市民農園を借りて農業をやっている経験から書く、農業入門です。
理科に詳しい父親の話を参考にしています。
畑でとれた人参です。
僕は、博物館学芸員の仕事を定年退職した父親と一緒に、市民農園を借りて、作業所でのデザインの仕事の後に、農業をやっています。
父親は長い間博物館の仕事をやっていましたが、少し前に定年退職になりました。
以前から、ガーデニングや園芸のようなことは、心のレクリエーションのために家族でやっていましたが、僕は当時まだデザインの仕事をしていなかったため、心の静養をかねて市民農園を借りて農業を始めました。
今では、デザインの5時間の仕事が終わった後で、「毎回少しだけ作業をする」をモットーに、市民農園に出向いて農作業をしています。
最初は思うようにいかなかったこともありましたが、最近は何年も農作業をしてきたため、経験がついて、市民農園を借りている別の利用者の方と比べても、もっとも経験豊富なファーマーではないかと思います。
農園では、多少の区画を借りて、肥料を混ぜた土地を耕運機で耕し、畝を作って、そこに季節によって別の野菜を植えて育てています。たとえば、夏野菜であればトマト、キュウリ、ナス、ピーマンなどがとれます。イチゴのできる時期は、イチゴだけがとてもたくさんとれます。イチゴはアナグマなどの野生動物に狙われて食べられることがあるため、網を張った小屋を作り、その中で育てます。農作業をやりながら、土木建築をやっている感覚に近いです。
僕は、毎日、デザインの仕事を5時間ほど作業所でやり、それが終えると父親と一緒に車で農園へと向かって農作業をし、家で食べるものをスーパーで買って家に帰ります。隔週で水曜日にはピアノを、土日は英会話を習っています。また、それが終わると家に帰って本を読み、夕飯を食べ、音楽を聴き、風呂に入り、ホームページの日記と解説を書いています。
また、僕の行っている農業の特徴は、「一度に大量に野菜ができる」ということです。
僕は、父親と一緒に農業をやっていますが、これは販売するためではなく、あくまで自分たちの家族などで消費し、自分たちで食べる野菜を作っています。
ですが、あまりに、一度に大量に野菜ができることがあります。
たとえば、今年(2022年)の夏には、とてもたくさんのスイカができました。巨大なスイカが全部で70個ぐらいできたと思います。
そのため、自分たちだけでは、スイカを消費することができません。
スイカは非常に高額な値段で販売される果物であるため、自分たちだけで食べても、「スイカ食べ放題」のような、まるでスイカ天国のような状態になりますが、それでも自分たちだけでは消費できず、そのため、僕は作業所や父親の知り合いの人などに、スイカをたくさんあげに行きました。
スイカだけではなく、たとえばイチゴがとれる時にも、まるで「イチゴ天国」のような状態になります。トマトができる時期は毎日サラダにミニトマトがたくさん、のような状態になってしまいます。
ですが、この結果、野菜や果物をたくさん食べる習慣ができて、逆に健康的なのかもしれません。ほかにも玉ねぎやオクラなども一度に大量にできてしまいます。販売して売るつもりはありませんが、自分たちですべての野菜を消費するのは難しいものです。
農業を本当にやるのは難しく感じられるかもしれませんが、意外とそうでもありません。
基本的に、土を耕して、種あるいは苗を植えて、毎日水をやりながら、実が成るまで待つだけです。
確かに、耕運機あるいはクワを使って土を作ったり、ウネを作ってマルチシートを被せたり、ネットで害獣や害虫から守ったりなど、さまざまな対処や方法は行います。
ですが、植物は元々自然環境にいくらでも生えているものであり、野菜もそれら植物のひとつであり、それを単にたくさん自分の畑で作るというだけのことに過ぎません。
農業は難しくありません。農業をやっていると、さまざまな嬉しいことがたくさんあります。なので、その気になった時は農業を始めてみることをお勧めします。
2022.12.12
農業をやっていると、さまざまな道具を使います。
