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=五章 水の都=

草の根の競争

一同は、夜を越えて、朝、それぞれの覚悟を胸に、いざ、ヴァッサーへと向かった。

ヴァッサーの途中で、ある集団と出会った。その集団は、ヴァッサーへと入る門を占拠するように、そこに居座っていた。

集団の頭のようなものと、一同は話し合った。集団の頭は、「私の名前は、トマスと言う。お前らは、ヴァッサーへと行きたいのか?」と言った。ガブリエルは、「そうだ。」と言った。トマスは、「それなら、我々の仲間として、協力してほしい。」と言った。ガブリエルは、「どういうことだ?」と言った。トマスは、「我々は、このヴァッサーと言う町で、競争をしている。相手は、天下の大企業だが、我々は、草の根のコミュニティとして、その大企業と戦っている。我々に協力するなら、この門を通してやろう。」と言った。

ガブリエルは、「大企業とは、どこのことだ?」と言った。トマスは、「最先端の会社だ。名前は、ウルトラ・カンパニーと言う。協力してもらいたいのは、我々の仲間を広げるために、色んな活動をしているが、その何かに協力してほしい。我々がしているのは、我々独自のシステムの開発である。このヴァッサーと言う町で、ウルトラ・カンパニーが勝つか、我々が勝つか、2つに1つの競争をしている。それに協力してほしい。」と言った。ガブリエルは、「我々に技術は無いが、それで良いのか?」と言った。トマスは、「それなら、コミュニティの形成に力を貸してほしい。」と言った。ガブリエルは、「とりあえず、検討してみよう。門を通してくれないか?中で話し合おう。」と言った。トマスは、仲間と少し言葉を交わして、「良いだろう。この門を開けてやる。そして、中にある、我々のアジトで話し合おう。」と言った。そして、ガブリエルたち一行は、門を通してもらった。

そして、ヴァッサーで仁たちが目にしたのは、天国のような、水の町の美しさだ。

だが、それをあまり見る時間の無いまま、一向はトマスたちのアジトに連れて行かれた。

アジトでは、10人ほどの下っ端が、パソコンとともに、色んなことを考えているようだった。トマスは、「ようこそ。我々のアジトへ。ここでは、我々は新技術の開発とマーケティング戦略をしている。」と言った。ガブリエルは、仁たちに小声で、「あまり関わるべきでないかもしれない。テロリストのような集団だ。」と言ったが、それをトマスが聞いていた。トマスは、「テロリストとは言うが、全く、我々は平和な集団だ。合法的に、ウルトラ・カンパニーと競争している。我々につくものも多い。」と言った。トマスは、「ここにある、大型コンピュータ室の中に、問題のシステムはある。高度なシステムを、全員の力で構築している。それより、君たちはラッセルに行きたいのではないか?」と言った。ガブリエルは、「そうだ。」と応えた。トマスは、「それなら、我々が女王へと案内してやろう。最近、女王は我々に親しい政策を取るようになった。ヴァッサーの女王、シンベルニアは、我々が仲介すれば、君たちとも会ってくれるはずだ。何か、良いものを授けて下さるかもしれないぞ。どうだ。我々に協力したまえ。」と言った。

ガブリエルは、仁たちに「これは良いチャンスだ。シンベルニア女王は、悪魔の国の領地の攻略に秀でていることで知られている。何か良いものを下さるかもしれない。」と言ったが、一同は、「もっと良く考えた方が良いのではないか?」と言った。仁は、「ガブリエル。こんなみすぼらしい集団は後回しにして、どこかで資材を調達した方が良いのでは?」と言った。太一も、「この集団、怪しいと思う。」と言った。康平は、「こういう集団に関わると、ロクなことが無い。」と言った。涼子は、「シンベルニア女王ってどんな人なのか知らないけど、会ってみて、それから考えたら?」と言った。聡美は、「チャンスを掴むのは良いと思う。でも、早く次の町に行きたい。」と言った。ガブリエルは、トマスに「協力するかどうかは、皆で考える。だが、次の町へと向かいたい。それで、道を通してもらえないか?」と言ったが、トマスはこれに怒った。「それなら、出て行ってもらう。門は開けることは出来ない。おい、皆のもの、こいつらを門の外に追い出せ。」とトマスは言った。

それ以降は、それぞれは強制的に門の外へ連れ出されてしまった。

トマスは、最後に、「このヴァッサーと言う町では、ウルトラ・カンパニーにつくか、我々につくか、他に選択肢は無い。どちらにもつかないものは、皆の手で追い出している。」と言った。ただ、「我々とウルトラ・カンパニーは、ある意味では協力的なところもある。重要な政策ではいつも譲歩や協力をしている。お前たちは、ここから出て行くんだな。」と言っていた。そうして、一同は、元来た道へと戻された。

