日常
仁は、今日も高校で、何も変わらない日々を過ごしていた。
高校生活はつまらない。
授業は退屈だし、部活の剣道部では、無意味な繰り返しのくだらない日々を生きている。
恋人の涼子とは、ネットで通信し合うだけで、一週間に一度、土曜日にランチをするぐらいで、何も無いし、学校の友達は、太一と康平と言う2人の親友がいたが、他には剣道部の友人である達也、哲也、賢治が居るだけで、いつもつまらない日々を送っている。
本当につまらない。仁はなんとなく、イライラしていた。そんな時、下校の途中であるものを見つけた。ゴミと一緒に捨てられていた、2つの指輪と水晶玉のようなもの。
何故か、それが美しく思えて、仁はそれを家に持って帰った。ゴミと一緒に捨てられていたのだから、持って帰っても悪くないと思った。
家に帰って、その2つの指輪と水晶玉をきれいに布でふいた。綺麗になった指輪と水晶玉を見て、仁は満足げに思った。2つの指輪には、青い宝石のようなものがついていた。「何でこんなに高価そうなものが、捨てられていたのだろう?」と仁は不思議に思った。
仁は、この指輪と水晶玉を机にしまった。そして、恋人の涼子に、これをプレゼントしようと思いついた。何故なら、そろそろクリスマスの季節だ。こんなゴミのようなものをプレゼントするのは、悪いかもしれないと思ったが、それはその時に言えば良いと思った。
その時には、イライラも消えていた。何故か、指輪と水晶玉がイライラを無くしてくれた。
仁は、その後に、指輪と水晶玉のことを忘れてしまった。それからも、仁は来る日も、来る日も、つまらない生活を送っていた。
旅立ち
そして、クリスマス・イブの前日。明日はクリスマス・イブだ。そうだった。あの指輪の片方と水晶玉を、涼子にあげるのだった。
仁はそれを思い出して、2つの指輪と水晶玉を机から取り出した。そして、指輪を1つ、自分の指につけてみた。そうすると、恐ろしいことが起きた。
指輪の力で、なんと、自分の見ているこの世界が変わった。仁は、一瞬、何が起きたのか分からなかった。仁は異世界へと行ってしまったのだ。
仁の目線から言うと、何故か、仁はいつのまにか、海の浜辺のような場所に居た。何が起きたのか良く分からずに、仁は「え?ここはどこ?」と思うだけでは無く、「すごい。本当に綺麗なエメラルド・ブルーをした海だ。」と思って、その海岸を歩いてみることにした。自分の居る状況は分からなかったが、指輪に意味があると思った。一瞬の出来事だったが、その一瞬の間に、全てが白くなって、そして、気が付いた時には、それがエメラルド・ブルーの海に変わっていた。「この指輪は凄い。ワープが出来るのだろうか?」そういうことを思っていると、仁の目の前に1人の女の人が現れた。仁は思いかけず、聞いた。「すみません。私は、この場所がどこか知らないのですが、ここはどこでしょうか?私は、この指輪をつけると、いつのまにかこの浜辺に来ていたのです。」と言った。そして、自分の名前が仁であり、高校生であることを告げた。そうすると、女が言った。「私の名前は澄香です。ここは、アルミヤ国、と言う国の首都である、タラミヤと言う町の浜辺です。アルミヤ国の首都ですよ。ちょっと向こうに行くと、色んな人々の集まっている、店舗がたくさんあります。一緒に行きましょうか?」と澄香は言った。「アルミヤ国?それはいったいどこの国ですか?それから、この指輪は何なのでしょうか?」と仁は言った。「アルミヤ国は、東の果てにある王国です。それより、その指輪を見せて下さい。」と言った。仁は、指輪を澄香に見せた。そして、澄香は、「こういう、アンティークなものに詳しい人が、私の知り合いに居ます。その人に会ってみてもらいましょう。その人は、こういう、魔法のようなものに詳しいのです。」と言った。仁は、「魔法?この世界には、魔法と言うものがあるのですか?」と聞いた。澄香は、「あ、あなたは、魔法の無い世界から来たのですね。」と言った。仁は、「魔法の世界とは驚いた。魔法の世界と言うものが、この世界にあるのですか?」と言った。澄香は、「詳しい話は、歩きながらしましょう。来てください。知り合いの琉一と言う人に会うのです。」と言った。