雑草が生えないようにし水分を保つためのマルチシートと杭、害獣に食べられないようにするための網(ネット)、野菜を支えたりネット小屋を作るための支え棒や支柱、土いじりをするための移植ごて(スコップ)や手袋、耕すためのクワ、土をならすためのスキ、ものを運ぶための手押し車、水をやるためのホース、あるいはハサミやハンマーや石やビニールひもなどをよく使います。
野菜によっては雨水を遮るためのビニール(トマト)や直射日光を遮るための黒い網(ミョウガ)などを使うこともあります。
そして、それらの中でも、よく使うのが、結束バンドです。
結束バンドを使うことで、簡単に網を使ったネット小屋を作ったり、野菜を支えるための支柱を立てたりすることができます。
2024.05.11
まず、土を作ります。どの土地をどの作物に当てるか、計画しながら行いましょう。
土地に牛糞を適切にまいて、スキで平たく伸ばしてください。
後日注記:牛糞のような有機肥料を使うことで、野菜が育ちやすい土地になります。必ず最初にまきましょう。
2023.01.16編集
牛糞の上から、有機肥料と石灰をまきます。
2017-10-05より。
石灰は、土の酸性を中和するためにまく。畑の作物は酸性を嫌うが、畑の土は作物を作っている間に酸化されて酸性になる。これをアルカリ性の石灰をまいて中和する。
後日注記:畑の作物は酸性を嫌うため、作物を作る間に酸性になった土地をアルカリ性に中和するために石灰をまきます。以前は石灰は粉であることが多かったですが、まきやすさを考えて最近は粒状の塊になっていることが多いです。
2023.01.16編集
有機農業とは、簡単に言えば化学肥料を使わず、有機肥料(たとえば牛糞や鶏糞)だけを使った農業のことです。
僕の畑でも化学肥料は使っていません。
以下のページによれば、さらに遺伝子組み換え技術を使わないこと、環境への負荷を削減すること、といったことも定義に含まれるそうです。
2024.09.28
注意点として、同じ場所でまた同じ作物を作ると(連作)、同じ栄養分を吸収するために、土が駄目になってしまいます。
トマトを植えた次は、同じ場所でトマトを植えるのではなく、玉ねぎを植えるなど、工夫してください。
2023.01.16編集
肥料をまいたら、耕しましょう。
一番楽な方法は、ガソリンで動く耕運機を使うことです。
労力が少なくて済むため、効率的に広い土地を耕すのに向いています。
使う時は、機械に手足がまきこまれないよう、慎重にハンドルを掴んでください。
作った畑に出来るだけ足跡などがつかないように、耕運機を移動させる道順を考えましょう。耕した後はスキなどで綺麗にならします。
疲れますが、クワで耕すことも出来ます。
耕運機の入れない狭い範囲を耕す時などに有効です。
(2018.11.06追記)先日、市民農園で借りていた耕運機が故障中で使えなかったため、クワで畑を耕しましたが、クワで耕すのは楽しいです。
畑に毎日のように行っているわりに、あまり体を動かしたり運動したりしていない自分にとっては、汗をかいて牛糞にまみれながらクワで耕すのは、運動になって楽しかったです。
畑の管理者の方は、「わしらはこれくらいで耕運機なんか使わんでい」と言ってらっしゃいました。年期の入っている方は、言うことが違います。
耕すのが終わったら、ウネを作ってください。スキやクワを上手く使って、畑の原型を作り、ウネとウネの間に道を作りましょう。
この時点で、どこにどんな作物を作るかを計画しておきましょう。
最後に、ビニール製の黒のマルチシートを敷くことで、土の保温と保湿をして野菜を育ちやすくし、光を遮ることで雑草が生えなくします。
マルチシートを適切にカットし、プラスチック製の杭などを使って、ウネに対してマルチシートを敷き、固定します。
マルチシートには、穴が最初から開いているものと、開いていないものがあります。開いていないものの方が、柔軟に穴を自分で開けることが出来ます。あるいは、穴を等間隔で開けることもあります。
種を蒔き、作物を植える前に、適切に穴の開いたマルチシートを敷きましょう!
