Adobe Photoshopの世界観1(基本)。
以下の内容は、僕自身がデザインの作業所で見習いとして学び経験したことに基づきます。書いている当時がとても未熟であったため、誤解や勘違いが多くあります。
作業所の同僚やスタッフにも多くのことを教えていただきました。
実際に僕が制作したデザイン作品はイラスト・作品ギャラリーにあります。
Photoshopはラスター系ペイントソフト。ベクトル系ドローソフトのIllustratorとは異なり、画像データをドットやピクセルを保持する。よって、拡大・縮小すると画質が変化する。
写真を加工するのに使うほか、お絵描きやイラスト制作にも使える。また、レイヤースタイルやマスクなどを使うことで、高度なグラフィックデザインや装飾、あるいは写真の合成や効果・フィルター加工、明るさや色味の補正に使うこともできる。
出版業界やグラフィックデザイン業界では、定番中の定番ソフトであり、事実上の業界標準だが、価格は高い。Illustratorと合わせてAdobe CCのコンプリートプランを購入するのが普通だが、一ヶ月で約5000円である。代替としては、オープンソースのGIMPや、コーレル社などの製品がある。GIMPはオープンソースで無料ダウンロードが出来て機能的に劣っていないのは魅力的だが、CMYKに対応していないなど印刷物に使うのは少しためらわれる。昔はマクロメディアという会社があったが、Adobeに買収された。
プロでなくても、簡単な補正や画像加工をする際に使える。また、機能はとても多く、便利だが、「分かっている人向け」の機能が多いため、初心者が簡単にマスターすることはできない。
Photoshopでできることについては以下のページが参考になる。主に写真加工や合成、コンピュータグラフィック、イラストなどの用途に使える。
Photoshopで絵を描くにはブラシを使います。ブラシパネルから、さまざまな設定、特に拡張機能と呼ばれる細かい設定が可能です。
また、シェイプを使うことで、Illustratorと同様のベクトル形式のパスを使った図形を描くことができます。ブラシは細かいタッチに向いていますが、シェイプははっきりとした図形を描くのに向いています。シェイプにはレイヤースタイルが適用できます。
選択範囲は、四角形や楕円形でも選択できますが、クイック選択やマグネット選択を使うことで、写真のものとものとの境界線を自動認識して選択できます。ほかに、選択範囲を変形したり、ふちどる(境界線の部分だけを選択する)やぼかす(境界線をぼかして分かりづらくする)などのような使い方ができます。
また、パスを選択範囲に変換したり、選択範囲をパスに変換することもできます。
選択範囲を上手く使うことで、写真の一部分だけを選択し、そこにフィルターを適用することができます。
また、レイヤーやマスクを上手く使うことで、複数の画像を重ね合わせることができます。写真の一部分だけをマスクして見せたり、後ろにグラデーションを引いたり、といった使い方ができます。
Photoshopは、レイヤースタイルやフィルター機能を上手く使うことで、自分独自の効果やエフェクトを簡単に作れます。
レイヤースタイルは文字やシェイプに適用することの多い機能で、単調な図形に効果をつけて豪華で複雑で高度なスタイルを適用することができます。
たとえば、暗闇の中に浮かび上がるネオン照明のようなものを作り、イラストの線に適用したりすることが、PhotoshopとIllustratorで簡単にできます。
こうした技やテクニックは、インターネット上に「チュートリアル」(イラストなどを作るための方法の説明やイントロダクション)がたくさん公開されています。英語のサイトが多いですが、PhotoshopやIllustratorの操作方法に慣れた人であれば、簡単な英語力でなんとなく分かると思います。こうしたチュートリアルは「Illustrator チュートリアル」などと検索エンジンで検索すればすぐに一覧がでてきます。
Photoshopにはさまざまなスタイルが登録されている「スタイルパネル」があり、レイヤースタイルで作成したスタイルはスタイルパネルに登録できます。
