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マルクス

ヘーゲルを受けて生まれた共産主義の創始者。ドイツの哲学者・経済学者。ヘーゲルも参照のこと。

マルクス

マルクス。

画像はパブリックドメイン。

マルクス

自分の書いたブログ「わたしの名はフレイ」2020/09/07より。

マルクスは、共産主義の創始者。

労働価値説と剰余価値説という考え方に基づく独自のマルクス経済学を築き、「生産様式」や「階級闘争」をベースに、社会は資本帝国主義によって資本家の搾取と疎外によって労働者は不利な立場に置かれており、また、資本主義は生産過多によって滅びるため、革命を起こして計画経済と国営化をベースとした、共産主義経済に移行すべきだとする。

知識人や下位階層の労働者に対して受け入れられた思想ではあったが、マルクス・レーニン主義はソ連という大失敗を生み出した。

生産手段と階級闘争

マルクスは、経済を生産手段、生産関係、生産条件と言う「生産様式」であると考えた。

また、資本家は「決定者」であり、それに労働者が従うだけであると考えた。

また、歴史は発展とともに勝者と敗者が分かれていき、狩猟は農耕になり、農業は工業になって、階級闘争として生まれていったと考えた。

労働価値説と剰余価値説

(池上彰のおとなの教養 私たちはどこから来て、どこへ行くのか? (NHK出版新書)を参考に執筆しました。)

マルクスは人間の労働には価値があり、資本家と労働者は対等な契約関係にあるとする労働価値説と剰余価値説を唱えた。

そこでは、労働者に与えられる給与を考えるに、労働力の価格は「労働力を再生産するためにかかる費用」であり、それは日々労働するためにかかる経費であり、それを労働者が生産者に与える価値であるとした。

労働者は生産者(資本家)よりも低い立場におかれ、たとえ資本家が善良であったとしても、資本家は資本を増やすことに必然的に囚われ、労働者は不当な弱い立場に置かれて失業の不安や過酷な状況での過重労働に陥ると考えた。

マルクス経済学も参照のこと。

搾取と疎外

マルクスは、資本家だけが生産手段を独占し、労働者は搾取されていると考えた。

また、人間たちは資本家によって「疎外」されており、それぞれのアイデンティティを失ったロボットになっていると考えた。

歴史の必然

マルクスは、この世界の問題を歴史の必然と捉え、神のような絶対者が導いたのではなく、歴史的な必然であり、革命によって変えられるのだと考えた。

共産主義

マルクスは資本主義の問題を考え、資本主義は供給過多と失業者の発生で崩壊するとし、会社を国営化して失業者を出さず、計画経済で景気変動も起こらない「共産主義国家」に、資本主義や帝国主義は段階を経て到達するだろうとした。

マルクスは、社会は原始共産主義以後、権力闘争によって資本主義や帝国主義が成り立ったとし、世界の歴史は階級闘争の歴史であるとした。

後日注記:マルクスとエンゲルスは、資本主義社会では必然的に失業者が生まれ、労働者は必ず資本家や経営者よりも不当に弱い立場に置かれると考え、これは「生産手段を共有することでしか解決しない」とした。

資本主義の分析は明晰だったが、理想の社会主義国家像は示さず

マルクスは、明晰に資本主義の分析を行い、労働者がどのように資本家に搾取されるかは記述したが、理想の社会主義の国家像は示さなかった。

そのため、レーニン、スターリン、毛沢東のような革命家は、ソビエト式の「社会所有・計画経済・平等分配」の劣悪な社会主義国家を作るにとどまり、成功しなかった。

マルクス主義の結果

マルクスの考え方は革命的で、最終的には必ず階級闘争の末に革命で社会主義が勝つのだ、という論調があった。

知識人はこぞってそれを主張するようになり、レーニンなどは実際に革命を起こした。

だが、それによって生まれたソビエト連邦はものを最低限生産して配分することも出来ず、また自由の無い強制収容所の警察国家になった。

ソ連は失敗だったが、マルクスの資本論の考え方には現代の社会を見ていても参考になるところが多い。マルクスの言っている通りだ、という主張をする人は多い。

ロシアも参照のこと。

大学図書館での勉強家

マルクスは大学の図書館に通いづめて経済学の勉強をし、親友のエンゲルスとともに資本論を書いたことで有名です。

世界を変える哲学を

マルクスは、哲学者は世界を分析し、考えるだけではなく、世界を変えるべきだ、と主張した。

マルクスの考え方の個人的な説明と課題

僕はまだまだマルクスについてよく知らないし理解もしていませんが、今まで知ったことからマルクスの用語を使ってマルクス経済学の考え方を説明すると、

1.社会は上部構造(資本家などの生産の決定を行う人間)と、下部構造(労働者など労働の報いを求めて実際に働く人間)の関係において成り立つ、生産様式(生産条件、生産関係、生産手段)の実現である。

