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=六章 火の都=

滅びた世界

そうこうしているうちに、約束の3か月は過ぎた。一同は、最初の目的を思い出して、フォイアーへと続く、砂漠の地へと向かった。

砂漠を歩いて進むのは困難なので、ガブリエルはジープを調達した。そのジープに乗って、砂漠を横断していく。見ていると、何も無いようで、色んな生命が居る。それも、この砂漠には、巨大な体をした、まるで巨人のような生命が多い。巨大ゴキブリ、巨大ミミズ、巨大ネズミ、そういうものが沢山住んでいる。一同は慌てずに、途中で何度もジープの中で夜を過ごした。そして、フォイアーへと辿り着いた。

だが、フォイアーは、地獄のような場所だった。

人々が、町のいたるところに倒れて、飢えている。服も着ていない人間が居る。病気のようになっているものも多い。異臭もする。仁は、「これは酷い。何ということだ。」と言った。そして、見ているうちに、周りからやくざのような集団に囲まれてしまった。やくざは、「おめえたちは何だ。この場所に、何の用だ。」と言った。そして、そこらじゅうに居る全員が、「恵んでくれ。」と言っていたが、何も与えないと、すぐに、「帰れ。帰れ。」と言うコールに変わった。一同は、元来た道を戻るしかなかった。

フォイアーは、本当に、「この世界が滅びると、こういう風になるのか」と言うことを、良く分かる町だった。いたるところに廃墟があって、何も無い。ただ、飢えた人々はいくらでも目に付く。それらは、全くまともな生活が出来ていない。そういう町だった。

ただ、先の町へ行くためには、フォイアーも通過するしかない。それこそ、一同には、杖と言う道具がある。ガブリエルは、「皆、今こそこの杖を使って、戦うべきだ。」と言った。仁は、「分かった。力業で通り抜ける。それしかないね。」と言った。涼子も、「分かったわ。」と言った。そして、一同は、「フライ!」と言って、まず空を飛んだ。そして、「ムーブ!」と言って、空を移動し、全員で、「スパーク!」と唱えながら、雷を放って、フォイアーと言う町を通りぬけた。死者は居なかったが、多少怪我人は居たかもしれない。だが、一同は通り抜けた。そして、一同は、シュバルツへと向かうことにした。

ジープは、魔法スモールで小さくして、ポケットの中に入れて運んだ。

貧しくても幸福な村

シュバルツへと向かう最中に、小さな村があった。

その村の少年や少女が、仁たちに話しかけた。彼らは黒人だった。

少年は、「私は、サムと言います。あなたがたは、どこへと向かうのですか?」と言った。

仁は、「これから、長い旅をするつもりです。ラッセルへと向かいます。」と言った。

サムは、「私たちは、貧しい暮らしをしています。でも、心の中は、幸福でいっぱいです。この村には、何もありません。寺と、店と、畑と、家畜小屋と、いくらかの商売人と、沢山の貧しい人々が居ます。でも、私たちは、助け合って、同じ神を信じて生きています。だから、私たちは、一番貧しくても、一番幸福だと思って生きています。」と言った。

太一は、「具体的に言うと、どこが良いんだい?」と言った。

サムは、「家のことも、仕事のことも、皆ですることで、全部分かる。住んでいる人間も、来る人も全員分かる。何か大きなことがあった時は、皆が出てきて、皆で助け合う。悪いことをする人は居ない。馬や羊すら、良い家畜が多い。そして、ものは、工場で作らないせいで、楽しい。スイカを洗ったりするのでさえ、工場でするのは、つまらない。

現代の先進国のアメリカ人のような人々は、豊かになっているように見えて、何も豊かになっていない。高度なIT技術と組織のせいで、何もしなくなっている。

心は冷たくなって、自分勝手になって、他人のことを突き放して、自分だけが得をするようになっているのだろうね。何もしないせいで、人間的な体験と言うものを、何も知らない。赤ん坊の時代から何も進歩していない。色んな人生の沢山の成長の段階があるのを、学校の中だけで知っている。それでは、世界のことが何も分からない。」と言った。

涼子は、「不思議ね。あなたは、見かけは貧しいのに、心は豊かなのね。」と言った。

もう一人の少女が言った。「私の名前はマリーよ。

見て。あそこで、孤児になった子供の集まるコミュニティをやっているわ。

でも、全く不幸に見えないでしょう。皆で遊ぶうちに、自分が孤児だと言うことを全く忘れてしまう。沢山のことを一緒にする中で、村中全員と親友になれるのよ。

それから、精神がおかしくなった人や、資産が全く何も無くなった人、アルコール中毒になった人、この村では、そういう人々を皆受け入れて、楽しい場所で一緒に過ごすのよ。本当に楽しくて、幸せで、このまま、永遠に過ぎれば良い、そんな世界よ。」と言った。

村は、そうしていると、いつの間にか、幻想のように消えてしまった。

ガブリエルは、「これは、幽霊村だ。亡霊のように現れて、蜃気楼のように消えていく。この村は、最初から何もない中で、何かを私たちに教えるために現れる。」と言った。

仁たちは不思議に思ったが、そのまま、先へと急いだ。


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