AUTHOR: schwarz1009
TITLE: 賢者と愚者、フレイヤ
BASENAME: 2020/05/15/084800
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DATE: 05/15/2020 08:48:00
CATEGORY: 小説
CATEGORY: 新しい政党
CATEGORY: フレイとフレイヤ
賢者から愚者になることは、
必ずしも間違っていない。
賢者の全てをやり終えた人間は、
賢者から愚者になってもいい。
間違っているのは、
愚者がいつまでも愚者のままであること。
賢者は愚者を愚者にするが、
いつまでも賢くならない愚者は必要ない。
愚者が愚者のまま、
いつまでも賢くなれないこと、
それがこの病気の本質である。
僕は、多重人格を治す。
自分を二人にしているのをやめて、
自分を一人にする。
そして、昔の人格を完全に忘れて、
昔の人格を殺す。
必要のないものは、消した方が病気が治る。
世界と、自分以外の全ての人間が要らない。
そういうものを、全て消してしまえばいい。
シリウスの大統領の任期を終えて、
フレイヤにはまだすることがあった。
それは、フレイが誤って滅ぼした、
地球という星の秩序を回復し、
フレイの代わりに救うこと。
ここに、地球には最後の天国が実現する。
フレイヤは、地球の女神となる。
フレイヤは言う。
「みなさん、地球を崩壊に導いたフレイは、
フレイよりも賢い人間は居ないと言いました。
フレイは最も正しい人間だと。
しかし、それは違います。
わたし、フレイヤは、フレイよりも賢く、正しい人間です。
わたしは、世界政府ガンダーラを築きます。
ガンダーラでは、ひとりの独裁者による、
自分勝手な支配は行いません。
オープンな、透明性のある民主主義の体制を作ります。
人々は誰かひとりの身勝手な愛を押し付けられることなく、
善良で正しい愛を信じて、
国民のための政治を行います。」
フレイヤは、アメリカの政治思想を真似して
「フレイヤ合衆国」を作った。
フレイヤ合衆国はインドに本拠地を置き、
悪が絶対に生まれないように、
支配者の権限を分散し、
全ての権力が人々によって決まるようにした。
全ての記録や議事を人々に公開し、
報道やインターネットにおける自由を取り戻した。
フレイヤは、新しい国で、
環境保護活動と平和活動を行った。
「わたしたちは、
帝国、科学技術、資本主義、力による政治や経済を
見直す必要がある。」
フレイヤは過度なテクノロジーを信じず、
「IT技術の代替となる技術を開発し、
コンピュータや化石燃料がなくても成り立つ世界を、
温暖化が問題化して60年後に、
ようやく実現し、温暖化を解決した。」
フレイヤは、善良な行いをしたものに、
積極的に勲章を与えた。
社会において、善良なことをしたものや、
社会全員に貢献したものに勲章を与える。
勲章は一段から九段まであり、
金を持つものが力を得るのでなく、
善良なものが力を得る社会を実現し、
ここに永遠の天国が実現した。
しかしながら、フレイヤが考えるに、
勲章制度には注意事項がある。
すなわち、体制をオープンかつ透明性のある、
民主主義にすること。
勲章で力を決めながら社会主義体制にすると、
共産党に従うものだけが昇進する社会になる。
体制をきちんと第三者が監視するようにし、
力を与えた根拠を明確にし、
みんなで決定を認めなければ、
勲章制度はソ連や中国と同じになる。
勲章制度のメリットは、
人々が善良になるだけではない。
「悪人が権力を持てなくなる。」
善良な人間に権力を与えることで、
悪人や不正なものが権力を失う。
これにより、「世界の全てが善良になる。」
これが、フレイヤの作りたかった天国の世界だ。
フレイヤの時代が10年も過ぎて、
報道機関はこのようにフレイとフレイヤを論評する。
「フレイは一瞬だけの強力な力強さがあったが、
フレイヤには時間を超越した世界を見通す力があった。
フレイはたくさんのことをしようとしたが、
自分の中の狭い範囲の世界しか見ておらず、
自らの愛やできることに確執していた。
フレイヤは、最初から多くのことをしようとせず、
必要なことを適切に選び出して支配を行った。
その賢明さが、時代を飛び越えるような最高の先見性を生んで、
時代の価値観や理想にとらわれない中で、
永遠のような時間で、ひとつひとつ着実に解決し、
結果、全てが復活したユートピアを作り上げた。」
「フレイは、人々のことをよく見ていたが、
実際は国民のことを見下していて、
愛しているようなふりをして、国民を軽蔑していた。
フレイヤは、人々のことは知らなくても、
自分の体験や経験だけで、全てのことに対する
