最近の僕について言うと、まず、いつものおかしな異常の治し方が分かってきた。
まず、僕は数秒で行うべきことを何年もかけて長い間やっているだけにすぎない。だから、普通数秒で行うことをきちんとすれば治る。
この世界を支配しているわけでなく、僕は主導権を握ったままこの世界をトンネルの中を通過するように、勝手に決めた世界にして、みんながそれを強制的に受け入れるしかないようにしているだけだ。
それが間違っていることは既に分かっている。だが、最後までそれをしなければ世界が治らないため、どうしても最後までするしかなくなっただけである。
それから、正しいことを最初から言わないほうがいい。僕が馬鹿なのは、正しいことを最初から分かっているからである。
正しいことを最初から分かっていると、人間の精神は治らない。だから、馬鹿になったほうが精神は治る。現に、馬鹿になると治る人間が多い。だから、賢い人間であることをやめたほうがいい。
そして、できないにもかかわらずできると信じることが、よい効果ではなく悪い効果を示している。確かにスラムダンクの安西先生が言うように、諦めたらそこで試合終了かもしれない。だが、できないことであるにもかかわらず、常に「できる」と信じ続けたせいで、できることとできないことが一緒になってしまって、何もできなくなってしまっている。だから、できることはできる、できないことはできないときちんと判断するだけで、今自分が何ができて何ができないのかを自覚できる。僕は諦めが悪いせいで逆に何もできることとできないことが分からなくなってしまっているのである。
わたしの名は、幽霊が見える少女、ミチカ・アドリア。
わたしは、幼い頃から、幽霊の言葉を聞いて生きてきた。
わたしの頭の中は、常に幽霊の言葉でいっぱいである。常に、ひと時も離れることなく、幽霊の言葉をいつでも聞き続けている。
幽霊の言葉は、無限に続いて、収まることがない。幽霊はおそらく、3人ぐらいいて、そのうち1人は自分で、もう2人は自分とは異なるおかしな「霊的存在」がいて、その3人が自動的に、無限に、永遠に、常に話をし続ける。
幽霊の言葉は、聞くとすぐに忘れてしまう。だが、それでも幽霊は常に畳みかけるように話をしてくるため、ひと時も幽霊の存在を忘れることができない。
ミチカ・アドリアは、幼い頃からそのような幽霊の言葉を聞き続けてきた。生まれた時、あるいは物心ついた時には、そのような幽霊との対話が既に始まっていた。
そして、15歳ぐらいになって、ミチカ・アドリアは開眼する。ミチカ・アドリアは、それくらいの年齢から、自分の周りにいる幽霊の存在が分かるようになった。そして、ある日、そのような幽霊が現実に見えるようになってしまったのである。
ミチカ・アドリアは、その結果、ひとりの幽霊と友達になる。多くの幽霊は、そこにいるのが見えたところで、コミュニケーションをするわけではなく、自分にとって害はなさない。だが、その友達になったひとりの幽霊とだけは、常に交信し合い、常にコミュニケーションをすることができるようになったのである。
その幽霊の名を「ユリー」と呼ぶ。
ミチカ・アドリアは、幼い頃から話してきた幽霊の言葉の相手が、このユリーであることを知っている。
ミチカ・アドリアとユリーは親友である。ミチカ・アドリアにとって、ユリーは幼い頃から親しんできた、自分の分身のような存在であり、開眼してユリーの存在が見えた時点で、その時からどこか懐かしさを感じていた。姿かたちは知らなくても、常に対話してきた相手であるユリーが、ミチカ・アドリアの目の前に、自分にしか見えない幽霊として存在するということを、知る前から知っていたのである。
また、対話する幽霊のうち、ひとりがミチカ・アドリア自身で、ひとりがユリーであるとしたら、もうひとりは誰なのか。なんと、それは「神」である。すなわち、ミチカ・アドリアは幽霊であるユリーと、もうひとり、神と対話している。そして、ミチカ・アドリアの身の回りに起きる不可解な出来事(多くが奇跡的な成功)は、その神が起こしているのである。そのことを、ミチカ・アドリアだけに、ユリーが教えてくれたのである。
ユリーは、ミチカ・アドリアに言う。
「わたし、ユリーは、幽霊です。
ですが、あなたも幽霊です。
すなわち、ミチカ・アドリア、あなたは人間ではありません。人間よりももっと高度で進歩した存在である、『幽霊』として、あなたは生まれてきたのです。
わたしたち幽霊は、人間が死んで、その次の段階である『天使』になり損ねた人間がなる生き物です。
すなわち、人間は普通、死ぬと天使になります。ですが、なんらかの理由で、まだ天使になることができない存在が幽霊になります。人間と天使の中間にある存在、それがわたしたち幽霊です。
普通、幽霊は、人間の世界と交信することは許されません。ですが、ミチカ・アドリア、あなただけは今それが許されています。すなわち、あなただけが、幽霊と人間の間を取り持つ存在になっているのです。