仁は、歩きながら、色んなことを質問した。「魔法ってどんなものですか?色んなことが出来ますか?」と聞くと、澄香は答えた。「アルミヤ国では、あなたの国のことは、シルミヤ国、と呼ばれています。アルミヤ国には魔法はありますが、シルミヤ国には魔法はありません。アルミヤ国では、こういう、宝石や指輪や水晶玉のようなものに魔法を宿して、それを使うことがあります。あなたの国にこの魔法の指輪と水晶玉があったのは、おそらく、この世界からあなたの国へと行ったものが居るのだと思います。そして、何かのきっかけで、ゴミと一緒に放置されていたのでしょう。あ、目的地に着きました。ここが、琉一さんの居るところです。」と澄香は言った。
見ていると、この世界の色んな場所に、魔法のようなものを使って色んなことをしている人間が居るのが、見ていると多かった。仁は、「魔法の世界だ。とんでもないところに来てしまった。」と思った。そして、「自分でも魔法が使えるのだろうか?」などと思った。
琉一
美しいステンドグラスと鐘のついた教会のような場所に案内された。澄香は、「この教会で、琉一さんは牧師をしています。」と言った。チャイムを鳴らすと、琉一が出て来た。「やあ。澄香さん。この人は誰?」と琉一は言った。「シルミヤ国から来た、仁と言う人で、この指輪のことを知りたいと言っているのです。」と澄香は言った。仁は「シルミヤ国と言うそうですが、僕の国は日本と言う場所です。出来たら、この指輪が何なのかを知って、元の世界に帰りたいのです。」と言った。
琉一は「この世界は、色んな異次元の世界があって、あなたの国である日本は表の世界であり、この国であるアルミヤ国は裏の世界なのです。そして、この指輪をつけると、この裏の世界に来てしまう、そういう魔法がこの指輪にはあります。それから、この指輪と一緒に、水晶玉のようなものがありませんでしたか?」と言った。そして、「戻るためには、指輪をつけた状態で、呪文を唱えれば良いのです。バックトゥシルミヤ、と言って下さい。ただ、その前に一つ言っておくと、水晶玉を持ちながら、ゴートゥハルミヤ、と言うと、ハルミヤ国、という世界にも行けます。ハルミヤ国は、魔法の世界では無く、天界の、天使のような世界に行くことが出来ます。ハルミヤ国では、沢山の人々と交流して、遊ぶものがたくさんありますから、行ってみると良いでしょう。同じように、水晶玉を持って、バックトゥシルミヤ、と言うと、日本、あるいは、シルミヤ国に戻ることが出来ます。」と琉一は言った。仁は、「やっと分かりました。本当に教えてくださってありがとう。しばらくこのアルミヤ国を探索して良いですか」と言った。琉一は、「そうですね。澄香さん、あなたは御同行してあげられますか?」と言った。澄香は、「6時に門限がありますから、6時までなら大丈夫です。」と言った。そして、琉一は、「澄香さんに色んなところに連れて行ってもらうと良いでしょう。今はまだ3時です。3時間ほど、アルミヤ国を楽しんでみてはいかがですか?」と言った。仁は、「ありがとうございます。澄香さんと一緒なら、安心してこの世界を見ることが出来そうです。」と言った。それから、仁は澄香に、「澄香さん。御同行して下さるそうで、本当にありがとうございます。」と言った。澄香は仁に、「どういたしまして。あなたは1人でこの世界に来たのですか?」と言った。仁は、「そうだった。私のガールフレンドの涼子と言う人に、この指輪の片方をあげたいと思っていたのです。今、来たのは私一人だけです。指輪の片方をあげても問題ないでしょうか?」と言った。澄香は、「問題はありません。それどころか、この世界はあまり危険ではありませんが、一人で来るよりも、二人で来た方が楽しいと思いますよ。」と言った。
