P2Pに関する世界観です。
P2Pとは、Peer to Peerの略で、特定のサーバを必要とすることなく、個々のコンピュータであるピアとピアが直接やりとりをするネットワークのこと。
残念ながらP2Pはファイル共有ソフトと関連づけられることが多く、「違法コピーと犯罪の温床」であるとされることが多い。
P2Pによる匿名ネットワーク技術。分散したファイル共有と完全に匿名な情報発信を行う「自由なネットワーク」として有名。
実際に中国などで反体制分子の匿名な意見交換の手段として使われている。
ファイル共有技術。Winnyでは、それぞれのネットワークを完全に匿名化し、ユーザーは常に共有対象のファイルを「自らも加担して」ダウンロード・アップロードし続け、同じクラスタに居る人々同士の間で「共有」する。どの人間がどのファイルをアップロード・ダウンロードしているか分からないこと、そしてダウンロードする際に直接アップロードした人間からではなく第三者のノードを介してダウンロードされるため、「完全に匿名なファイル共有技術」とされる。
実際はWinnyは違法コピーなどの犯罪に使われることが多く、開発者の金子勇氏は著作権侵害ほう助の疑いで逮捕されている。P2Pの利用者ではなくソフトウェアの開発者が逮捕されるのは異例で、2011年無罪が確定した。金子氏は無罪が確定した後も開発に戻ることは無く、2013年に急性心筋梗塞にて死去した。
またWinnyの後継版としてShareというファイル共有技術が開発されている。
後日注記:実際のところ、Winnyは技術的に今のネットワークより進歩しているところもある。中央のサーバーが必要なく、ピアとピアが相互に結びついて、誰かが持っている複製ファイルを、どこかのノードからダウンロードする。たくさん必要とされているファイルほど多くの人に複製され、そのファイルをどんなに消そうとしても、誰かがアップロードしている間、必要とされる間は消えることがない。また、第三者のノードからダウンロードするために、最初にそのファイルを公開した人が誰かも分からない。オリジナルのデータをアップロードした人間のIPアドレスが完全に秘匿される。しかしながら、技術的にはそんなに高度な技術ではなく、単にダウンロードする人が「自らも加担して」同時にアップロードしているだけである。そのため、同じ技術は誰でも作ることができるだろう。
ビットコインは、仮想通貨技術で、P2Pのブロックチェーンと呼ばれるネットワーク技術を使っている。
ビットコインを参照のこと。
BitTorrentは、巨大ファイルのダウンロードを効率的にするP2P技術。
.torrentファイルをダウンロードすると、他のBitTorrentユーザーのネットワークを使って効率的にダウンロードすることができる。
BitTorrentクライアント。著作権のあるファイルを違法コピーすることは法律で禁止されているが、BitTorrentはそうした違法コピーの目的だけでなく、巨大なファイル(たとえばLinuxの.isoファイル)を効率的にみんなのネットワークを使ってダウンロードするために利用できる。TransmissionはUbuntuの標準のBitTorrentクライアント。
RinGOchや新月はP2Pで匿名掲示板を実現する技術。サーバーが存在しないため、メッセージを投稿した人間の身元が絶対に分からない。「完璧な匿名掲示板」であるとされる。
2023.08.20
P2P掲示板の利点は、誰がメッセージを書いたか分からないため、完全に匿名が保たれること、そしてピアとピアの通信であるため中央サーバーが必要なく、管理者に膨大な運用コストがかからないこと。
欠点は、特権的な管理者がいないため、誰かがメッセージを削除することができず、誹謗中傷や虚偽・フェイクのようなメッセージが野放しになってしまうこと。
2024.11.23
WinnyのようなP2Pソフトは、犯罪の温床であると批判されることが多いが、実際は「理想のネットワーク」の側面を持っている。
Webのようなサーバー・クライアントのネットワークでは、ひとつのサーバーに多大な負荷がかかる。すべてのデータをひとつのサーバーが持つため、大容量のストレージが必要であり、ひとつのサーバーがダウンすればデータはひとつもダウンロードすることができなくなる。サーバーを運営するのには運営コストがかかるため、掲示板の管理人などは掲示板を運営するために多額の資金がかかる。
P2Pでは、ひとつひとつのピアとピアがデータをやり取りする。それぞれがサーバーの代わりをするため、ひとつの中央集約的なサーバーが必要ない。だから、誰かひとりがダウンしても、そのひとり以外のデータはいつでもほかのピアからダウンロードできる。それぞれのピアがサーバーの代わりとなるため、ピアがたくさん増えれば増えるほどネットワークは効率的になり、ひとりの管理者は必要ない。
Winnyは「完全に匿名のネットワーク」を目指してどのピアからもデータの複製をダウンロードできるように設計されたため、違法コピーのような犯罪に使われることが多くなったが、これをP2Pの本来の「理想のネットワーク」という目的に使うこともできる。
2024.05.11