LibreOfficeに関する世界観です。Sunも参照のこと。
自分の書いたブログ「神々とともに生きる詩人」2021/01/27より。
「なぜWindowsが勝利するのか」と言えば、まず、WindowsはIBM PC/AT互換機で標準だったMS-DOSから始まる、「バンドルの歴史」がある。
IBM PC/AT互換機を買うと、必ずWindowsがついてくる。
IEやMS-Officeなども、標準でWindowsにくっついてくる。
そのため、初期ユーザーを簡単に得ることができた。
もうひとつの要因は、「MS-Officeの文書形式」である。
MS-Officeは独自の文書形式を採用しており、これは長い間Microsoftの独自形式であったため、MS-Officeで作った文書は、MS-Officeでしか編集できない。
そのため、簡単にMS-Officeから別のOfficeソフトウェアに変えられない。
しかしながら、オープンソースの世界では、これに対して「オープン標準の文書形式を採用しよう」という声があり、それが、Sunが買収してオープンにした、OpenOffice.orgのOpenDocument Formatである。
OpenOffice.orgは、オープンソースのOfficeソフトウェアであり、Office形式にOpenDocumentを採用し、ほかのOfficeソフトウェアと相互運用ができるようにした。
今では、さまざまな経緯からOpenOffice.orgはApacheの所管に移り、メインの開発はLibreOfficeという後継ソフトウェアに移行している。
しかしながら、LibreOfficeの問題は、「使いづらい」こと。
MS-Officeでは、ユーザーが間違った操作をしたり、ユーザーがあまりOfficeに詳しくなくても、適当になんとなく操作できるようになっていることが多いが、これがLibreOfficeだと「まったくどの機能を使っていいか分からない」。
ユーザーは、MS-Officeとの操作性の違いなどから、まともにLibreOfficeを使うことができない。
もうひとつは、果たして「MS-Officeを捨ててまでLibreOfficeを使う理由がない」ということ。
WindowsからLinuxに移行すると、普通にLibreOfficeを使おうとすれば使えるのだが、逆にMS-Officeを使える環境がなくなってしまう。
これは、「無料のOfficeを使えるといっておいて、有料の標準のMS-Officeを奪っていく行為に等しい」。
このことから、いくらLinuxがオープンソースかつ無料で利用できるといっても、なかなかMS-OfficeからLibreOfficeへの移行は起きていない。
同様のことが、Adobe PhotoshopとGIMPなど、オープンソース全般に言える。
GIMPは確かに無料だが、Adobe Photoshopに慣れているデザイナーは、誰もがAdobe Photoshopを使うことを楽しみとしており、無料のGIMPを与えたところで、簡単には移行しようとしないのである。
LibreOfficeは、オープンソースなMS-Officeと互換性のあるOfficeスイート。
MS-Officeのファイルを開くことができて、WordやExcelのような使い方で文書の作成と編集が出来る。
機能的に見ても、MS-Officeと同等のOfficeソフトウェアだが、「使い方が分からない」のが難点だ。MS-Officeとは、機能の在り処ややり方が違う。だが、メニューやボタンから操作する、という基本的なスタイルは同じだ。
独自のファイル形式を使う巨大なOfficeスイートは、Linux界でもそんなに好まれているわけではないが、テキスト形式で編集するよりも高度な文書の編集を行うことが出来る。普通にLinuxをインストールした時に、GNOMEなどと一緒にLibreOfficeがインストールされることが多い。昔からあるOfficeソフトウェアで、本当はそんなに重たくないし、けっこう機敏に動く。
そもそもはSunがドイツのStarDivisionを買収して得たStarOfficeのソースコードをオープンソースとして公開したことをはじめに、「オープンソースなOfficeスイート」としてOpenOffice.orgプロジェクトが始まった。OracleがSunを買収したことから、OpenOffice.orgのソースコードを元にLibreOfficeが始まった。そういうわけで、そもそも商用だったソフトウェアをオープンソースにしたものであり、最初から純粋にオープンソースだったわけではない。だが、OpenOffice.orgはオープンソース陣営からとても期待されてさまざまな貢献者によって開発され、ひとつの成熟したオープンソースプロジェクトとして存在していた。
ソースコード
LibreOfficeの重要な点は、「会社の書類をオープンソースで作る」ということ。
今の現実社会では、MS-Officeはどこの会社でも必ず必要で、文字をベースとする書類を作るならWord、あるいは計算や表形式の書類を作るのであればExcel。それも、ただ入力に使うだけではなく、関数や条件付き書式などを多用して、「書類をパソコンの力で自動で作る」という仕事は、僕も作業所でやっているから分かるが、会社の業務では必ず必要になる。たとえば毎月の日付を関数などを用いて自動で作り出したい時など、こういう時にLibreOfficeがMS-Excelと同じように動いてくれるととてもありがたい。