2.労働の価値は、その労働を再生産するための費用で決まる。つまり、同じ価格で別の労働者が同じ労働ができるなら、取り換えが利く。労働者と資本家は対等な関係にあり、取引を行っている。

3.しかしながら、資本家は生産手段を独占することで、労働者に対して強い立場で労働者から搾取を行う。ここで、資本家よりも必ず、労働者の方が立場が弱くなる。

4.地上の歴史は、労働者階級と資本家階級の階級闘争の歴史であると同時に、歴史は物質的な要素に立脚しており、どんな歴史も必然である(歴史の必然)。

5.資本主義は、生産様式の変化とともに、資本家階級と労働者階級の立場の違いを明確にした。労働者は資本家によって、「疎外」されている。

6.資本主義は、生産手段の独占により、資本帝国主義となる。しかしながら、生産能力の大幅な向上によって、いずれ資本主義は供給過多によって破綻する。

7.資本主義におけるこうした問題を解決するためには、「生産手段の共有」が必要であり、そのために、革命によって共産主義社会が訪れる。

しかしながら、ロシア革命によって生まれたソ連の失敗の教訓から言って、マルクス主義には課題がいくつかある。それは、

1.労働意欲を高めたままで、いかに人民に生活に必要な物資を与え、生産するか。

2.独裁的権力に頼ることなしに、いかに人民の資産を再分配し、格差を是正するか。

3.一党独裁の警察国家にするのではなく、どのようにすれば、民主的な社会主義の政治を実現できるか。

マルクスが考えたことは嘘ではない

僕は、マルクスが考えたことは、100%嘘ではないと思う。

マルクスは、生産能力が向上すると生産過多になって資本主義は崩壊し、共産主義革命が起きると考えた。

たとえば、食べ物が10円になったとしよう。たった10円で食べ物が食べられるということは、「楽に生きられる」ということだけではなく、「働く意味やモチベーションがなくなる」ということを意味する。

たった10円を稼げば生きられるのであれば、人々は働かない。努力して報酬を得る必要はなくなり、働いても働かなくても同じであるため、資本主義の労働者は誰も働かなくなって、社会は国営による計画経済にするしかなくなる。

僕が不勉強ながら意見すると、マルクスはおそらくそのようなことを言いたかったのではないか。

だが、レーニンやスターリンなどが間違えたのは、その結果訪れる「国営による社会主義の計画経済」をユートピアであると勘違いしたのではないかと思う。

国営による社会主義の計画経済は、結局資本主義が崩壊したために訪れる「代わりとなる世界」にすぎず、それは楽園ではなく、実際はソ連のような地獄のような国だった。

僕は、マルクス主義の問題はそこにあると思う。最終的に訪れる、食べ物が10円で手に入る世界は決して楽園じゃない。何もかも成り立たない、何も生産も労働もできない地獄こそ、10円で食べられるおかしな計画経済である。

だが、資本主義が崩壊するというのは嘘ではない。上で、努力して報酬を得る必要はなくなり、働いても働かなくても同じ社会になると言った。これはまさしく、ソ連型の社会主義のことである。そう、資本主義においても、生産能力が著しく向上したとしたら、ソ連のような共産主義と同じ社会になる。

これは、今の資本主義を採用している西側諸国が隠している事実である。すなわち、資本主義は社会主義よりも遅れているだけにすぎない。資本主義の工場型の労働が進歩し、平等になったとしたら、資本主義も必然的に社会主義国家と同じになる。そのことを、マルクスは考えたのである。

後日注記:結局、このような理論から考えると、ソ連の間違いとは、生産能力がまだ十分に向上していないにもかかわらず、生産能力が向上した時に訪れるであろう社会をやろうとしたことです。そのために、スターリンは十分にものを生産することができなかったのです。ソ連をやるよりも前に、資本主義が十分に発展することのほうが先にあるべきだったと言えます。そして、働くモチベーションがなくなるとはいいますが、本当は10円で食べ物を食べられるような世界になるはずがありません。生物学的に考えてそれは不可能であるため、結局ソ連はまったく嘘を信じていたと言えるでしょう。

著作

「資本論」、「共産党宣言」など。エンゲルスと共著の書籍が多く、エンゲルスによる著作も多い。