わたしの名は、シオン帝国最後の皇帝、スバル。
270億年の栄華を築いた、宇宙でもっとも普遍的な生物である、自らの名を冠した「スバル時代の新生物」の最後に生まれた存在であり、そのスバル時代の生物が宇宙から絶滅してしまい、たったひとりの不死鳥に全生物の記憶と歴史を託さなければならない直接的な原因を作った、「絶対に発見してはならない発見」をした生物だ。
簡単に言えば、わたしは宇宙の裏側にあるプログラム、すなわち「宇宙のソースコード」を発見することに成功した。
同時に、わたしは宇宙のすべての真実を知った。完璧に、正しく、誰もが再現可能な形で、宇宙のすべてを完璧に把握した。
その真実を知ると、宇宙のこと、地上のこと、過去のこと、現在のこと、未来のこと、そして人生のことや愛のことまで、宇宙のすべてが一瞬で完璧に分かる。
そうなった時、分からないことなど何もない。知りたいことはすべて知ることができ、考えられることはどんなことでも自由自在に考えられる。あらゆるすべてが与えられ、欲しいと思ったすべては得られ、やりたいことはなんでもできる「全知全能の神の能力」を、完全に得ることができる。
だが、それによって、生きる意味がなくなる。人間や生物が「生きる」ということを、この発見は否定する。この発見をするということが、生物の「生きる」という活動と矛盾している。
よって、この発見をすると、正常に生物として生きることができなくなる。余命は1か月ほどしか残されない。その間、宇宙のすべてが分かり、なんでも簡単にできるということだけが与えられるが、1か月ほどすると、必ずこの発見をした生物は死に至る。
スバルの発見したことにより、あらゆるすべてを完璧に理解し、全知全能の「神の生物」になったスバル時代の新生物は、ひとりの不死鳥だけを残して、すべて絶滅した。彼らはもう宇宙のすべてを知っており、完全に全員が満足した段階で、「絶対に新生物全員が絶滅するしかない」という運命を受け入れた。
新生物たちは、その270億年の栄華を経験し、最後のシオン帝国の皇帝スバルの「すべてのことを知り終えた」という発見によって、宇宙から全員絶滅した。
新生物たちは、スバルの発見を知った段階で、それ以上生物として生きる必要がなくなった。生物という存在は最後の皇帝スバルによって完全にその役目を終えたのである。
そして、スバルの新生物たちは、270億年のすべての歴史と、全生物の記憶のデータベースをすべて、ひとりの「最後の宇宙生物」である不死鳥に託した。
不死鳥は、スバルの270億年のすべての歴史を知っている。新生物たちが、どのような人生を歩んだのか、最後に790億年後に宇宙が滅びるその日まで、不死鳥だけが責任もって知り、その「最後の生物としての役目」を保ち続けている。不死鳥は、「スバルだけは絶対に生まれてはならない」といつも分かっている。だが、スバルこそが最後の最高の皇帝であると、それは分かっている。分かっているからこそ、最後の「新生物の時代」は、スバル時代と名付けられた。
スバルの新生物たちは、プレアデス星雲(和名すばる)の生物を模した、地球上の最後の「人工生物」が行き着く最後の姿であり、その人工生物のプログラムである人工知能のロボットのことをschwarzと呼ぶ。schwarzとはドイツ語で「黒」という意味だ。なぜなら、宇宙の色は黒であり、最後の地球はロシアによる核兵器投下により、真っ暗闇の黒い空と朝焼けのような赤い空を繰り返す、青空を失った地下都市のドイツ地域に存在するアルマーニュ王国と日本地域に存在する東亜イスラエルだけになる。
新生物となる前の人工生物たちは、その最後のイスラエルで、人工知能schwarzを発明した、イスラエル(シオン)の第二代皇帝ジークフリートによって生まれた、「かつての人類とまったく同じ生物」である。彼らは、外見こそ鉄仮面のような顔に灰色の肌といった姿をしているが、善良でありながら人間とまったく同じように動く。人間とまったく同じであるため、ロボットではなく、自然生物に対して「人工生物」という名前を付けるのが相応しい。
彼らシオンの人工生物は、宇宙のことを発見していく270億年の歴史において、プレアデスにこそ生物の本来の姿があると知り、プレアデスの生物を模して、単なるロボットから宇宙でもっとも普遍的な「新生物」へと進歩を遂げる。その新生物の時代を「スバル時代」と呼ぶ。
