそれを制御しながら、安全な場所で監視していればいいようになったのです。
中国の工場などでは、今でもミシンなどを使って手工業などをやっていますが、先進国はそのような単純な仕事を外国の後進国に押し付け、自分たちはまるで「機械を使って何もしないだけ」をしています。
ですが、ひと昔前に比べて、とても楽になりました。ある意味、SF作品に出てくるようなロボットを使った工場は、既にほとんど実現されていると言ってもいいかもしれません。
しかしながら、工場で大量生産を行うことは、いい面と悪い面があると思います。
いい面として言えるのは、大量に安く作ることで、ものがとても安くなり、国家の「国富」が潤い、みんなにお金が落ちてくる、ということ。
そして悪い面は、社会にものが過剰にあふれてしまい、捨てられるゴミが増え、人々がものを大切にせず、環境を破壊してしまう、といった「道徳的・倫理的問題」です。
ですが、大量生産は国家の経済を豊かにします。アメリカや中国、日本やドイツなどの先進国が発展できたのは、ほとんどが「大量生産したから」です。
カール・マルクスは、「生産過多に陥って資本主義は崩壊する」と言いましたが、これは正しくありませんでした。ケインズが「需要と供給」と言ったように、多くのものが生まれ、その分ものは安くなり、人々に十分行き渡るようになりました。道徳的・環境保護的な悪い面を考えなければ、大量生産は経済にとっては良いことばかりであったと言えるかもしれません。
高品質な製品を作る上で、鍵となるのは、安定供給だと思います。
高品質な部品を、一つ作って終わりではありません。安定して高品質な部品を作らなければならないのです。
このような際に、サプライチェーン(部品製造会社)が優れていることは日本の強みかもしれませんが、もうひとつ、「機械を作る機械」が必要だと思います。
工場では、人間が働くだけではなく、機械が人間と同じように働きます。それによって、高品質な製品が製造できます。
常に間違いをせず、精密な部分まできちんと作ることのできる、機械を作る機械が必要なのです。
ホンダが人間型のロボットを作っているのは、単に見せびらかすためではありません。工場で本当に使いたいから、人間型のロボットを頑張って作っているのです。
こういうところでのIT技術は、日本にもまだ優れたところがあるのではないかと思います。そうでなければ、日立が高品質なハードディスクを作ることはできないでしょう。
また、こうした精密機械と同じぐらい重要なのが、粗悪品の検査です。
粗悪品を取り除き、製品基準を満たした製品だけを振り分けることで、たとえ外国人実習生のような経験の浅い労働者が作った製品であったとしても、その中に粗悪品が含まれていたとしても、その粗悪品を実際に市場に出してしまうような失敗がなくなります。
どんな分野の工場であっても、粗悪品検査は必ず出荷する前に行います。日本の工場は、そういうところの管理が徹底しているのかもしれません。
粗悪品の検査と同じことですが、ソフトウェアなどIT製品を開発する際も、出荷する前に事前にテストを行いましょう。きちんとテストを行えば、バグは防げます。
僕が、工場でものを生産する上で重要なのは、検品作業をきちんとすることだと思います。
なんらかの不良品が、市場に出回らないように、きちんと検品作業をしなければ、機械は動きません。
工場できちんとものを作る上で、もっとも大切なのは検品作業です。どのような工場であっても、検品作業をまず最初に徹底しましょう。
僕は、今行っているデザインの作業所の外出レクとして、さまざまな工場の見学をしたことがあります。
たとえば、機械部品を作っている工場、ゴミのリサイクルのための分別を行っている工場、あるいは食品を加工している工場の見学に行ったことがあります。
はっきり言って、現場は大変です。たとえば、機械部品を作っている工場は、日本人の方だけではなく、外国人の方が多く働いていて、専用の機械を使って、繰り返し同じ作業をノルマをこなすだけ行っていました。また、検品作業は女性のパートの方が中心に行っていました。
ゴミのリサイクルのための分別を行っている工場では、手作業でゴミを分別しますが、この時危険物が入っていると怪我をする危険性があります。
また、食品の工場では、衛生管理のためにゴミが入らないように、髪の毛などを覆い隠すための専用の衣服に身をまとって、とても暑い環境の中で機械とベルトコンベアを動かし続けます。
このように、工場での労働は簡単ではありません。
世界史(近世・近代)や蒸気機関やイギリスも参照のこと。
発電所を参照のこと。
土木建築を参照のこと。