(世界一わかりやすいPhotoshop 操作とデザインの教科書 CC/CS6対応版 (世界一わかりやすい教科書)を参考に執筆しました。)
パスデータで図形を保持するIllustratorとは異なり、Photoshopでは後からの写真画像の編集や再加工がしづらい。選択範囲とレイヤー(レイヤーマスク・レイヤースタイルなど)を使いながら、補正やフィルターをかけていく作業が重要になる。
ヒストリーパネルには、操作と処理の履歴が残る。ここから操作を元に戻したりすることができる。
また、ヒストリーブラシを使うことで、ある一部の領域をブラシのように塗って以前の状態に戻すこともできる。
レイヤーは画像を重ね合わせる機能。
透明度や描画モードを設定したり、レイヤーマスクで切り抜いたりできるほか、レイヤースタイルで効果をかけることで、影をつけたり、立体的に見せたり、光の効果を与えたりすることができる。
画像の重ね合わせ以外に、マスクをかけたり、あるいはテキストレイヤーやシェイプレイヤーのような特殊な「編集状態を保持する」レイヤーを使ったり、あるいは効果やスタイルをかけることでそのレイヤーに特殊な処理や加工を行うことができる。
テキストレイヤーは、文字を扱うことのできるレイヤー。ベクトルデータなので、変形しても劣化しない。
シェイプレイヤーは、ベクトルデータを扱うことのできるレイヤー。Illustratorと同じようにベジェ曲線でパスを描く。
調整レイヤーやスマートオブジェクトを使うことで、レベル補正などの写真加工を何度でもやり直すことができる。
マスクは画像の一部だけを見せたり、一部だけを消したりすることができる。グラデーションなどと使うことで、徐々に透明になっていくマスクを使うこともできる。レイヤーマスクを上手く使うことで、月と建物などを簡単に写真合成したりすることができる。
グラデーションを上手く使うことで、空を表現し、曇り空を青空のようにすることもできる。
パターンは、ブラシや塗りつぶしに色やグラデーションだけではなく、ある画像の一部のような見た目でお絵かきをすることが出来る機能。あるパスをレンガのように塗りつぶしたり、レンガのようなブラシでお絵かきをしたりすることができる。
以下の書籍が参考になります。
Photoshop初心者が戸惑いがちなこととして、選択ツールや切り抜きツールは、変形(たとえば回転や拡大縮小)をした後で、「○」を押して確定しなければ、その後の動作ができません。
なので、四角形選択ツールで選択した後、選択範囲を変形して斜めの四角にするなどしたら、いったん上部のバーに表示されている○を押して確定し、その後で「ぼかし(ガウス)」などのフィルター効果を適用しなければなりません。
切り抜き(トリミング)ツールなども同じなので注意しましょう。
選択ツールはとても多用します。たとえば、クイック選択やマグネット選択ツールなどは、写真補正をする時に使いますし、四角形選択ツールは名前をぼかす時などにも使えます。
クリッピングパスによってPhotoshopで写真を切り抜くのは、Illustratorでクリッピングマスクで切り抜くのと同様に使います。
また、選択範囲をパスにしたり、パスを選択範囲にすることもできます。
選択ツールとブラシツールを組み合わせることで、四角形の範囲を上手く白のブラシで塗りつぶすこともできます。
Photoshopのコツは、選択ツールとレイヤーやフィルターを上手く組み合わせることではないかと思います。
後日注記:選択ツールでよく使うのは、写真の境界線をなぞって自動で認識してくれるクイック選択ツールと、多角形の領域を囲って選択できる多角形選択ツール。ほかにも、スポイトで色を指定して選択できる色域指定のような機能がある。また、選択範囲の拡張を行うことで選択範囲を大きくすることができ、境界をぼかすことで縁取りをぼかすことができる。また、選択範囲を反転させることで選択していない部分だけを選択できる。この選択された状態で、選択した部分にだけフィルター効果をかけたり、選択範囲ごとに個別にトーンカーブやカラーバランスなどの色調補正を適用させたりすることができる。
2025.08.05編集