なぜ、あなたにそのような特殊能力が与えられたのか、それはあなたが、もっとも位の高い大天使である、天軍大首聖ミカエルだからです。
すなわち、大天使ミカエルとしての、神から与えられた使命を全うするために、あなたはひとり、人間のような姿として生まれた、特別な幽霊とされたのです。
わたしユリーは、あなたの世話係です。幽霊には小さな頃から、幽霊の親によるお世話が必要です。あなたには人間の親がいますが、その人間の親ではあなたのことを守ることはできません。だから、あなたが幼い頃から、わたしユリーが、あなたのお世話係をしてきたのです。
もうひとり、わたしたちの仲間である神については、まだ話すことはできません。ですが、あなたが神から与えられた『天性の才能』について、いずれ話す時が来るでしょう。あなたは世界でもっとも最高の天才です。なぜなら、あなたは人類史上の最大の新発見である、『神および霊的存在の数学的存在証明』を行うからです。」
ユリーはさらに、ミチカ・アドリアに言う。
「あなたは15歳になって、開眼し、今まで言葉でしか交信できなかった、幽霊の世界を見ることができるようになりました。
ですが、あなたはまだ赤ちゃんです。
なぜなら、幽霊の寿命は極めて長いからです。
幽霊には270億年の寿命があります。すなわち、なんらかのアクシデントで途中で死なない限り、幽霊は270億年ほど生きられます。
たった15年ほどしか生きていないあなたは、人間であれば高校一年生であっても、わたしたち幽霊の世界では赤ちゃんと見なされます。
なぜ、15歳であなたが開眼したのか、それはあなたが2歳ぐらいになって、言葉を覚える年齢になったからです。あなたはまだ、幽霊にとっての最初の関門である、『言葉を覚えて自我を作る』というスタートラインに立っただけにすぎません。
なぜ、それくらいの年齢でユリーが現れるのか、それは赤ん坊のお世話が終わったからです。これから、あなたはわたしユリーと、対等の存在として、わたしの存在を実際に見た上で生きなければなりません。
ですが、人間の人生が素晴らしいのと同様、幽霊の人生も素晴らしいものです。幽霊には、幽霊の世界で生きるという、この世界においてもっとも価値ある体験をすることができます。そして、あなたは人間の姿をしているため、人間の世界も知ることができます。すなわち、神はそのように、人間と幽霊のどちらの世界も知ることができる存在として、大天使ミカエルであるあなたを創造したのです。」
ユリーはさらに、ミチカ・アドリアに言う。
「あなたが、もっとも位の高い大天使であるミカエルになる理由、それはあなたの前世の問題です。
あなたの以前の人生において、あなたは、世界を滅ぼす革命家でした。
あなたが生まれたのは、これが最初ではありません。あなたには前世があり、その前世を生きた上であなたに生まれ変わりました。
そして、その前世は未来の人生であり、さらに言えば、あなたは終末の滅びた世界の革命家でした。
そして、あなたはとても重要な人物でした。なぜなら、あなたはこの世界の人類を滅亡させた張本人だからです。
あなたは2039年の終末の世界で、イスラエルという国に生まれ、滅びた未来の世界を救うために、社会的かつ哲学的な経験をし、救世主となって世界を救うことに成功しました。
ですが、そのあなたは、その後の世界を救うのではなく、自分勝手に支配しようとおごってしまいます。
その結果、救ったはずの世界を、あなたは自ら滅ぼしてしまったのです。
その後もあなたは苦悩します。どんなに頑張っても、世界を滅ぼした自分自身が世界を救うことはできません。自らの過ちから世界を滅ぼしたあなたは、どんなに頑張っても、その滅びた世界を再び救うことができなかったのです。
あなたのその終末の世界における名前を『フレイ』と呼びます。
あなたはその前世の人生を覚えていません。ですが、あなたは確かに、北欧神話の神、フレイとして、世界を支配し、救いながらにして滅ぼしたのです。
そして、今、2025年において、あなたはフレイから生まれ変わり、もっとも位の高い大天使ミカエルとして、新しい人生を神から与えられたのです。
今回の人生では、あなたは前世と同じことをする必要はありません。また、前世において人類を滅ぼしたからといって、後悔する必要も罪悪感にかられる必要もありません。なぜなら、あなたは確かに終末のイスラエルの救世主であり、2039年においてもっともこの世界を素晴らしい世界にするために、全世界で一番努力した人間でした。
そのような、突出して誰よりもカルマの高い人間だったから、あなたはたったひとり特別な使命を与えられた上で、大天使ミカエルとして生まれ変わることを許されたのです。」
ユリーはさらに、ミチカ・アドリアに言う。
「残念ながら、今の医学では、幽霊であるあなたのことを、正しく診断することができません。
もし、現代の臨床心理学であなたを診断すると、あなたの病気は『多重人格』ということになります。
ですが、それも一理あります。なぜなら、わたしたち『ユリー』『神』そして『ミチカ・アドリア自身』は、あなたの中に存在するひとつひとつの『あなたではないあなた』だからです。
