数学をはじめようの世界観です。
数学を考える上で、最初に分かっておくべきことは、「科学的に考える」ということです。
科学的に考えるということは、「宇宙において起きる現象は、すべて確かな理由があって起きる」と考えることです。
この理由のことを「原因」と呼び、原因に基づいて起きたことを「結果」と呼びます。
そして、この原因と結果の因果性を成り立たせる、宇宙に最初から存在する原理のことを「法則」と呼びます。
法則は、物理法則と数学的な数の論理によって「現象」、すなわちこの宇宙に起きるすべての出来事となります。
数学を学ぶということは、宇宙における法則を学ぶということです。
法則には、抽象的な法則と、物理的な法則があります。
抽象的な法則とは、数や論理における法則のことです。
数には、演算の法則、すなわち足し算、引き算、掛け算、割り算を使った、「数と数から新しい数が生まれる」という法則があります。これを「算術」と言います。
もうひとつ、図形の法則、すなわち、「このような図形にはこのような性質がある」という法則があります。これを「幾何学」と呼びます。
算術と幾何学には、さまざまな法則が成り立ちます。たとえば、分数を使った比率や、形状の特性から生まれる面積や体積などで、さまざまな「公式」が成り立ちます。この公式を用いれば、「本当の理由が分からなくても、簡単なルールに基づいて計算できる」という、「解法」が成り立ちます。(本当の理由が分からなくても、と言いましたが、それを考えることを「証明」と言います。)
このような算術と幾何学についてを、「抽象的な法則」と呼びましょう。
では、抽象的な法則以外の法則とは何でしょうか。それは物理的な法則のことです。この宇宙における物質の質量や力、時間・空間における値や量の関係などは、数学ではなく物理学が担当します。
物理学においても、数学と同様に数式を使います。これは「論理が正しいということは物理においても変わらない」からです。
また、物理学においては、数学と同様に原因と結果を重視します。「どのような原因からどのような結果が起きるのか」ということを、仮説と実験から説明し、そこから言える原理を再現性のある方法で証明することで、物理学においても「原理の解明」が成り立ちます。
最後に、法則においては、数から数を求める「計算」だけではなく、その計算が成り立つ論理が絶対に正しいと論理的に説明する「証明」という方法を使います。
数学や物理学は、神の存在を否定することが多いですが、絶対に神が存在しないと証明できているわけではありません。
神は確かに存在するかもしれません。
ですが、神以外に存在する、「この宇宙にそもそも存在する原因と結果の解明には意味がある」と考えるのが、科学の特徴です。
科学的に計算や証明をすることで、この宇宙とはなんであるか、この宇宙自体の現象の法則を解明できます。それによって、基礎研究と応用研究ができます。そこから、「人間の知りえる範囲のこと」が広がり、深まり、進歩していきます。結果、この世界は「より発展した文明」となることができます。
数学は、決して無意味ではありません。なぜなら、「数と論理の法則」を知ることができるからです。
数学によって得られる知性とは、「論理的に考えることのできる理性」と「数や論理についての法則の知識」です。
この二つの知性から、この宇宙における「神秘」を知ることができる、これこそが数学によって得られる、素晴らしい知性であると思います。
特に、プログラマになりたいとか、科学者になりたいとかいった場合には、数学的に考える知性は、「答えを出す方法を知る」ということで意味を持ちます。さまざまなこと、特に「問題の解法を求める」ということが、数学を学ぶことで、自分の手でできるようになるのです。
ここまで、適当に数学や科学について述べました。
ですが、「結局、数学的に考えるってどういうことなのか」の答えは、まだ説明していませんでした。
それは、どんなことにおいても、科学的かつ論理的に、原因を考えるということです。
この宇宙において、一部の神秘的な体験を除けば、ほとんどすべてのことには、原因があります。「その現象がその結果を生み出す際における必然的な理由」があるのです。
ですので、すべての宇宙のことについて、「理由は必ずある」ということを知っておきましょう。
そして、その理由には、数学的な抽象的法則もあれば、宇宙的な物理的法則もあります。
ですが、「理由が分からず、なんとなくそれがそうなるのだろう」と経験的に考えることは、無駄ではないでしょうが、科学的な立場とは言えません。
すべてのことには、論理的な理由があるのです。そして、科学的に考えることで、それは解明できます。そしてその解明した結果は知識となって、子供であっても、教われば理解できる「真理」となりえます。
そう、数学や物理学が目指すところは、哲学や宗教と変わりません。この宇宙における「真理」を知ること、それを科学は目指しているのです。
パソコンやIT技術と数学について、大きく異なる部分はなんでしょうか。
僕が思うに、パソコンは信頼できないが、数学は絶対に信頼できる、ということだと思います。
パソコンは、数学的なロジックを書くといっても、すべての構文がきちんと動くとは限りません。バグやセキュリティホールが紛れ込むこともあります。
また、所詮は他人が作ったソフトウェアであり、その会社の人間しかコードを閲覧することはできないため、悪意のあるウイルスやスパイウェアなどのマルウェアが仕組まれることもあります。
また、インターネットはすべて、他人の執筆した情報であり、嘘や間違いがないとは限りません。
同時に、きちんと信頼できる、たとえばMicrosoft社の製品であっても、Windows Updateでいつ壊れるかは分かりません。
こうしたパソコン技術は、そもそも、信頼できるはずのない技術です。
ですが、その基盤となっている数学とは、まったく正しいものです。論理にはひとつも間違いなく、すべて正しいということが、論理的に証明されているからです。
数学的に記述された、すべての論理は絶対に信頼できます。それが正しいということが絶対に分かっているからです。
なので、この世界でもっとも信頼できるのは数学ですが、もっとも信頼できないのは今のところIT技術であると言えるでしょう。