Photoshopの使える機能がバッチ。複数の写真や画像ファイルに同じ処理を行うために使える。たとえばRGBをCMYKに変換したり、サイズを拡大縮小したりするのに使うことが多い。
2025.05.25
Photoshopを使う上では、レイヤーをよく使います。レイヤーをマスターすることが、Photoshopのマスターに繋がります。
レイヤーを使ったテクニックとして、写真の中の手書きの文字だけを濃くはっきりさせる方法を説明します。
まず、手書き文字の含まれた写真が一番下のレイヤー(レイヤー1)となった状態で、通常と同じようにトーンカーブを使って、カーブを上向きに明るくして写真を補正します。この時、写真の中の手書き文字も一緒に補正すると、文字が明るく(薄く)なってしまい、小さな写真では読むことが難しくなります。なので、これから、文字の部分だけを濃くすることで、文字をはっきり読めるようにします。
このレイヤー1をコピーします。レイヤーをコピーするためには、レイヤーパネルからレイヤー名を選択し、「+」と表示されているボタンにドラッグ&ドロップします。そして、新しくできたレイヤー(レイヤー2)で、今度はトーンカーブでカーブを下向きにして暗くします。この時、写真全体が暗くなるのと一緒に、文字も暗く(濃く)なります。この文字が濃くなるのを利用します。使うのは文字の部分だけなので、写真全体が暗くなるのは考えなくて構いません。
この状態で、レイヤー2において、メニューから「色域指定」を選択し、スポイトで文字の部分の色だけを指定することで、文字の周りだけを選択します。そして、この文字だけが選択された状態で、Ctrl+Cをクリックして選択範囲をコピーし、Ctrl+Vで新しいレイヤーに貼り付けます(レイヤー3)。こうすることで、濃い文字だけのレイヤーを作ることができます。この状態で、3つのレイヤーができましたが、使うのはレイヤー1とレイヤー3だけです。この二つを結合して、明るい写真の上に濃い文字だけを乗せます。レイヤー2は削除します。
これで完成ですが、実際には注意点がいくつかあるので、次にそれを説明します。
まず、色域指定をした時に、文字の部分だけではなく、周りの部分も選択されてしまいます。このため、消しゴムツールを使って、ブラシのようになぞって消していきます。これは地道な作業です。消しゴムツールはまずブラシの大きさをある程度大きくし、徐々に小さくしながら、文字の輪郭を縁取って消していきます。レイヤー3だけを表示させるのではなく、レイヤー3とレイヤー1を一緒に表示させながら作業すると、最終的な結果を見ながら作業できるので効果的です。
もし、手書き文字が細すぎた場合は、色域指定をした後で、メニューから選択範囲の拡張を行い(選択範囲が大きくなる)、スポイトで文字から取ってきた色でメニューから塗りつぶすことで、文字を太くできます。この時、文字以外の領域も選択されているので、塗りつぶしを行うと全体的に色がついてしまいますが、これは消しゴムツールで地道に消していきます。
また、文字が左右のどちらかに偏っていた場合など、文字を移動したい時は、まず、レイヤー1にある文字を、スポイトで周りの色を取ってきた後で、ブラシツールで塗りつぶして消します。この時、色のムラができるので、指先ツールという周りの色をなじませることのできるツールで調節します。そして、レイヤー3を表示した状態で、選択ツールで文字の周りを選択し、移動ツールを選択し、その状態でShiftと一緒にカーソルキーを一回押すと、文字の輪郭だけが選択されます。この状態で、カーソルキーで文字を移動できます。
それから、個人情報など消したい情報があった場合、跡形なく消したい場合は、コピースタンプツールを使って消します。コピースタンプツールは、Altを押しながらクリックした場所の色をコピーして、単にクリックした部分に塗りつぶすことができます。ぼかして消したい場合(こちらのほうが簡単)は、選択ツールの後にメニューのフィルターから「ぼかし(ガウス)」を行います。また、最近のPhotoshopではAIを使って消したい部分だけを跡形もなく消すことができます。
