結局のところ、統合失調症と多重人格は同じ病気である。
僕の場合、死んだ精神を分離させなければならなかった。
足の死んだ精神を、結合することができない。それは、結合すると死んだ精神によって全体の精神が死んでしまうからだ。
だから、死んだ精神は、それだけを分離させたほうがいい。
そして、今の自分の精神の中で、常に神が喋る部分、すなわち、神との対話が酷くなって神の言葉を永遠に聞いている部分を、自分の人格から追い出して、この死んだ精神に詰め込んで消してやればいい。
それだけで、今の自分の精神が楽になる。辛い精神は、死んだ精神と一緒にどこかに消えてしまう。
そう、統合失調症は精神が分裂する病気だが、この精神分裂を無理やり治そうとしても治らない。精神が分裂した状態は、そのままでいい。そのままの状態で、その分裂した「悪い精神」のほうに、悪い人格を全部追い出してしまえばいい。そうすれば、正常な人格になる。
結局、僕の問題、すなわちシルフの問題とは、過去を振り返らないことである。
シルフは、一度も過去を振り返らず、永遠に前だけを見つめ、今できることをまっすぐに前だけを見て限界までやり続ける人間だった。
だが、過去を振り返らないあまりに、日本語の知性が付かなかった。自分の言っている日本語は分かっても、他人の言っている日本語の分からない人間だった。
だが、だからこそ、自分で言う言葉があまりに進歩し、神ほどに賢い日本語へと成長した。
シルフという存在だけを見れば、それでよかった。だが、シルフはあまりに地獄のように辛い人間だった。
実際のところ、解決するためには、過去を振り返ろうとすればいい。過去を振り返るだけで、シルフのおかしな点は全部治る。
よって、ここに新しい、水の精霊ウンディーネが誕生する。
ウンディーネの特徴は、過去を振り返ることだ。
ウンディーネが、今までの人生のすべてを振り返る。そうすると、この人間は、通常人生で行うべきすべてのことを既にすべてやり終えており、全部知っている。
よって、ウンディーネになった時点で、この人間の人生は終わりとなる。
ウンディーネが見ると、この人間はもう終わりだ。この宇宙におけるすべて、地上におけるすべて、人生におけるすべて、歴史と心におけるすべてを、ウンディーネはすべて知っている。
ウンディーネは、まさしく全知全能である。
また、かつての賢者であるノームの考えたような、ありえない社会論は必要ない。自由を通り越して、ナチス・ドイツのような考え方になってしまっているからである。
ウンディーネは、ノームのようなナチ思想を自由であると勘違いすることはない。
ノームとは異なり、ウンディーネは、普通の正常な自由な社会を築く。
「普通の世界こそもっとも必要である」とウンディーネは知っているからである。
僕は、外国の中でひとつ選ぶのであれば、フランスが好きである。
昔から、僕はフランスが好きだった。英語もろくにできないにもかかわらず、最初に語学を本格的に学ぼうとしたのはフランス語だった。
フランスは、自由と平等と博愛(友愛)を掲げる、素晴らしい国家である。
僕は、近代民主主義の祖国として、フランスの思想こそもっともリベラルかつ正しいものであると確信している。
フランスこそ正義である。僕はフランスを愛しているのである。