ウルトラ・カンパニー

ガブリエルは、「今の話では、どうやら、ウルトラ・カンパニーにつくことも出来るようだ。ウルトラ・カンパニーについて見ようか?」と言った。一同は、それが良い、と言った。見ていると、今のテロリストのような集団とは別に、明らかに正統派国民のような集団が、東の方に見えた。一同はその東へと移った。ガブリエルが話しかけると、それらは、ウルトラ・カンパニーの集団だと言うことだ。そして、一同はそれらと協力して、物資を調達することにした。

ウルトラ・カンパニーの集団は、「我々は親しみやすい集団です。ようこそヴァッサーへ。」と言って、仁たちを迎え入れてくれた。

一同は、ヴァッサーへと入って、宿を取ることにした。

通せんぼ

ただ、新しい問題が浮上した。それは、宿で、女将さんが言った言葉だった。

女将さんは、「ようこそ。私はエリーと言います。皆さんに、注意してもらいたいことがあります。それは、夜間、この町に出てはいけません。そして、フォイアーと言う町に行ってはなりません。今、この町は政治的にごたごたしています。出来るだけ、この町から出ないようにして下さい。特に、フォイアーの方面に出ることは強く禁じられています。そして、この周辺には、砂漠が多いです。危険です。」と言った。

ガブリエルは、それで、仁たちに、「これは困った。我々がラッセルに行くためには、どうしてもフォイアーの方面に行かなくてはならない。それに、砂漠を越えて行く必要もある。何とか抜け出す機会を伺って、隙を見てこの町から抜け出そう。」と言った。

一同は、町の外に出られないのは分かったが、町の中なら自由に色んなところへ行ける、と言うことで、町を物色することにした。

見ていると、町は美しい水の都と言う姿とは対照的に、スラムのような環境や、路上生活者など、貧しいものの姿が目立つ。

そのうち、涼子があるものを発見した。涼子は、「この、自分の姿を隠せる、透明マントと言うツールはどう?姿を隠してしまえば、町の外に出られるかもしれないわ。」と言った。また、太一がある発見をした。それは、門の管理人が、20分ほどの間、次の管理人との交代をするために、門の警備を外れている。見ていると、その20分ほどの間は、門を誰も見ていない。仁は、「透明マントを被って外に出て、20分間の間に門を通過する。それでフォイアーへと行ける。」と言った。ガブリエルは、「その作戦で行こう。」と言った。

一同は、物資を調達し、透明マントを買って、そして、管理人がいつ変わるのか、入念に研究した。そして、一同は、人の少ない、夜の中で、管理人が変わるその瞬間に飛び出すために、透明マントを被って、外に出た。

ただ、それは上手く行かなかった。透明マントは、劣悪な代物で、いくらか目を凝らしていると、明らかにそこに人が居るのが分かるような、価値の無いものだった。

そういうわけで、一同は捕まってしまった。だが、そんなに大きな罪ではないため、死刑のような思い罪にはならず、女王の前に連れ出されることになった。

強制労働

女王は、「あなたがたは、何のためにフォイアーへと行きたいのですか?」と仁に行った。仁は、「魔法の水晶玉が必要なのです。どうしても、ラッセルに行きたいのです。魔法の水晶玉が無ければ、僕らの故郷に帰れないのです。」と弁解した。女王は、「どうしても、フォイアーへと行きたい、と言うのなら、条件があります。それを満たしてくれれば、フォイアーへの道を開けてあげましょう。」と言った。太一は、「条件とは何ですか?」と言った。女王は、「3か月の間、ウルトラ・カンパニーへの協力をして、システムの開発を手伝っていただけたら、フォイアーへの道を通してあげましょう。」と言った。

ガブリエルは、仁たちに、「これは幸運だが、3か月はちょっと長いな。皆、それで良いと思うか?」と言ったが、一同は、それで良い、協力する、と意見を一致させた。

仁たちはプログラマー見習いとして、ウルトラ・カンパニーに入社することになった。

ITの仕事

ただ、基本的に仁たちには技術力は無い。基本的に、仁たちにはプログラムは書けないから、マニュアルを担当した。ただ、技術的なことはいくらか教えてもらった。

仁たちは、最初の一週間は研修として、教えられたことをきちんと覚えた。そして、マニュアルを書いて、色んなものを調べているうちに、システムの構造を知って、自然と技術力がついて、成長した。情報共有を、自分たちの会社の中で、あらゆる部署や組織との間で行った。ウルトラ・カンパニーは良い会社で、本当に自由に色んなことが出来た。