散策
仁は、その後、澄香と一緒に色んなところを回った。
仁は、「本当に美しい海ですね。日本の横浜とは大違いだ。」と言った。澄香は、「私もシルミヤ国には何度も言ったことがありますが、アルミヤ国の海は格別に美しいでしょう。」と言った。しばらく海岸を歩いて、この町のことに話が移った。仁は、「タラミヤと言う町は、どれくらいの人が住んでいるのですか?」と言った。澄香は、「この魔法の世界は、あなたの国のように、沢山の人々は住んでいません。シルミヤ国は、魔法も神の力も無い代り、人々の人口が多すぎるのです。タラミヤに住んでいる人は、たった300人です。」と言った。仁は、「300人?少ないですね。でも、小さな町なら、おかしくは無いな。」と言った。そして、仁は、「タラミヤはどんなところですか?」と言った。澄香は、「沢山の新鮮な魚が捕れる、港町です。鯛やマグロなど、沢山の新鮮な魚が捕れます。それから、大学もあります。」と言った。そして、澄香は、「あなたは、ハルミヤ国も訪れると良いでしょう。ハルミヤ国では、神や天使の楽園の中で、死者たちの霊が生きています。水晶玉で行ってごらんなさい。そうすると、ゲームソフトのような、沢山の楽しい体験が出来ます。」と言った。そして、澄香は、「アルミヤ国の人々は、25歳以上、年をとりません。」と言った。仁は驚いた。仁は、「年を取らない?驚いた。じゃあ、年齢が若いまま生きられるのですか?」と言った。澄香は、「はい。そして、300年もの間生き続けます。若くて長寿の人々が多いのです。」と言った。仁はさらに驚いた。仁は「じゃあ、あなたも、見かけよりも高齢なのですか?」と言った。澄香は、「私は、もう、200年もの間、シルミヤ国、アルミヤ国、ハルミヤ国の間のガイドをしています。確か、215歳になったところだったと思います。」と言った。仁は、「215歳!凄い。本当に凄い世界ですね。」と言った。
仁は「この世界では、他にどんな魔法のものがあるのですか?」と言った。澄香は「魔法の盾があります。どんなに弱くても、負けることの無いように、装備者を守ってくれます。それから、武器もあります。魔法の剣を持つと、あらゆる魑魅魍魎の類の生命を、一発で倒してくれます。」と言った。そして、澄香は、「タラミヤにも、あといくらか歩いて行けるところに、武器を提供してくれるところがあります。」と言った。仁は、「すみません。僕はお金をあまり持っていないのです。」と言った。澄香は、「お金ですか?お金は、このアルミヤ国にはありません。魔法の海からものを作るおかげで、何でも簡単に無料で作れるのです。そのせいで、お金のようなものはありません。」と言った。仁は、「お金も無いのですか!本当に凄い世界ですね。」と言った。
澄香は、「この世界にはお金はありません。全て無料で手に入れることが出来ます。遠慮せずに、色んなものを食べたり、飲んだりしてください。そういうものを作るのも、全部魔法の力で行えるのです。」と言った。仁は、「それは良いですね。じゃあ、あそこにある、食べ物屋さんで、何か食べて良いですか?」と言った。澄香は、「良いですが、この世界にあるものをシルミヤ国の人があまり食べすぎると、太ります。」と言った。仁は、「そうか。じゃあ、1つで良いから、何か食べてみたいです。」と言った。澄香は、「それなら、あそこにあるフルーツが良いと思います。ついて来て下さい。」と言った。
フルーツ店