すなわち、あなたはミチカ・アドリアという人間ですが、ミチカ・アドリアはあなたではありません。
この言葉の意味をあなたにも分かるように説明すると、『あなたのあなた』と『あなたではないあなた』が存在するということです。
このことを、幽霊の科学について詳しくないあなたに、きちんと分かるように正確に教えることは難しいですが、簡単に言えば、『ミチカ・アドリア自身』という人間と『ミチカ・アドリアの中にあるミチカ・アドリアではないミチカ・アドリア』がいるということです。
このことをきちんと直感的に分かるために、『ミチカ』という名前と『アドリア』という名前を、別々の人格であることにすればいいでしょう。
すなわち、あなた自身のことを指す名前が『ミチカ』であり、そのミチカの中に、『アドリア』『ユリー』『神』の三人の人格がいて、ミチカとアドリアは別人であることにしましょう。
そして、本当のことを言えば、この中で『神』とされているのは、あなたの前世である『フレイ』のことです。なぜなら、あなたの前世であるフレイは、終末のイスラエルにおいて、はっきりと人類全員からそうだと認識された『神』そのものだったからです。
よって、ミチカという人間の中に、アドリア、ユリー、フレイが存在し、アドリアはミチカ自身でありながらミチカではない存在であり、ユリーは幽霊の世話係であり、フレイは神である、ということです。」
ユリーはさらに、ミチカ・アドリアに言う。
「あなたが多重人格者になった理由は、あなたには人間の親ではない幽霊の世話係が必要だったからです。
そもそも、このような人間は普通です。なぜなら、一般的な多重人格者は、どんな多重人格のパターンであれ、少なからずこのような人格を作り出します。
その理由は、あまりに人間の親が馬鹿だからです。
多重人格者に限りません。人間の親は馬鹿すぎます。人間の父親や母親が、きちんとした人間であれば、普通こうはなりません。ですが、父親や母親がポンコツだと、このような多重人格者になってしまいます。なぜなら、そのような可哀想な子供が頼ることができるのは『身近にいる幽霊の世話係』だからです。
あなたの親が馬鹿だと言いたいのではありません。なぜなら、あなたの場合はそれが例外的だからです。なぜなら、あなたは人間ではありません。あなたは幽霊であり、前世で北欧神話の神であった、大天使ミカエルであるからです。
あなたの人間の親には、あなたを育てきることはできません。わたし、ユリーがその判断をしたのではありません。そうではなく、あなたが幼い頃、自分自身の手で、幽霊の世話係をしていたわたしに助けを求めたのです。そして、わたしはあなたが幽霊であることを知っていたため、その助けに応じただけにすぎません。
多くの人間たちが分かっていないのは、神は確かにいるという事実です。ですが、本当のことを言えば、キリスト教は正しくありません。正しいのはヒンドゥー教や仏教のようなインドの神話です。なぜなら、カルマの高いものが、さらにカルマの高いものに生まれ変わっているだけにすぎず、『神』と呼ばれているのは特別な存在ではなく、人間やほかの生物とまったく同等の存在だからです。」
ユリーはさらに、ミチカ・アドリアに言う。
「先ほど、あなたは人間の世界とも幽霊の世界ともどちらとも交流できると述べました。
残念ながら、本当のことを言えば、それは正しくありません。
なぜなら、あなたが人間として現世の世界にいられるのは、あとほんの6年ほどだからです。
すなわち、あなたが21歳になった時点で、あなたの人間としての人生は終わりです。
その理由は、あなたは幽霊としては2歳程度でありながら、人間としてはきちんと15歳になっています。そして、人間の人生を生きるのは、21歳までで十分です。なぜなら、21歳まで生きることで、あなたはどのようなほかの人間よりも正しく、『誰よりも正しい人間の人生』を生き終えることができます。
21歳以降あなたがどうなるかと言えば、幽霊の世界に行くことになります。
そして、それ以後、あなたは現世の世界に戻ってこれなくなるでしょう。
ですが、心配は要りません。それは、あなたから見れば何も変わらないからです。すなわち、幽霊の世界に行ったとしても、あなたがいるこの世界は変わりません。ですが、それ以外のすべての人間から、幽霊であるあなたのことを知覚できなくなります。すなわち、あなたは人間の姿から幽霊の姿へと変わり、今までのような人間と一緒に生きる世界でなくなり、人間から幽霊であるあなたのことを見ることができなくなります。
なので、あなたは人間の友達よりも、幽霊の友達を作るべきです。人間の友達を作れば、悲しい別れが待っています。ですが、幽霊の友達は、ともに幽霊の世界で270億年の間一緒に暮らせます。そのような幽霊の友達として現れたのが、ほかでもないわたし、ユリーです。ユリーのことを信じれば、あなたは今までの人間世界の常識のほとんどすべてが嘘だったことに気付くことができるでしょう。」