この時、MS-Officeは完全にWindows依存であり、Mac向けにも販売されているものの、完全に「Microsoftにベンダーロックイン」されている状況にある。
だからといって、ジャストシステムの一太郎は使えない。そもそも、国産だからといって、MS-Officeが支配的な「ファイルフォーマットの世界」が変わるわけではなく、一太郎は一部の(法律などの)用途に限られて使われている。
こうした「完全にMSに依存した社会」は、経済的・会社的理由だけではなく、国家的な理由など、さまざまな理由から好ましくない。
LibreOfficeは、単なるMS-Officeのパクリではなく、オープンソースかつクロスプラットフォームで開発されており、「日本人も含めた世界全員で作ることができる」という特徴を持っている。また、無料なので数十台・数百台単位のたくさんのPC台数で作業しなければならない会社や公官庁では、LinuxとLibreOfficeを導入すれば、大幅なコスト削減になる。
会社の作業だけではなく、MS-Officeはほとんど今の日本社会において「最大の必須アプリケーション」であり、学校の授業での発表もPowerPointで行う時代である。MS-Officeはとても良いソフトウェアなので僕も好きだが、LibreOfficeが頑張れば、それだけでIT社会は確実に変わる。LinuxのOfficeとしてのLibreOfficeだけではなく、IT業界に新風を引き起こす可能性を秘めている。
OpenDocument Formatは、標準化されたオープンなOfficeドキュメントのファイル形式。Microsoftが独自のファイル形式を使って商売しているのとは逆に、オープンなファイル形式にすることで、オープンで公平なOfficeの競争や相互運用が可能になる。
OpenDocument FormatはLibreOfficeだけではなく、AbiWord/GnumericやKWord/KSpread、Googleドキュメントなどでもサポートされている。本当はMS-Officeでも、最近はOpenDocumentがサポートされており、LibreOfficeでMS-Office形式のファイルが開けるのとは逆に、MS-OfficeでOpenDocumentを開くこともできる。相互運用性の一例である。
以下に、不完全ながら日本語に訳されたwikiなどのヘルプがある。
以下は英語のドキュメント。
以下はwiki上のその他の情報。
JA福岡市がドキュメントを作成している。無料版のOfficeで経費節減(費用削減と管理効率化)を行うため、LibreOfficeを導入しているようだ。本当にコストカットになるのか(MS-Officeと違うため逆にコストがかかるのではないか)が心配だ。
LibreOfficeを使うことに対するメリットは、僕は4つあると思う。
やはり、パソコンを仕事で使うのであれば、ほとんど必須のソフトウェアとしてオフィススイートがある。今や、ボールペンや切り貼りで書類を作ることはどんどん少なくなっており、複合機もコピー機としての利用よりもプリンターやスキャナーとしての使用が多い。書類を作ってそれを印刷する、そのためにMS-Officeと同等のフォント・ドキュメント処理や高度な計算処理が使える統合ソフトウェアはどうしても必要になる。LibreOfficeは、Linux上で、オープンソースでこれを実現する。Linuxディストリビューションをインストールして、まず最初にGNOMEとMozilla FirefoxとLibreOfficeが入っていることが多いのは、「どうしても必要になるソフトウェア」だからである。そして、これをオープンソースプロジェクトが、どこかの会社の利益のために偏らず開発していることは大きい。
ただ、どうしても問題なのは、「動作の重さ」である。LibreOfficeの動作は重く、また不具合も多いため、安定して動くとは限らない。MS-Officeも昔不安定だったと言うが、LibreOfficeはそれに比べてもっと不安定である。これは、「オフィススイートというソフトウェアを開発できる人材が少ない」ということがある。PHPやGCCのようなソフトウェアであれば、開発者が使うため、使う人間が簡単に開発に参加出来る。それに比べて、普通の一般ユーザーが使うオフィススイートは、ユーザーがバグを見つけたから簡単に直したよ、とはいかない。これは、LibreOfficeの永遠の課題になるだろう。だが、オープンソースで開発されていることもあり、「もしかするとMS-Officeより安定しているかもしれない」ということは言えるかもしれない。特に、最近は64bit CPUになって、LibreOfficeの動作はそんなに重く感じなくなってきている。
LibreOfficeは、MS-Office互換である。よって、MS-Word形式やMS-Excel形式の文書を読み書きすることができる。
