磁気テープの世界観です。機械いじりが子供のごろから好きだった父親の話を参考にしています。
ハードディスクも参照のこと。
歴史上、文字を使って紙に文章を書くことで、文字情報を記録することはできた。だが、音声などの記録は難しかった。
音声の記録として生まれたメディアは、蓄音機とレコードである。これは、円盤状に音声の「波」を記録して、そこに針を乗せることで、膜を震わせて音声を再生する。
だが、蓄音機とレコードは、作るのが難しくて、誰でも簡単に録音し、再生することは難しかった。
ここで生まれたのが、磁気テープによる音声の記録と再生である。
まず、磁気テープは「ヘッド」と呼ばれる電磁石を用いる。これは磁界を局所的に発生させる、強弱をコントロールできる電磁石である。
このヘッドに、「磁性体」と呼ばれる、磁界を記録することのできる物質を組み合わせることで、テープに電気信号を記録する。プラスチックで出来た、磁性体を塗ったフィルムに、ヘッドの電磁力で磁界を記録する。
磁性体は電磁石から与えられた磁界の磁力を記録する。内容を消去したい時は、普通の磁石でなぞるだけで磁気が消える。
磁性体は、磁界を記録し、それ自体が磁力を持つ。これを、記録する時と同じようにヘッドに通すと、今度は逆に電磁力からヘッドに電流が流れる。
このようにして、音声はテープレコーダーで記録できる。音声だけではなく、プログラムの記録にも昔使われていた。
後日注記:昔は音楽の記録をカセットテープで行っていましたが、プログラムの記録もカセットテープを使っていました。当時はマイコンの時代で、MS-DOSなどが出るよりも前の時代でした。
2024.12.22編集
音声や映像のような「連続したデータ」ならば、このようなテープで十分である。だが、プログラムのデータのように、さまざまな場所にあるデータをさまざまな場所に保存するメディアでは、テープのままでは使いづらい。
このため、フロッピーディスクなどでは、円盤状の磁性体テープや、ハードディスクなどでは磁性体の特性を持つ固い金属を円盤状のディスクとして使う。「セクタ」に保存したデータは、「ファイルアロケーションテーブル(FAT)」によってどこにどんなデータが保存されているかが管理されており、ヘッドはさまざまな場所のデータを飛んで読み取り、書き込むことができる。
この「ディスク」を管理するためには、プログラムの側でファイルシステムとして対応することも必要である。このディスクに対応したOSが、MS-DOSなどの「DOS(ディスクオペレーティングシステム)」である。
ビデオなどに使われるビデオテープには、昔大きく分けてVHSとベータという2つの規格に分かれて標準化競争が行われていた。
結果はVHSが勝って、小型で性能の良かったSONYのベータは負けた。
ちょうど僕が幼少期だったごろがそうしたVHSとベータが競争していた時代で、僕の家には今はもう再生できないベータで録画されたアラレちゃんのビデオが残っている。
SONYはよくこういう時に標準的な規格につかずに独自規格を打ち出すことがあり、記憶に新しいHD-DVDとブルーレイのような、DVDより次世代の大容量メディアの時はSONYのブルーレイが勝利した。
音楽CDについて説明すると、レコードはアナログな音の流れをそのまま物理媒体に記録していたが、音楽CDでは一度デジタル情報に変換する。
アナログな音は波になっているが、デジタル情報は0と1で記録しなければならない。
アナログな音をデジタルな情報に変換する際に重要なのは、サンプリング周波数とビット数(ビット深度)。サンプリング周波数は、波を棒グラフのようにぶつ切りにする際に、それだけその棒グラフを細かくたくさん分けるか、という単位のこと。たとえば1kHzのサンプリング周波数であれば、波を棒グラフにする際に1秒間に1000個に分ける。また、ビット数はその棒グラフを読み取る精度のことで、8bitなら256段階の精度でひとつの棒グラフを読み取れる。
