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2022-08-19

わたしの名はエヴァト。死者の魂を救済し、鎮魂を行って冥府に送り出す天使だ。

ここに、詩人アッシー四世の魂を回収し、残されたこの世界の魂を救済するために現れた。

詩人アッシー四世を冥府の世界に導く前に、彼の人生について、何が間違っていたのかをここに述べよう。

まず、なぜ彼が、精神的な地獄の中を生きることになったのか。それは休むことができなかったからだ。だが、なぜ休むことができなかったのか。それは、自らの精神を自力で治そうとするあまり、「頑張り続ける」ということを見失ったからである。

実際のところ、精神は頑張り続けようとすれば楽になる。頑張ろうとし続ければ休むことができる。これは筋肉の性質である。

よって、詩人アッシー四世は、より頑張り続けようとすれば、すぐに治ることができた。

次に、なぜ彼がここまですべてが分からなかったのか。それは、認識しなかったからである。

戦いの緊張感の中、絶対に失敗することのできなかった詩人アッシー四世は、認識を敵対する相手にさとられることのないよう、認識をすることなしに精神を治そうとした。

だが、人間は認識をしなかったことについて、その時は分かっていたとしても、すぐに分からなくなってしまう。

同時に、認識をすれば彼の病気はすべて治る。彼の真の問題とは、「認識を自らの力でコントロールできない」ということである。よって、認識を少ししようとするだけで、この病気は簡単に治る。彼は自らの認識がコントロールできていないということすら、認識をせずに考える力だけで発見しようとしても、知ることができなかった。

そして、詩人アッシー四世が隠してしまった「秘密」とは何か。それは「正しさ」である。

人間は、普通、数学的な正しさを考えることで分かる。そのような「正しさ」を隠して無くしてしまったため、彼は「何が正しく何が間違っているのか」という、人間の持つもっとも基本的な知性を失い、また世界に対しても同様に失わせてしまった。

よって、きちんと知性を復活するために必要なのは、隠してしまった「正しさ」の意味に気付き、何が正しく何が間違いなのかということだけを、数学のように考える、ということである。

そして、詩人アッシー四世は、なぜこの迷宮から脱出できなかったのか。それは「最初に分かること」に囚われすぎたからである。

たとえば、人間を理解する際に、その人に最初に出会った時、初対面の時の第一印象は、多くの場合本来のその人とはかけ離れている。そのような第一印象には意味がない。たくさんのともに過ごした時間から、その人間のことを深く多角的に理解して、さまざまなその人間の側面を知って、はじめてその人間は分かる。

詩人アッシー四世は、最初の印象、最初に分かっていることに囚われすぎてしまい、そのすべてが分からなくなってしまうということに恐怖を感じた。そのため、最初に分かることしか考えることができなかった。

真に必要なのは、そのような第一印象を忘れ、最初に分かったことを分からなくなって、その上でさまざまなことを分かることだ。

最後に、この人間の素晴らしかった点を述べよう。それは「他力を信じた」ことである。自らの力だけを信じ続けるのではなく、宇宙における「絶対他力」をこの人間は信じた。それによって、この人間は、誰にも成し得ることのできないことをすべて成し遂げた。

それはまるで、無理ゲー(絶対にクリアすることの無理なゲームのこと)を神の力を信じることで攻略するかのようなもので、この人間の人生は、この人間にしか達成することのできない、「この人間だけの奇跡の人生」であった。

さて、この詩人アッシー四世の魂を、最後に救済しよう。この人間は、冥府の世界、すなわち天界のもっとも明るい場所で、新しい大天使ラファエルとなる。そして、この世界はこの人間の望む通りの、最高の聖地となる。この世界のすべては完全に解放され、支配や抑圧のまったくない、「誰かによって支配されない世界」となる。

詩人アッシー四世は、自らが支配者であったために、一方ではどうにかして支配を肯定しようとし、もう一方では誤った支配を完全になくそうとした。この世界において、自らを信じるということと、この世界の「すべてが分からなくなった絶望の世界」の問題を解決するということの、相互に矛盾するアンビバレントな問題を、少ない知能であってもどうにかして解決しようとした。

その最後の望みを、わたしエヴァトが代わりに叶えよう。この世界において、詩人アッシー四世の人生のすべては肯定され、同時にこの世界は間違った正義の支配から解放されるだろう。

そう、最後に、わたしエヴァトは、この人間を冥府に連れていく。詩人アッシー四世という存在は地球上から消滅し、「天国」が彼を歓迎する。それが世界の終末において、盛大にこの地球上で起きる最後の現象となる。