PDFやOpenDocument Formatのような公的なドキュメントの読み込みや書き出しに対応しているLibreOfficeであるが、今の時代、世界全体は完全にMS-Officeが標準である。この標準の壁を崩すことは難しい。
だから、メールで文書をやりとりする時も、MS-Office形式で文書をやりとりすることは決定的に多い。
よって、このようなMS-Office形式のドキュメントを開くことができるのはとてもLinuxを使う上で大きな助けになる。
だが、これにはひとつ問題点がある。それは、「完全に互換ではない」ということと、「搭載されているフォントが少ない」ということである。
完全に互換ではないため、一部のスタイルは崩れることがある。そして、何より問題なのが、フォントの少なさである。文書をコンバートする場合だけではなく、普通にワープロとして使おうと思った場合でも、搭載されているフォントが少なすぎて、使えない。多くのディストリビューションでは、VLゴシックぐらいしか選択肢がないのではないか。
このような場合、インターネットからダウンロードできるフリーフォントが使えることもあるが、この場合も、対応している書体が少ないなど、多くのデメリットがある。
LibreOfficeは、無料で使うことができる。
コスト削減と言ってオープンソースをもてはやす動きには、良く注意しなければならない。それは、「標準のWindowsやMS-Officeと違うため、使い方を覚えたり調べたりするのが面倒だし、使える人間が極端に少なく情報にもありつけないため、逆にコストがかかる」という側面があるからである。
だが、今の時代、Windowsだけにお金がかかるのではなく、さまざまなソフトウェアにお金がかかる時代になっている。
Windowsを使う場合でも、MS-Officeだけではなく、Visual StudioやOracle DBを使うならば、とても高価なお金がかかる。アンチウイルスソフトウェアも必要である。他にも、Adobe製品などはとても高額で、一般のユーザーには手が出せない。LinuxのLibreOfficeを使い、サーバーや開発ツールもオープンソースで揃えるのであれば、逆に、「今まで高いから購入しなかったけれど、使ってみたら面白かったからスキルが上がった」という、「世界の広がり」を体験することができる。これを「オープンソーススタック」として、全てをLinux上のソフトウェアだけで済ませて、全くお金を払わずにパソコンを使い、Windowsよりも高度な開発やシステム管理を行うことは、プロフェッショナルとしては大きなスキルアップに繋がる。
これはLibreOfficeの話ではないが、LinuxはLibreOffice以外にもTeXやviやEmacsのようなソフトがある。
TeXを使えば、Linuxでも書籍出版レベルの高度なドキュメント出力を得ることができる。また、viを使えば、UNIXコマンドをテキストエディタの中で使うことができ、モードを切り替えて効率的かつ機能的なテキストの編集ができる。Emacsは、Lisp環境となるが、最近ではAtomのような新しいエディタに押されている。
Linuxやオープンソースソフトウェアを使うメリットはこれくらいである。あとは、使いやすいOSを使ってほしい。特に、WindowsやMacでは、Linuxでは動かないさまざまな専用ソフトウェアが動く。僕も作業所では、日常的にWindowsやMacでAdobe製品を使っているし、自宅でもメインで使うのはWindowsマシンで、ホームページの執筆やWebサイトの観覧にはWindowsでMozilla Firefoxを使っている。
これらのソフトウェアは、OpenDocument形式によって専用のファイル形式を持ち、インタラクティブにWYSIWYG(ディスプレイに表示されるものと印刷される結果が同じ)な文書編集が可能である。
ワープロソフトウェア。MS-Wordのようにテキストに色やフォントを設定することが出来る。
表計算ソフトウェア。MS-Excelのように会社の事務計算のような、表計算による計算が出来る。さまざまな関数も使うことが出来る。
プレゼンテーションソフトウェア。MS-PowerPointに相当する。
ドローソフトウェア。グラフィック操作が可能。
データベース管理システム。MS-Accessに相当する。
数式エディタ。
マクロ処理やプログラミングを行うことができる。MSのVBAに相当する。
GTK+とHTML5のcanvasを利用して、ブラウザ上でオンラインに動くLibreOffice。
LibreOffice Writerでページ番号を挿入するのはちょっと面倒くさい。メニューからまずフッターを表示させ、このフッターの中でメニューからページ番号を挿入し、これをセンタリングすればよい。
LibreOffice Calcでの関数一覧は以下にある。
LibreOffice CalcでBasicを使うには以下の記事が参考になる。
LibreOffice Drawには、標準で用意されているさまざまな図形(シェイプ)があり、簡単な図形描画に利用できる。
また、曲線ツールからIllustratorやInkscapeと同様にベジェ曲線で図形を描く機能がある。Inkscapeほど細かい設定や高度な機能はないため、本格的なイラスト作成を行うならInkscapeを使おう。