ウルトラ・カンパニーのシステムは、UNIXを使っている。これは、カーネル、コマンド、グラフィック、ネットワークに分かれた高度なシステムで、仁たちは、コンパイラ、自動コンパイルシステム、ネットワークインストール、設定と管理、グラフィックシステム、サーバ管理などを、構造的に学び、そのためのマニュアルを整備して、初心者でもこのシステムを簡単に使え、作れるように、インフラ環境を整備する、と言うことをしていた。

また、仁たちはいくらか開発の分野にも参加した。開発プラットフォームのようなライブラリの整備をして、UNIXで動くグラフィックやネットワークやテキスト処理の、独自のクラスライブラリを作った。それから、グラフィックのコンポーネントとして、四角形の領域を表示するような、ワープロからWebブラウザまで、あらゆるものに適用出来る、グラフィック・ライブラリのようなものを開発した。

聡美は、「強制的な労働のはずだったのに、こんな良い環境は無いわ。永遠にここに居たいくらいだわ。」と言った。

会社で働く中で、一同は本当にコンピュータ・システムに詳しくなったし、色んなことが分かった。仁は、「本当に成長して、色んなことがあった。全てのことが分かったりした。システムを知り尽くすことで、社会や歴史や文化のことが良く分かった。」と言った。

また、仁たちはDebianと言うLinuxディストリビューションを使って、Cinnamonと言うデスクトップ環境を使って、そのシステムを保守し、維持する仕事もやっていた。このシステムは、本当にWindowsよりも優れたシステムだ。

仁は、「これなら、Linuxもきちんと人々にお勧め出来る。Linuxは使えない、と言う評判は、DebianのCinnamonなら、きちんと使えるものとして、薦められるかもしれない。Linux Mintも良いが、動作が重たい。Debianは、軽快だ。GNOME 3は、賢いが、使い辛い。Cinnamonは、Windows XPと同じで、使いやすい。」と言った。

また、仁たちは会社や経営の戦略みたいなことにも、意見を出した。仁は、「人間の手動の編集能力と、機械のシステムを上手く使って、ユーザーによる共有や集積を上手く活用すること。ウルトラ・カンパニーの未来は、そこが出来るか、出来ないかだ。」と言った。

それから、仁たちは、革新的なテレビのようなものも作った。鏡と同じように、全ての光を出すことによって、3Dのテレビを実現する。涼子は、「鏡と全く同じにしただけなのに、本当にそこにものがあるかのように映像が見えるわ。ある意味、不気味ね。」と言った。

五次元の物理学

また、他の3人とは違って、太一と康平は、物理学の実験室のようなところに配属された。

康平は、物理学の空間と次元と素粒子の研究をした。

そこで、康平は、「次元が異なる空間や、原子の中を探っていると、大きくなれば大きくなるほど小さくなっていき、平行に進めば進むほど、曲がってしまう。

そういう、全く幾何学的な、正常な常識と違う、異質な空間性を持っているのが、五次元の空間だ。おそらく、そういうことになる。

そこでは、どこかで起こっていることがそこで起こっていない。そして、誰一人知らないことを宇宙が全て知っている。

視覚化すると、カラフルで、全ての空間と時間が概念のように、発生したりしながら、次元と空間が、色んな始まりから、沢山の次元と空間を開始するような、そんな空間になる。

そういうわけで、五次元の宇宙から見ないと、この宇宙のことは何も分からない。

人間には全く何も分かりえないぐらい、宇宙は高度だと言うことが良く分かる。

生物学を高度だと言うが、本当の宇宙は、生物なんかと比べ物にならないほど、高度だ。

僕には、それ以上歯が立たない。」と言った。

康平が発見した宇宙の真実は、応用されて、何もしなくてもワープし、仮想現実を作り、作られるわけがないはずのモニュメントやクリーチャーを異質に作れるような、そんなウルトラ・カンパニーの新しい事業に使われた。

康平は、「この魔法の世界には、テレビゲームなんか、要らない。僕達の技術力だけで、日本のテレビゲームをはるかに超えるような、凄いものを作れるだろう。」と言った。

木星の生命

また、太一は、宇宙の観測から、木星に生命が居そうだ、と言うことを研究した。

太一は、「木星の生命は、ガス状に分離されていて、融和したり、分裂したりを、常に繰り返して生きている。そのために、実体がない。

彼らの中では、物質も、光も、存在していない。

見ていると、全ての物理世界のことを、全く地球の生命とは違うような眼で見ている。

それから、木星で起きている現象すら、全く違う。ガスの放射の現象が、地球とは全く違う。全く違う環境の中で、同じ気体でも、全く違う放射の仕方をする。

ただ、それらを生命だと正確に判断するところまでは、行き着かなかった。」と言った。


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