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=四章 事件=

テロリスト

次の日、一同は、もう一度ハルミヤ国に行くことにした。

ハルミヤ国へと水晶玉を使って行った。ただ、今回は、何かがおかしかった。

それは、教会についても、周りには誰も居ない。どこにも、がらんとした空間しかない。

太一は、「皆、どこへ行ったのだろう。庄司やガブリエルが居ない」と言った。

そして、一同は、周りを散策しようとして、教会の外に出た。そうすると、一向は思いがけない光景を目にした。それは、沢山のテロリストのような集団が、教会の周りを占拠していたのだ。テロリストは、全部で10人ぐらいは居ただろうか。見ると、すぐそこにガブリエルが居たが、ガブリエルは、何かの力で動けなくなっているようだった。

テロリストが一同に「そこに居るものたち、どこから来た?」と話しかけた。仁は、「シルミヤ国から来た。君たちは何者?」と言った。テロリストは、「私の名前はカイト。この世界で、色んな場所へ行って、金品などを強奪して回っている。私達の裏には、このハルミヤ国で最強だと言われる、ザージス卿が控えている。ああ、そうだ。そこの女が持っている、水晶玉を渡せ。それは高価なものに見える。」と言った。涼子は、「渡してしまった方が良いんじゃない?殺されるかもしれないわ。」と言った。だが、太一は、「それを渡してしまったら、日本に帰れなくなっちゃう。」と言った。だが、康平は勇敢だった。「僕たちには、杖の力がある。戦おう!」と康平が言った瞬間、凄いスピードで何者かが仁たちのはるか上から急降下してきた。聡美はあっけに取られて、「何が何だか分からない。」と言ったが、気が付くと、水晶玉は無かった。ガブリエルが「ミカエル!」と言った。そうすると、そのミカエルと呼ばれた天使は、テロリストたちの上に飛んで行って、魔法の言葉を唱えた。「ジークフリート!全てのものを凍結せよ!」と言った瞬間、辺りは氷に閉ざされた世界になった。涼子が、「すごい!テロリストたちを全部凍らせてしまった。」と言った。その通り、テロリストは凍ってしまった。ガブリエルも、動けるようになったようだった。ガブリエルが、「ミカエル、助かった。あなたのおかげで、私も動けるようになった。仁くんたちは、そこで何をしている?」と言った。仁は、あっけに取られて、「凄い。でも、水晶玉はどうなったの?」と言った。太一が、「水晶玉を返して!」と言ったが、ミカエルは、「この水晶玉は頂いていく。」と言って、そのまま、どこかへとものすごいスピードで飛んで居なくなってしまった。

一同はあっけにとられていたが、そのうち仁が「大変なことになった。」と言った。仁は、「水晶玉が無ければ、僕たちは帰ることが出来ない。」と言った。

旅の始まり

ガブリエルが、一同に説明した。「ミカエルは、神出鬼没の天使で、悪魔のような側面を持っている。一度奪ったものは、絶対に返さない。やっかいなことになった。」と言った。

涼子は、「テロリストは何だったの?」と言った。ガブリエルは、「僕がうっかり、出かけていたところで、教会を占拠して、中にあった宝石や金品を強奪されたのだ。僕が帰って来た時には、もう庄司牧師は殺されていた。僕は、動けなくなっていたが、呪文であるプロテクトを唱えて、不死身の体になっていたから、命は無事だったのだ。」と言った。

ガブリエルは、「君たちは、水晶玉を奪われてしまったが、それでは元の世界に帰れないだろう。やっかいだ。これでは、君たちはラッセルまで旅をするしかない。」と言った。太一は、「そんな。それは、困難な道のりではないのですか?」と言った。ガブリエルは、「困難だ。途中色んなやっかいな存在がいくらでも居る。だが、こうなった責任は教会の方にある。そうだ。僕も一緒にラッセルまで行こう。」と言った。聡美は、「え?ガブリエルも一緒に来てくれるの?それは心強い。」と言った。涼子は、「でも、大変な道のりなのでしょう?」と言った。ガブリエルは、「確かに大変だ。気の遠くなるような道のりがある。だが、ラッセルには、僕にも用事がある。」と言った。聡美は、「用事って何?」と言った。ガブリエルは、「ラッセルには、ラファエルと言う、指輪や水晶玉を作っている女性の天使が居る。その人に、僕も、この世界の全ての謎が解けると言う、魔法の宝を作ってほしいのだ。そういうわけで、君たちを連れて行く。一緒に来たまえ。」と言った。仁は、「でも、そんなに長い時間、家を空けるわけにはいかない。」と言った。ガブリエルは、「大丈夫だ。僕の使える魔法、タイム・スリップを使って、昔の時間へと戻ることが出来る。」と言った。