基本的に、サンプリング周波数とビット数をたくさん増やせば精度はよくなるが、データ量が多くなる。CDには限られた情報しか記録できないため、人間が聴いて心地よく聴こえる以上の細かすぎるデータは必要ない。そのため、サンプリング周波数とビット数は音楽を聴く上で適切なぐらいに抑えられている。
実際には、1kHzや8bitでは、全然音楽を記録するためには十分ではない。特に、標本化定理といって、元のデータの最大周波数の2倍以上の周波数があれば、サンプリングは正確に行える。CDでは44.1kHzというレートでサンプリングが行われる。人間の耳に聴こえる高音は20kHzぐらいが限界なので、これくらいで音声は正確に記録できる。またビット数は16bitぐらいは必要である。
CDを読み書きする際には、レーザーを使う。この時、物理的にCDにデコボコでデータを記録する。そして、データを読み取る際には、レーザーによる光を当てて、どのような光が反射して返ってきたかでデータを読み取る。書き込む際にもレーザーを使うが、普通売られているCDなどでは、レーザーでひとつひとつのCDをいちいち書き込んでいたのでは効率が悪いので、「型」となる原盤を作って、それをハンコのようにプレスしてCDを大量に作っている。
CDから音楽を再生するためには、デジタルな情報を逆にアナログな情報に変換しなければならない。昔はプログラムで行っていたが、今はICでできるようになった。レコードと違い、デジタルな情報で記録されているため、データの劣化が起きづらく、そしてコピーやリッピングがしやすい。なので、YouTubeやパソコンのメディアプレイヤーやiPodなどのICプレイヤーで再生することが簡単になっている。
2024.12.22
昔は、アナログなデータは時間とともに劣化するが、デジタルなデータは劣化しない、と、デジタルなデータの記録をもてはやすことが多くありました。
それは嘘ではありませんが、実際は、デジタルなデータは、記録は残っていても、再生不能に陥ることがよくあります。
それは、技術が進歩するにつれて、規格や方式が変わったり、再生するために必要な機材や機器がなくなってしまうことがあるからです。
たとえば、昔のアナログなカメラで撮った写真は、確かに日の当たる場所に何年も置いておくと劣化しますが、それでも、紙に印刷した写真は数十年以上見ることができます。
これに対して、デジタルなカメラやビデオカメラで撮った写真や映像は、たとえばVHSやベータで記録しておくと、そのVHSやベータで再生するための機械がなくなってしまうと、見ることができなくなってしまうのです。
写真や映像だけではなく、昔のワープロソフトで作った文書も、そのソフトがあるうちは読むことができますが、そのソフトがなくなってしまうと、データ自体はなくなっていないのに、読むことができなくなってしまうのです。
「デジタルなデータは永久に劣化しない」という言葉は、嘘ではありませんが、いつまでも読めるような方式(事実上存在しない)で記録しない限り、その言葉の意味通りにはなっていないと言えます。
そのように失われてしまうのは、子供の運動会や結婚式、家族旅行といった、家族の大切な思い出だけではなく、放送局のアーカイブや、国や自治体の管理する映像ライブラリーなど、みんな苦労しています。今ある記録されたデジタルデータは、数十年後には全部なくなってしまうと考えるべきです。
2025.01.18
中には、犯罪の証拠を残さないために、自らハードディスクにドリルで穴を空けて廃棄するような人もいます。
ただし、ハードディスクに記録された内容は、単純にデリートして削除するだけでは残ってしまいます。ファイルシステムの中の目次だけが書き換わり、データ自体は消えていないからです。
そこらへんに詳しくない、いい加減な業者に頼んでパソコンの廃棄をすると、他人に見られたくないデータが見られてしまうなど、セキュリティの問題が発生することがあるので、注意が必要です。
Linuxではshredコマンドを使うことで、データを再起不能にして削除することができます。Windowsの場合は以下のような記事が参考になります。
2025.01.18
ハードディスクも参照のこと。
電磁気学も参照のこと。
エジソンについては科学者・科学史も参照のこと。