農業のコツとして、肥料や石灰をまいて耕運機で耕したら、土をなじませるために、少し放っておきましょう。
肥料や石灰は粒状になっており、雨が少し降ったり、雨が降らなければ水をまくことによって、土と肥料を「なじませる」ということが必要です。
土と肥料がなじむ前に作物を植えてしまうと「肥料焼け」を起こす場合があります。
2024.03.04
ウネが完成したら、次は種を蒔くか、苗を植えましょう。
植え付ける時期は、野菜によって違います。トマトやナスやキュウリやピーマンは、夏野菜です。冬には、白菜などを植えます。春でも秋でも作ることのできる野菜もあります。大根などは夏にも冬にも作ることができます。
以下のページを参考にしてください。
種から蒔くことで、たくさんの作物を効率的に作ることが出来ます。
種の何粒かを手にとって、土にくぼみを作って、蒔いたら、水をたっぷりとやりましょう。
種から蒔いた場合は、時に、「間引き」と言うことをする必要があります。
沢山の種から出た複数の芽を少しずつ、間引くことで減らし、最終的には1つにしていきます。
たくさんの種を蒔いた時は、小さな場所からたくさんの芽が出ます。これを生命力の高い一つの芽を残して、他の芽を抜いて間引きをしてやります。こうすることで、たくさんの芽が競合することを避け、強い一つの芽を育てます。ひとつだけの種を蒔いた場合は、そこから芽が出るか出ないか分かりません。たくさんの種を最初は蒔いておいて、後で間引きをします。
苗を植える場合も、種を蒔く場合と同様です。たまに、不良品の苗を売っていることがあるので注意してください。
苗を植えた時は、大きくなるまでに支え棒をつけてやることがあります。キュウリなどの場合は、網を設置して網まで伸ばしてやると、その網にツルが伸びて緑のカーテンのように育ちます。
トマトなどの場合、そのまま育てると横に広がって大きく伸びてしまいます。上に長く育てたい場合は、横に伸びた枝を取る(分け目を取る)必要があります。
雑草と虫・獣との戦いは、永遠の課題です。特に、奪われないようにするために網を張ったり小屋を作ったりします。農業をやっていると、考えていることのほとんどはそれらとの戦いです。雑草は毎日気になったところから抜いていきます。
農園に行った時は、帰る前に必ず水をやります。特に、マルチシートをしていない野菜のウネでは水が乾きやすいため、水をやりましょう。種を蒔いたばかりとか、苗を植えたばかりの野菜には、たくさんの水をやりましょう。
父親と僕の農園の約束事として、「一度にたくさん作業をするよりも、毎日少しずつ作業をやる」というのがあります。実際のところ、僕はあまり農園で働いていません。いつも、行った時は様子を見て、雑草を抜き、収穫し、支え棒や害獣にやられていないかの確認をし、水をやって帰ります。ですが、やることが全くないわけではありません。耕運機をかける時期は耕運機を一緒にかけますし、植え付けもやりますし、小屋を作るために手伝うこともありますし、収穫も一緒にやります。ただ、主に頑張っているのは父親です。自分は手伝い程度の存在です。
一番大きな労働作業は、収穫かもしれません。トマトやイチゴはシーズン中毎日のようにたくさんの実が採れます。また、玉ねぎやサツマイモなどは一度にとても大量にとれます。
採った野菜を自分の家だけで消費することはできません。色んな知り合いにおすそ分けするしかありません。ですが、採れる野菜は大小さまざまで、一部が腐っていたり、農薬を使わない場合は虫に食われることもあります。出来るだけ綺麗な野菜をみんなにあげて、自分たちは少し不出来な野菜を食べることになることが多いです。ですが、採れたては新鮮で、どんなスーパーで買うよりも美味しく、またみずみずしいことが多いです。
野菜別の気付いたことです。
トマトです。
トマトは、直接の雨を遮るために、ビニールと支柱で作った「屋根」を作る必要があります。風で倒れやすいので、台風が来た時などは後で点検などに注意する必要があります。
また、トマトは、倒れやすいため、支柱を作る必要があります。これは、棒と結束バンドを使うことで、簡単に作ることが出来ます。
それから、害獣に狙われやすいため、網を張る必要があります。特にカラスやタヌキに狙われやすいです。
イチゴです。
イチゴは、種を使って増えるのではなく、ランナーと言うツルから増えていきます。
子や孫のランナーを大切に保管しないと、増やすことが出来ないため、ランナーを土を入れたカップに植えて、保管してください。次のシーズンに備えることが出来ます。
また、害獣に狙われやすいので、網を張ってください。特にタヌキに狙われやすいです。
サツマイモは、簡単にたくさん出来て、掘るのも楽しいのですが、ツルが物凄く増えるため、あとあと処分するのが大変です。注意してください。