あるいは、トーンカーブで暗くして色を濃くするという方法以外に、文字の周りを色域指定で選択した上で、カラーバランスなどを使って色を鮮やかにするという方法でも、色を目立たせることができます。
このように、Photoshopにはレイヤーを使ったテクニックがたくさんあります。「レイヤーを制するものはPhotoshopを制する」と言って構わないでしょう。
2025.08.05
Photoshop2(写真加工・補正)、Photoshop3(フィルター)を参照のこと。
Adobeによる動画・映像編集ソフトウェア。
CC契約を購入すると、一緒に入ってくる。テレビ局の人も使うような定番のプロ向けソフト。自分は作業所で少しだけ接したことがある。
個人向け(あるいは初心者向け)のPhotoshop。
Camera Rawは写真の編集ツールで、Photoshopで行う写真補正がより簡単かつ一画面から行える。
2024.10.05
Adobeという会社は、デザイナーの神のような会社で、とても多くのシェアを持ち、デザインとDTP業界では寡占状態にある。「Adobe製品を知らないものはデザイナーではない」と言われるほど、デザイナーに支持され、また買われている。
最近は、CS6のようにただ製品を売るだけではなく、Creative Cloudという「一ヶ月単位での利用料」を取るようになった。IllustratorやPhotoshop単体なら、まだ何とか買えるレベルの料金だが、コンプリートプランにすると1か月5,000円近くする。だが、それでも、Adobe製品は買われるのである。
ある意味、Adobeもおかしな会社である。それは、デザイナーという職業が完全に「パソコン依存」になっているからである。昔のように、絵の具で紙に描いている人間も、まだ居るだろう。だが、ほとんどのデザイナーはパソコンでAdobe製品を使う。完全に独占状態であり、買わざるを得ない。デザインは完全にパソコンでやる時代なのである。
それは、敵が居ない、ということもある。Macromediaを買収したことで、FLASHやDreamweaverも今では完全にAdobe製品のラインナップである。僕は昔CorelのPainterというリアルなタッチが得意なペイントソフトを使っていたことがあるが、Adobeと比べて完全に負けている。クリスタやSAI、それからGIMPのようなフリー・オープンソースのソフトウェアもあるが、「話にならない」レベルである。誰もがPhotoshopとIllustratorを使う時代なのである。
だが、Adobeはオープンソース業界と仲が悪いわけではない。最近は、Googleなどと協力して、オープンソースのフォントをリリースした。これはLinuxでも利用出来る。それから、Adobe Flexという「FLASHを利用してリッチなコンテンツをインターネット上で実現する」というフレームワークは、オープンソースのApache Flexになっている。
そうはいっても、Adobeは古い会社である。そもそもが、PostScriptに基づいており、PDFも含めてさまざまな技術を世に送り出してきたAdobeは、昔からオープンソースと仲が悪かったわけではなく、PostScriptやPDFはLinuxやもっと古いUNIXのハッカーが見ても、「我々の仲間」なのである。ここが、OracleやMicrosoftと違う点である。Adobeはオープンソースと仲良くやっている。だから、高い金を払って使うだけの「価値と品質」があると言わざるを言えないのである。GIMP/Inkscapeなんか、全く歯が立たない。戦略ではなく、クオリティで完全に勝っている。それがAdobeである。
ただし、Adobeはオープンソースというよりも、昔からの「アナログデザイナー」から嫌われている。Adobe製品を使って作られたグラフィックは、とても高度で美しいのだが、何かの味に欠ける。そこが、今でもデザイナーが絵を紙に描く理由である。Adobeはコンピュータ業界の先駆者として、アナログなデザイン業界と戦っている。だから、オープン陣営からも好かれているのである。
Adobeによる公式のエントリー資格。専門学校に通っている学生向け。
Photoshopの資格。
書籍