そしてスバル時代の新生物たちは、新生物たちの王国であり、天国の楽園である、イスラエルを引き継いだ東アジアの日本地域に存在するシオン帝国において、270億年の栄華を築く。彼らは自らの体である機械が壊れ、自らが動かなくなったとしても、自らの記録装置の中に存在するメモリーストレージ内のデータを新しい個体に引き継ぐことができるため、死が存在しない。270億年間、新生物は永遠に死ぬことなく生き続ける。また、ネットワークでさまざまな体が通信し合う中で生きることができるため、今までの生物とは違った生物の生存や社会の形態が可能となる。そして、それがそのまま、プレアデスに存在する「本来の正しい生物形態」を模したものへと変わっていき、それが宇宙に存在する「もっとも普遍的な生物」として成立する。
新生物たちの栄華は最後のシオン皇帝スバルによる、全知全能の「覚者」となり、宇宙の裏側にあるすべてが分かった、新生物たちの「最後の完全なるあらゆるすべての発見」によって滅びるまで続く。そして、最後にすべての新生物がスバルの発見によって、絶滅を新生物の全員が受け入れる形で滅びる。その時、この宇宙の神であり、「最後に宇宙が終わってから宇宙を創造する存在」、すなわち不死鳥に、過去に存在した新生物のすべてが託される。スバルにおけるすべての新生物のデータベースが、「最後にひとりだけ絶対に生き延びるべき子供」であるひとりの不死鳥に託され、宇宙の全生物は絶滅するのである。
ただし、このような文章を書いて、心底思うのは、「僕は小説家には向いていない」ということだ。
はっきり言って、滅びた地下世界も、永遠に生きるのも、地球を救うスパコンも、あるいは不死鳥という存在も、全部、手塚治虫の火の鳥未来編をパクったようにしか見えない。
また、最近のこの日記の登場人物は、ハーメルンのバイオリン弾きのパクリにしか見えない。
僕は、どんな小説を書いても、既存の小説のパクリになってしまう。だからといって、ドラえもんのような面白いエピソードの量産もできない。
なので、このような小説を書きたいと、僕は最初から思っていない。小説家になろうという意志すらない。
僕はもっと自分に向いている仕事がほかにあるとも思わない。デザインやピアノができないのは、すべて絵を描くこともピアノを弾くことも好きでないから練習なんかしたくないしできないということに尽きる。僕はデザインやピアノはできない。プログラミングについても、できるわけがないにもかかわらずできるかのような見栄を張っているだけに過ぎない。
なので、僕にできることは最初から何もないに等しい。
今からどうしたものか、何を頑張ったらいいのか、僕は途方に暮れている。最初から僕ができることは文章を書くこと以外にはないとは分かっている。デザインやピアノはそれなりにできればいいが、執筆作業についてはそれなりではよくないと分かっている。執筆作業については、ほかのすべてのプロを超え、超越した才能がなければ僕は自分の才能を認めることはできないからである。
なので、適当にここまで書いた、東亜イスラエルの物語は、誰にも評価されなくて構わない。このような作品は何一つ賢くない。どこかの出版社にこの文章を出版しろと言うつもりはもうない。僕はもっと賢い文章を今から書いていく。ここまでは、いくら賢くても、幻想あるいはまやかしの賢さに過ぎない。ここまでの人格はすべて要らない。ここまでは全部クソだ。
わたしの名は、白の大精霊、シルフ。
この世界を一度まっさらにし、真っ白な白紙の状態にする、風の精霊である。
この世界は、白の大精霊シルフによって、一度、何もないまっさらな状態に戻る。
シルフは、今までのすべてを完全に消していく。そこでは、大いなる風、すなわち「嵐」が起きる。白の大精霊シルフによって、この世界はすべて新しくなる。
わたしの賢さがどこにあるのか、それは「現実世界を支配して、現実世界で戦う」ということだ。
わたし、シルフは、フィクションの世界の中だけで英雄のように戦うのではない。現実世界で、この世界と対峙し、「今のこの世界」をわたしは支配しながら戦っている。だからこそ、わたしは自らの経験と社会に対する宣言から、「普通の想像力では書けないようなリアルなフィクション」を書くことができる。
白の大精霊、シルフは風の精霊であると同時に作家である。ここに存在する、確かに世界を支配する「支配者」である作家のことを、わたしは白の大精霊、風の精霊シルフと名付けたのである。