葉物野菜(ブロッコリーやキャベツなど)は、害虫に狙われやすいので、虫がつかないように網を張る必要があります。
以下は、自分の家で作ったことのある野菜の一覧。本に載っていたものから抜き出したので、もっとたくさんあるかもしれません。
果菜類(実を食べる野菜)
・トマト
・ナス
・キュウリ
・ピーマン
・トウモロコシ
・カボチャ
・ズッキーニ
・オクラ
・ニガウリ
・イチゴ
・スイカ
葉菜類(葉や茎を食べる野菜)
・ホウレンソウ
・コマツナ
・シュンギク
・キャベツ
・ハクサイ
・レタス・サニーレタス・サラダナ
・ガーデンレタスミックス
・ベビーリーフ
・ミズナ
・ネギ
・タマネギ
・ニンニク
・モロヘイヤ
・シソ
・ニラ
・パセリ
・ミツバ
・カラシナ
・ブロッコリー
根菜類(根や地下茎を食べる野菜)
・サツマイモ
・ジャガイモ
・ラディッシュ
・ニンジン
・ダイコン
・カブ
・サトイモ
・ショウガ
豆類(豆を食べる野菜)
・エダマメ
・エンドウ
・ソラマメ
その他
・ツルムラサキ
後日注記:ここに書かれているのはあくまで一例であり、今ではもっと多くの種類を育てたことがあります。中でもイチゴやスイカなどは非常に美味しいので大好きです。
植物が成長するために必要なのは、リン酸、カリ、窒素です。これを、肥料の三大要素と言います。
野菜や植物によって、カリが多く必要だったり、窒素が多く必要だったりと違います。これらが多くの植物で必要とされる、一般的な肥料の成分です。
多くのホームセンターなどの肥料では、リン酸、カリ、窒素をバランスよくブレンドした肥料が売られています。
牛糞や馬糞にも、リン酸とカリと窒素が含まれています。
また、同じ畑で野菜を作り続けていると、微生物の分布が変わって土が酸性になるため、土をアルカリ性にする石灰を使って土を中和します。人間の耕す畑ではなく自然の生態系の土では、これは自然に行われるため、必要ありませんが、人間の作った畑では作物を作っている間に土が酸性になります。
後日注記:もちろん、植物が生きるためには二酸化炭素と水と太陽の光が必要です。これらがなければ、植物は枯れてしまいます。しかし、植物がしっかりと大きく育つためには、リン酸とカリと窒素が必要で、これは土に含まれています。人間にとっての炭水化物やたんぱく質や脂質が必須の栄養分であり、それ以外にもビタミンやミネラルが必要であることに対応するでしょう。さまざまなことがあるので単純には言えませんが、窒素は白菜やキャベツなどの葉物野菜の葉を大きくし、リン酸はイチゴなどの実を大きくし、カリはジャガイモなどの根やたんぱく質を大きくすることが多いです。
人間が科学技術の力を使って、植物を育てるためには何が必要か調べるうちに、植物は動物とは違う栄養分が必要であることが分かってきました。また、それはリン酸とカリと窒素であることも、分かってきました。
ここから、「わざわざ土で畑を耕さなくても、水の中にリン酸とカリと窒素を溶かして、その水の上で野菜を育てれば、野菜は育つのではないか」と生物学者は考えました。
土を使わず、水にリン酸とカリと窒素を溶かして、その水で野菜を育てることを「水耕栽培」と言います。
水耕栽培には、いくつかのメリットがあります。
1.土を耕す大きな労働や手間が必要ない。
2.クリーンルームで水耕栽培を行えば、害虫もつかず、野菜も汚れないため、綺麗な状態で野菜を出荷できる。
3.水の中の栄養分の状態をコンピュータで自動コントロールできる。
4.クリーンルームの中の温度や光の量を調節することで、季節に関わらず一年中の野菜を育てることができる。
5.日当たりのいい畑に限らず、巨大工場など、どこでも野菜を作ることができる。
最近は、多くの野菜や植物が水耕栽培で作ることができるようになってきています。これにAI技術を組み合わせれば、「人間の手間や労力を排して、自動的に大量の野菜を作る」ことができます。
僕の農園で、ひとつの大きな出来事がありました。
ランナーから増やしたイチゴが収穫時期を迎え、たくさんのイチゴがとれるようになりました。去年のように、「イチゴ天国」になるのではないかと、僕と父親は期待していました。
イチゴは、害獣にやられないようにネットと支柱の棒で小屋を作り、最初のうちはたくさんのイチゴが採れていました。
ですが、ある日、農園に行ってみると、イチゴの実がありません。赤い実が、全部無くなってしまいます。
見ると、害獣が入らないように作ったネットと支柱の中で、一部、棒が折れているところがありました。そこから、何かしらの動物が入ったのです。
最初は、僕と父親はタヌキだと思いました。その棒を修正しても、味をしめた害獣は、今度は棒の下に穴を掘って入りました。