仁と澄香は、一緒に生鮮食品のようなものを扱っている店に入った。店に居る太った従業員は、「やあ、澄香ちゃん。その人は誰だい?ボーイフレンドかい?」と言った。澄香さんは、「やめて下さい。いつものガイドをしているだけですよ。」と言った。太った従業員は、「やあ。ここは初めてかい?僕の名前は、大輔だ。」と言った。仁は、「初めてです。僕には、ガールフレンドは既に居るのです。」と言った。大輔は、「そうかい。じゃあ、ここにあるフルーツでも食べておくれ。代金は要らないよ。この世界には、シルミヤ国のような、お金と言うものは無くて、魔法で成り立っているのだ。僕は、ただ、この店を任されてはいるけれど、儲けたりはしていない。ボランティアの従業員なのだよ。」と言った。
そして、仁は、「あのフルーツ、美味しそう。食べても良いですか?」と言った。澄香は、「良いと思いますよ。あの、アルミヤ・オレンジを1つ下さい。」と大輔に言った。大輔は、「おう。このアルミヤ・オレンジは、今日採れたばっかりだよ。生で食べても美味しいけど、そこのミキサーで、ジュースにして飲むと格別だよ。」と言った。仁は、「ジュースにして下さい。」と言った。澄香は、「ミキサーでも出来るけれど、魔法でも出来ますよ。アルミヤ・オレンジ・メイク・ジュース!」と呪文をとなえた。そうすると、今あったオレンジは、一瞬の間にジュースに変わった。仁は、「凄い。初めて魔法を見ました。飲んでみます。わあ。これは美味しい。」と言った。
武器屋
二人は、その後に、もう少し先へと進んで、魔法の剣や盾を置いてある、武器屋のようなところへと来た。そこでは、あらゆる種類の武器と装備品が置いてあった。
店主は、「へい、いらっしゃい。」と言っただけで、何も言わず、こちらを見ている。
仁は、「わあ、強そうなものが沢山ありますね。一つ、手に取っても良いですか?」と言った。店主は、「好きにして構いませんよ。ただ、持って行く時は、現物ではなくて、コピーを持って行って下さいね。コピー・ソードとか、そういう呪文ですぐに用意出来ますからね。私の名前は哲郎と言いますがね。」と言った。
澄香は、「ここの店主は、ぶっきらぼうで、たまに怒ります。愛想の無い人だから、注意して下さい。でも、武器のことには詳しくて、何でも教えてくれます。」と言った。
哲郎は、「あなたには、この剣と盾が合っている。これをあげましょう。」と言った。
仁は、哲郎から、魔法の剣と盾を与えてもらった。仁は、哲郎のしぐさが怖いせいか、帰りたそうにしていると、哲郎の方から、「へい、もう良いですかね。じゃあ、帰って下さいますかね。」と言って、仁は澄香と一緒にその店から離れた。仁は、「魔法の世界には、ぶっきらぼうで怖い、やくざみたいな人も居るのだな。」と思った。
帰還
そうしていると、澄香は、「そろそろ、もう6時になります。そろそろお別れしないといけません。」と言った。仁は、「残念だなあ。また、来ても良いですか?それから、恋人の涼子を一緒に連れてきても良いでしょうか?」と言った。澄香は、「構いません。今度は、ガールフレンドの女の子もつれて来られると良いと思います。ただ、問題が1つあります。」と言った。仁は、「問題?何ですか?」と言った。澄香は、「この、行ったり来たりする、と言う魔法は、1か月のうちに3回しか安全には使えないのです。」と言った。仁は、「3回?それは残念だ。それなら、あと2回、涼子とともに来ようと思います。」と言った。澄香は、「それでは、また今度お会いしましょう。私も、魔法の力で自分の家に帰ります。それに、私はガイドをしているものですから、明日は3人のハルミヤ国の天使たちのガイドがあるのです。では、帰ります。私が帰ったら、あなたも、バックトゥシルミヤ、と言って、シルミヤ国に帰って下さい。それでは。バックトゥマイホーム!」と言った。そして、澄香の姿は、いつのまにかどこかに消えてしまっていた。
仁は、「本当に帰れるのだろうか?」と不安だったが、呪文を唱えた。仁は、「バックトゥシルミヤ!」と言った。そうすると、気が付いた時には、高校からの帰り道の、この指輪と水晶玉を見つけた、ゴミ捨て場のところに居た。仁は、「本当に帰れた。まだ、信じられない。」と言った。