ガブリエルは、「まず、水の都、ヴァッサーへと行こう。ここには、悪い敵は居ない。皆、僕らの味方の、良い人間たちばかりだ。ここで物資を調達しよう。」と言った。太一は、「僕らは、大冒険が出来るのは嬉しいのですが、ただの高校生です。僕たちが行っても、足手まといになるだけではありませんか?」と言った。ガブリエルは、「そんなことは無い。5人の魔法使いが居るのと居ないのでは、戦いは全く違う。それに、弱いとは言っても、君たちは高校生だ。修行すれば、すぐに強くなる。ただ、覚悟はしていた方が良い。」と言った。仁は、「良く分かりました。でも、もう少し僕らの間で、話し合いをさせてくれませんか?」と言った。ガブリエルは、「そうだな。じゃあ、今日はこの教会に付属している、家で、一晩を過ごすことにしよう。」と言った。

この世界の説明

ガブリエルは、教会に付属した家に皆を連れて行った。そして、色んなことを話してくれた。ガブリエルは、「この先、水の都ヴァッサー、火の都フォイアー、黒の都シュバルツ、白の都ヴァイス、などの町がある。これらの町を順に辿って行く。ラッセルまでは、それくらいで半分の距離だ。そして、それ以降は、悪魔の国の領地になる。ここでは、沢山の障害があるし、沢山の魔物が居るが、それらに戦って勝って行かなければ、僕らは前には進めない。」と言った。それから、この世界のことも少しずつ分かってきた。ガブリエルは、「このハルミヤ国では、昔から、光の種族リヒトと、闇の種族ドゥンケルが戦っている。リヒトは我々に好意的だが、ドゥンケルは我々に敵対的だ。」と言った。

皆は、怖いとか、もし死んだらどうしようとか、そういうことを話し合った。だが、仁は、「進むべき道は、一つしかない。新しい水晶玉を手に入れて、必ず日本に帰ろう。」と言った。皆、それで納得した。色んなことを話したが、しだいに緊張感は解けていった。太一は、「僕も、ラッセルには行ってみたかった。どんなところだろうか、と心待ちにしていたよ。」と言った。ガブリエルは、「ラッセルは、素晴らしい、魔法の技術力の最高の頂点のようなところだ。」と言っていた。ガブリエルは、「だが、悪魔の国の領地の問題がある。悪魔の国では、何もかも、全てが死んで行く。全てのものを殺す、と言う目的を持った、悪魔生命、と言うものが居る。この、悪魔生命が全てを滅ぼしていく。これを倒すためには、悪に絶対に負けない強い心と、光の性質の魔法能力が必要になってくる。」と言った。

それから、ガブリエルは面白いことを言った。「このヴァッサー、フォイアー、シュバルツ、ヴァイスと言う、光の種族の町には、それぞれが違う哲学者を町のシンボルとして冠している。ヴァッサーはデカルト・スピノザ、フォイアーはロック・ヒューム、シュバルツはカント・ヘーゲル・マルクス、ヴァイスはサルトル・ハイデガー・ウィトゲンシュタイン、と言った哲学者の思想を冠している。それぞれの町が、それぞれの思想を持って、それぞれの価値観を持っている。」とガブリエルは言った。

ガブリエルは、「それじゃあ、明日は長い旅の最初の一日になる。ぐっすりと眠ること。」と言って、5人の勇者とともに一夜を過ごした。その中で、仁は「ガブリエルさん、あなたは何歳ですか?」と言ったが、ガブリエルは、「僕は、今27歳だ。」と言っていた。

ガブリエルは、「ちなみに、ヴァッサー、フォイアー、シュバルツ、ヴァイス、リヒト、ドゥンケルは、ドイツ語で水、火、黒、白、光、闇、と言う意味の言葉だ。」と言った。


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