ここで、僕たちはなすすべがなくなり、父親は役所に相談して、ある作戦をしました。それは、「害獣を捕獲する檻の罠を作る」ことです。
役所から、罠となる檻の箱を借り、それを設置しました。父親は、「捕まったら絶対にタヌキ鍋にする」と言っていました。
ここで、タヌキではなく、アナグマだろうということが分かりました。そして、アナグマはキャラメルコーンの匂いが好きだということ(肉の油のようなにおいがするらしい)で、キャラメルコーンと、採れたばかりの新鮮なイチゴを檻の中に入れました。
当初、役所が言うには、イチゴ畑の外に檻を設置して、イチゴの方は杭を打つことで入らないようにできるということでしたが、それでは檻に目もくれず、アナグマはもう一度畑に入りました。
そして、僕たちは檻の入り口のところに檻を設置しました。
そうすると、なんということでしょう。害獣が捕まりました。それは、タヌキやアナグマではなく、テンというイタチのような動物でした。
テンは肉食で、イチゴは食べないため、犯人ではないと言うことでしたが、キャラメルコーンの匂いにつられて入ったのだろうということです。
鳥獣法があるため、捕まった獣は役所にきちんと連絡して、猟師に引き渡して正当な方法で処分しなければなりません。そのため、テンを食べたりすることはできませんし、勝手に逃がすこともできません。犯人ではないテンは、免罪で処分されました。
その後も、アナグマは捕まらず、もう一匹テンが捕まりました。そうこうしているうちに、イチゴのシーズンは終わりになりました。結局、アナグマ捕獲大作戦は失敗に終わりました。一説には、罠に入ったテンが大騒ぎをしたため、恐れをなして畑に入らなくなったのではないかと言うことです。
先にアナグマ捕獲大作戦を書きましたが、アナグマについては、父親が大規模な「土の中まで柵をする」という土木工事を行ったため、なんとかイチゴを守ることができました。
父親はアナグマを排除するために本気となり、まるで土木工事のように、土の中まで柵を作り、土の中を掘ることができないぐらいの対策をしました。
この土木工事の基礎の上に、網を張ったイチゴを守る小屋を作ったため、なんとかイチゴを守ることができました。
ですが、次なる敵はモグラです。
モグラは、土の中を掘って侵入し、虫やミミズを食べます。このモグラが畑の中を荒らしてしまうと、野菜などの作物の根っこが駄目になってしまいます。
これについても、なんとか対策をしなければなりません。
また、今年の夏はスイカを栽培しましたが、スイカはカラスに狙われることが多く、カラス避けの網をぐるぐると巻きました。カラス避けの網を巻くには二通りの方法があって、ひとつはカラスでも目に入るような黄色の糸を使う方法、もうひとつはカラスには絶対に見えないような黒の糸を使う方法です。
一見、カラスが入ってこれないようにするには、目につく黄色の糸を使ったほうがいいように思えますが、実際は逆です。黄色の糸では、どこに隙間や入れる余裕があるのか、カラスは分かってしまいます。黒い糸は、一見糸が巻かれていないように見えて、カラスは入ろうとした瞬間に糸が絡みつきます。この「一見ないはずのものがあった」ということにカラスは恐怖を感じるため、黒の糸のほうが効果があるのです。
このように、農業や畑をやるということは、生き物との永遠の戦いになります。野菜だけではなく稲作においても、たとえばイノシシなどが入って田んぼを荒らしてしまうと、せっかくの稲が倒れてしまい、コンバインなどの機械を使って自動で刈り取るのが難しくなってしまいます。
しかしながら、農業を行う上で、生き物の力を逆に利用することも多いです。牛糞などは肥料になりますし、牛や馬は力になります。また、スズメが作物を荒らすからといって、スズメを完全に排除すると、逆にスズメが食べることで少なかったはずのバッタやイナゴなどの昆虫が大量に発生することもあります。
生き物を扱う仕事は、そのように、簡単には管理できません。工業製品であれば単純なことであっても、生き物を相手にする時には苦労します。畜産や動物園の飼育係なども、同様に簡単ではいかないでしょう。生き物を扱うということはとてもヘビーな仕事なのです。
スイカなどを栽培する際に、カラス避けとして効果的なのは、黒い釣り糸(テグス)を頭上の場所に張り巡らすことです。
黒い釣り糸は、上空から視認することができません。なので、カラスは糸が張り巡らされているのに気が付かず、スイカの近くに下りてこようとして、その場所でカラスと釣り糸がぶつかって初めて釣り糸があるのに気付きます。
カラスは糸のようななんらかの障害物が自分の体に触れるのを嫌うため、これがカラス避けに効果的です。