OpenOffice.orgの後継版。
Wikipedia
昔のforkする前のオープンソースなOfficeスイート。OOoと略す。
Wikipedia
僕が個人的に思うのは、「LibreOfficeは使えない」ということです。
標準技術をベースにしていて、機能的にはワードやエクセルに太刀打ちできる(気がする)のですが、全く誰も使いません。
なぜかは明白。MS-Officeが標準的な、この地球の現代のせいです。現代のワード・エクセル文化で、いくらフリーと唱えたところで、パクリものは使われないのです。
Googleの作っている、Web版OfficeのGoogleドキュメントは評判が良いのに、なぜかLibreOfficeの評判は悪い。
Linuxでオフィスワークをするのは流行らないのです。
一時期、僕の通っているデザインの作業所でも、OpenOffice.orgをインストールはしていたようですが、「MS-Officeとはやっぱり別ものだよね」ということになって、あまり使われませんでした。
まあ、そんなものでしょう。LibreOfficeが日本で流行らないのは、日本語の問題もあるかもしれません。特に、日本語のフォントがVLフォントしか選択できない時点で、誰もが嫌います。LibreOfficeほど、誰からも嫌われているアプリケーションはありません。UNIXでWordと同じことをやる、という発想そのものに無理があるのでしょうね。
後日注記:使えないとは言いますが、世界は狭いもので、僕がLibreOfficeを重要視しているのと同様に、みんなもLibreOfficeをとても重要視しています。僕の作業所でも、MS-Officeを購入するお金がないためにOpenOffice.orgをかつて使っていました。そう、世界は少しずつ変わっています。特にMS-Officeの最近の逸脱さ加減は目を見張るものがあり、インターフェースをリボンにして元に戻すやファイルだけを別機能にするなど、「MSのありえないやり方」には懸念を示す人間が多いです。
実際にLibreOfficeを使うことを考えて、気になるのは「MS-Office互換と言うが、どこまで互換なのか」である。
たとえば、エクセルのマクロやVBAはどうなるのかとか、フォントが無い環境ではどのように表示されるのか、などがそれに当たる。
そして、「フォーマットが互換なのは分かるが、機能や使い方が違っていて、MS-Officeを使うためにMSに払うお金に対して、割に合わない」ということが挙げられる。
たとえば、ページ番号を自動で割り振る場合。MS-Officeにはページ番号という機能があるが、LibreOfficeにはない。このような場合、ネットで調べたところ、フッターと呼ばれるものを追加して、そこにページ番号の自動テキストを手動で入れなければならない。これはMS-Officeと同じ使い方ではなく、調べるために多大なコストがかかる。
よって、LibreOfficeがあるからといって、今までよりも簡単かつ無償でオフィスワークができるわけではない。Linuxなら、最初から、LibreOfficeなんか搭載せずに、EmacsとLaTeXでやった方がはるかにマシである。
それに、MS-Officeにはさまざまな人に使われて培われてきた、「実績」のようなものがある。経営者から子供まで、誰でも分かるのが昔からのMS-Officeである。Microsoftも、もっとMS-Officeがきちんと動くように、改良を重ねてきた。WindowsとMS-Officeという最強のソフトウェア環境に、今のLinuxとLibreOfficeでは、全く歯が立たないだろう。
最新のLibreOffice 6.2では、NotebookBarインターフェースが使えるようになった。これはMS-Officeでのリボンインターフェースと同様に、ツールバーをタブで切り替えることのできる新しいインターフェース。
はっきり言って、LibreOfficeの開発者は、どうかしていると言わざるを得ない。リボンインターフェースをパクる。ありえない。
ただし、最近のリボンに慣れたWindowsユーザーからしてみると、GNOME 3にDash to Panelを入れたUbuntuで、リボンインターフェースのLibreOfficeを使うと、Windows 7と全く同じようには使えるだろう。だが、僕はありえないパクリ放題にしか見えないと思う。
LibreOfficeはMS-Officeと互換性があり、MS-Office形式のファイルを開けます。MS-Officeを参照のこと。
その他のオフィススイート(Linux/Windows含む)はOfficeソフトウェアを参照のこと。
LibreOfficeを使わなくても、TeXやgnuplotといったソフトウェアを使うことで文書作成やグラフ描画が可能です。TeXやgnuplotも参照のこと。
Linuxで使えるテキストエディタのEmacs, viについては、Emacsやviを参照のこと。
LibreOfficeの入っていないパソコン向けにPDF形式のドキュメントファイルを吐き出すことで相互運用を行うことができます。PDFを参照のこと。
LibreOffice