同じような方法として、黄色い釣り糸は上から見ても視認性が高く、カラスであっても糸が張り巡らされているのが分かります。そのため効果的に見えますが、実際は逆で、カラスはどこに糸が張り巡らされているのか上空から分かるので、最初から糸が張り巡らされていない場所を狙って下りてきます。
一部では黄色い糸のほうが効果的であるようなことが言われているかもしれませんが、僕の経験から言って黒い糸のほうが効果的だと思います。
2024.05.11
2024.07.15編集
農業について言えることに、「手で植えた稲は手で刈り取らなければならない」ということが言えます。
これは、稲を植える時の間隔が、手で植えた時はバラバラにばらつくからです。
最初から農業機械で植えた稲は、一定の間隔で植えられるために、その間隔に対応した農業機械で、機械的に刈り取ることができます。
ですが、ここで「ベンダーロックイン」が発生します。クボタの機械とヤンマーの機械では、それぞれの機械によって間隔が異なります。クボタの機械で植えた稲はクボタの機械で刈り取り、ヤンマーの機械で植えた稲はヤンマーの機械で刈り取らなければいけません。
これは農業だけではなくさまざまなところにある問題で、日本の鉄道会社のレールの間隔に対応した鉄道は、そのままでは外国のレールでは動きません。間隔が微妙に違うからです。
ただし、ここでずるをする国があります。中国の鉄道会社などは、「自分たちの鉄道もそのレールの間隔で動くように作る」と言って、安値で鉄道を外国に売ります。ですが、さまざまなシステムが異なるために、正常にシステムが作動せず、混乱をもたらします。Linuxやオープンソースの品質も、これと似たところがあります。UNIXやWindowsのリプレースだけを目指してオープン・フリーにしても、劣悪で使い物にならないのです。こうしたところから、オープンソースがなぜ失敗したのか、考えることができます。
農業機械の問題点として、「機械の値段が高い」ということが言えます。
トラクター(耕運機)やコンバイン(稲刈り機)などは、精密機械であり、見た目以上に高額の値段がかかります。
そのため、小さな農家などでは、「機械によって農作業は楽になったが、儲けは少なくなった」という場合も少なくありません。
昔の農家では、田植えや稲刈りなどの重労働は、村のみんなで集まって、みんなで行っていました。
周り近所はみんな農家だったため、「今日はたろべえの家の田んぼ」「明日はじろべえの家の田んぼ」というように、村のみんなで集まって田んぼの田植えや稲刈りをやっていました。
この時、田んぼの力として男たちが力を発揮したため、「男」という漢字は田に力と書きます。
これは田植えだけではなく、家を建てる時やかやぶき屋根を取り換える時などにも、みんなで集まって行っていました。
このような祖先から受け継いだ田んぼですが、今の農家は兼業農家が多く、その場合は農業以外にも別の仕事をしています。コストパフォーマンスが見合わないこともある農業をなぜやめないのかと言えば、「祖先から受け継いだ大事な田んぼを壊したくない」という思いがあるかもしれません。
田んぼには、水が溜まるように底に粘土質の泥があり、水が他に逃げないようにあぜには土手があります。(田んぼには常に用水路から水が入るため、完全に水が逃げない必要はなく、一定の水の量を溜められる分だけ水はけが悪ければよい。)
このような泥や土手は、一度田んぼをやめ、耕作放棄地になると、壊れてしまい、二度と同じ場所で田んぼをすることはできなくなってしまいます。
逆に、田んぼだった土地に家を建てるような場合は、一度土を全部水はけの良い土に取り替えます。そうでないと、とても水はけの悪い土地に家が建ってしまい、雨が降った時などに水が溜まってしまうからです。
普通、田植えをする際には、植え付けをするための機械と、刈り取りをするための機械を、同じ会社あるいは規格のものをセットで使います。
田植えをした時の、苗と苗の間隔のような寸法と区画の通りに、収穫をする時も同じ寸法と区画で刈り取りを行います。
ですが、もし、イノシシやシカのような害獣が田んぼに侵入すると、めちゃくちゃに荒らされてしまい、寸法と区画が変わってしまうので、機械が入ることができなくなってしまいます。
収穫は一年に一度の大切な期間です。この仕事ができなくなってしまうと、一年の収入がパアになってしまいます。
なので、農家は害獣の侵入に敏感です。田んぼの内と外の境界線にネットなどをして害獣が田んぼに入らないようにします。時には罠などを使って捕まえることもあります。
2024.05.11
出来上がった稲穂は収穫して、まず脱穀を行います。脱穀とは、稲穂から出来上がった実の部分である「モミ」を取り出すことです。
昔は、脱穀は千歯扱きというたくさんの歯を持つ専用の農具で行っていましたが、今では機械で行うことができます。
脱穀して取り出されたモミは、三重構造になっています。まず、外側にモミガラがあり、その中に玄米があり、その中に白米があります。
モミから玄米を取り出すために、モミすりを行います。モミすりによって、モミからモミガラだけが取り除かれ、食べられる玄米が取り出せます。
玄米はそれだけでも食べることができますが、白米にしたほうが美味しいです。なので、白米にするために精米を行います。精米する際に、玄米の皮を刷り落とした粉が出てきます。これがヌカとなります。ヌカにはたくさんの栄養があります。
玄米よりも白米のほうが美味しいので、昔の武士は農民から年貢として白米を徴収しました。農民は玄米やヌカを使った料理を食べていました。ですが、栄養があるのはむしろ白米よりも玄米やヌカのほうです。なので、当時の武士はビタミン不足になって脚気(かっけ)のような病気になりましたが、農民はそのような病気にはなりませんでした。
モミすりや精米を行うためには、一升瓶の中にモミを入れて、木の棒でつくなどの方法でも行うことができますが、たくさんのモミがあると効率的ではありません。そのため、水車小屋で水車によって臼をつくようなことを昔は行っていました。水車では米の精米以外にも、そばの実からそば粉を作るなどのためにも使われました。今では機械で精米ができるようになったため、水車などは使われなくなりました。
モミすりを行うと、大量のモミガラが出されます。このモミガラは、昔は枕や昔のクッションのようなもののためにも使われましたが、捨てるにはそのままでは土に還りにくいため、稲わらなどと一緒に火をつけて燃やします。稲穂の収穫の時期に田んぼで煙が多く見られるのは、モミガラと稲わらを燃やしているためです。
米を保存する際に、精米して白米にして保存するよりも、玄米のままで保存したほうが長持ちします。なので、田舎の農家では、玄米の状態で米を保存し、食べる時にコイン精米所などを使って精米して白米にします。そして、決してその時に出るヌカを捨てません。ヌカにはたくさんの栄養があるからです。そうすることで、農家では精米したての新米をいつでも食べることができます。新米とは精米してすぐの新しい米のことであり、長い時間が経って傷んだ米よりも新米のほうが美味しいです。
2024.10.01-02
畑は生物学の宝庫です。毎日育つ野菜を見るだけで、植物学のことが良く分かります。
植物の寿命はとても短く、食べられる食べ物はとても貴重です。命の大切さが良く分かります。
植物は決して平等ではありません。不出来なナスや育たない玉ねぎはたくさんあります。それでも、頑張って生きている、というそのことは、今生きている、あるいは過去に生きていた全ての生命に共通しています。
野菜は貴重なだけではなく、ほとんどの場合過剰に生産できます。自分だけではとても全部は食べられません。貴重でありながら過剰に採れることで、分け与えることの大切さと、経済活動の自然さが実感できます。
野菜に優劣はありません。全ての野菜が良い野菜です。野菜が育つのは、全て、その野菜が持っている力ですが、上手くその力を使わなければ野菜は育つことが出来ません。ほとんどすべては育て方によります。ここに、仏教でいう「他力」の概念を見出すことができます。生物は全て自力で生きることはできません。
生物は高度でありながら合理的で、ただその生物が生きるという意味においても、協調して生態系の中で生きていくという意味でも、良く出来ています。あらゆる全ての生物の頂点に立ち、一つの種だけで他全ての生物を滅亡させることはできません。強すぎる生物は、他のためになりません。ある程度弱く、それぞれが頑張らなければ生きられないからこそ、生物は全体が強く、多様性があるのです。強すぎるものはすぐに滅亡します。恐竜は強すぎましたが、いつまでも恐竜の天下は続かないのです。
戦時中、食べ物や物資が不足していた中で、一番食べ物に困らなかったのは、虐げられていた農家だったと言います。
農家は馬鹿ではありません。最後に生きのびるのは農家です。そして、サバイバルやキャンプの知識があれば、自分独りで生きられるでしょう。まるで自衛隊ですね。
サバイバルで必要なものは何か知りたいなら、以下の登山における装備のページが参考になるかもしれません:
また、僕の家の庭には、柿や梅が生っています。
僕の家は比較的庭が広く、親がたくさんの木を植えたために、一時期は巨大な桜が育っていました。
しかしながら、桜はあまりに巨大になりすぎたし、綺麗なのは春だけで、夏などには毛虫がたくさんつきました。そのため、桜は数年前に切り落とし、今では切り株だけが残っています。
僕の家の柿はとてもおいしくて、甘いです。また、梅はたくさんできることが多く、梅酒にしたこともあります。
後日注記:戦後の食糧難において、子供たちの間では「柿泥棒」がよく行われました。柿泥棒とは、他人の家の庭に生っている柿を誰も見ていない間に落として盗む泥棒のことです。今の子供たちは食べるものがたくさんありますが、昔の子供たちは常にお腹が減っていたので、「見張り役」と「泥棒役」に分かれて柿泥棒をよく行っていました(子供たちがやっていたという意味であり、決して僕自身は柿泥棒をやったことはない)。やってはいけないことなのでやめましょう。
日本史(戦後時代)も参照のこと。
2024.05.31編集
日本の農家が作った作物を出荷する際に、農協の組合員になると、農協が全部やってくれます。
スーパーの野菜売り場などで、自分の作った農作物を売ってほしいとなった時に、自分でスーパーと契約するのは手間がかかります。
農協の組合員になると、農協が農作物を全部買い上げてくれて、スーパーへの売り出しなども全部やってくれます。その代わり農協に手数料を取られます。
ですが、今の時代、農協に入ることなく、自分で契約を結ぶ農家も増えてきています。
自分で農作物を売り出した場合、なんらかの付加価値がないと買ってもらえません。そのため、「少し虫に食われているけれど無農薬で有機栽培です」といったメリットを打ち出すことになります。
というのは、農協で農作物を売り出した場合、そのような「少し虫に食われている」ような点があると、はねられて売ってくれないからです。
農協は、綺麗にできた野菜しか買ってくれません。少し虫に食われているとか、ネギの先っぽが茶色だとか、そういう点があると買ってくれないのです。
なので、今の農家、特に後を継いだわけでもなく自分で農業を始めた若い人などは、農協に入ることなく独自に野菜を売り出す方も増えています。
また、政府の政策として、「備蓄米制度」というのがあります。これはなんらかの理由で米が取れなくなった時に対応するために、米を過剰に買い取ってくれる制度です。
備蓄米制度があるおかげで、できた米は過剰に作られても買い取ってもらえますし、それは政府によって備蓄米にされたり、あるいは家畜のための餌になったりします。豊作であっても凶作であってもかかわらず米を買い取ってくれるというのは、この制度の大きなメリットです。
2024.05.11
不登校だった頃、僕はガーデニングが好きでした。
不登校で、心を閉ざした少年だった頃に、家族と一緒に、心のレクリエーションのためにガーデニングをしていました。
さまざまな植物や草花を、土を入れたプランターや鉢に植えて、玄関や庭に飾っていました。
また、父親は機械の仕組みを作るのが得意で、水を入れた鉢の中に蓮を植えて、その鉢の上から水が流れるような仕組みを作って、水を流して暑い夏に涼み、その中でメダカを飼ったりしていました。
また、母親は生け花やフラワーアレンジメントが好きで、よく玄関やリビングなどに生け花や造花などを飾っていました。僕も子供時代に何度か花を生けるのを手伝ったことがあります。母親は全般的に花が好きで、花の名前もよく知っています。
そのように、まともな親や家族に恵まれたため、学校を不登校になっても僕は幸福でした。そしてその後に、市民農園で本格的に農業を始めるようになりました。
2024.09.03
日本は食料自給率が低く、多くの食料を外国からの輸入に頼っていますが、アメリカや中国のような場所から輸入した食料には注意が必要です。
それは、遺伝子組み換えや農薬が使われていることがあるからです。
アメリカの大豆やトウモロコシや麦などには、遺伝子操作がされていることがあります。
遺伝子操作をすることで、虫がつきにくく、大きく育つような遺伝子を書き換えることができますが、それが人間にもたらす影響についてはまだ分かっていません。
また、中国などでは、遺伝子操作のような技術がなくても、農薬を浴びるようにまいた野菜を作っていることがあります。
農薬とは虫がつきにくくするような神経毒のことで、虫に対して効果があり人間に対しては安全だと言われますが、実際のところは分かりません。
たとえば、ナチス・ドイツが毒ガス室で使った毒ガスのチクロンBも、もともとは農薬でした。
オウム真理教が地下鉄サリン事件でまいた毒ガスのサリンも、農薬を買ってきて作り変えたものでした。
そのように、農薬はそれ自体が危険であるだけではなく、さまざまな毒ガスを作り出すためにも使うことができます。不特定多数の人間を殺すような毒ガスが、農薬を使って簡単に作れてしまうのです。
2024.09.29-30
植物学も参照のこと。
料理・家事も参照のこと。
牧場入門も参照のこと。
林業も参照のこと。