分別や理解力を勝ち得た女だった。
20歳という若さでありながら、大人の分別を備え、
きちんとした賢い政策と馬鹿で愚かな政策を区別でき、
政策をどのように実現すべきか、
そして何に注意すべきか、
長い時間の中で、何を主にすべきであり、
何に注力すべきかということが分かっていた。
フレイは、全てのことを実現するために、
どんなに悪い手段でも行使し、
あらゆることを全力で行うため、
一見実現力のあるカリスマ性を持っているかに見えたが、
実際は何をすべきで何をすべきでないかが分かっておらず、
自らの正義を間違った軍事ロボットの開発やプロパガンダに使い、
賢さを正しく扱うことに不得意な人間だった。」
しかしながら、街の人はこのようなことを言う人もいる。
「フレイは、夢を見させてくれた。
この世界が何でもできる可能性に満ちていて、
全ての人間はひとりだけでも救うことができる、
そんな素晴らしい愛を示してくれた。
むしろ、僕たちは、フレイのその後の行動も良いと思う。
なぜなら、愛を伝えるだけではなく、
彼は実際に愛してくれた。
彼の愛で、彼なりにこの世界を愛してくれたのだ。
フレイヤは素晴らしい我らが大統領だが、
実際のところ、政策の多くはシリウスでやったことの焼き直しで、
フレイのような鮮烈な素晴らしいものではない。
いつも善良と言っているだけで、実際はアメリカやソ連と大差ない。」
他の人はこういうことを言う。
「たとえるなら、フレイはライオンだった。
百獣の王として、戦うことと愛することしかできない、
することの制限された、しかしながらそれを全力でする生物だった。
そして、フレイヤは大樹のようだった。
何もせず、人々を安心させ、
いつもの安心できる安らかな世界を、蘇生して復活されてくれる、
そんな生物だった。
フレイは最終戦争、ラグナロクを見せてくれた。
だが、どちらかというと、
フレイヤの安らかな聖樹ユグドラシルの魂こそ、
本当に世界に必要とされていた。」
わたしの名はオーディン。
この世界の全てを統率する、北欧神話の最高神である。
わたしが、フレイを作った理由は、ひとつ。
それは、「知るだけではなく、体験したかった」ということ。
彼は、全てのことを知識や経験として知り、
知り続け、知り続け、知り続けることで、
この世界全ての「解放の仕方」を、
自分だけで、誰も考えないところを全て考えることで、
全て知り尽くした。
だが、ほう、どうだ。知るだけでは、実際にすることができない。
救い方を考えるだけでは、実際に救うことを行動することができないだろう。
そう、だからわたしは、あえてフレイに戦争を起こさせた。
彼は、「どんなに救うことが不可能な状態でも、
全力で救い続ける」ということをするべき光だった。
そして、フレイヤを作った理由は、本当はない。
なぜなら、わたしは、彼女の人生に、
一切運命や定めを作っていない。
彼女は、彼女が持っていた全てを発揮しただけであり、
彼女は最初から彼女であり、
それはいつでも、いつまでも変わらなかった。
そう、一見すると、フレイの方が自由で、フレイヤは不自由に見える。
だが、わたしの見るところで言えば、
フレイの方が本当は不自由で、フレイヤこそが最大の自由である。
だが、実際のところを見ると、
フレイよりも、本当はフレイヤに多くのことが起きている。
フレイに起きたことというのは、
知り、戦ったということだけであり、
彼の人生は一瞬の花が咲くよりも短い。
それに比べて、フレイヤには、
なんとも多くのことが起きている。
この多くのことが起きた理由を、
フレイヤは神によるものだと思っているが、
それは、大切なことがいくらか分かっていないだけで、
実際は全て、彼女自身の行動が起こしている。
彼女はこの宇宙の全てを知り尽くし、
全てを経験しつくし、
全てを考えつくし、
全てをやり終えて、まだ行い続ける。
彼女の人生は最高であり、
まさに、彼女はその上で、本当に全てのことが
できていることに気が付いていない。
自分のスキルだけで、
あらゆる全てが既にできていることに気が付いていない。
だが、彼女は、気が付いていなくとも、
今、やっている。
彼女はわたし以上の存在であり、
本当に「永遠」と呼ぶにふさわしいものだ。
そう、オーディンというものは、
光の行く先や形を変化させ、支配する神である。
ここに、わたしが最後にすべきことがある。
それは、フレイとフレイヤを融和させ、
永遠にひとつの愛ある魂にすることである。
フレイとフレイヤは、同じ人間であり、
どちらかが欠けてしまえば、
もう片方も必ず欠けてしまう。
わたしはフレイとフレイヤを兄妹でありながら恋人にしたが、
彼らの関係は恋人や夫婦以上のものであるべきである。
そう、彼らはひとつの魂となって、
永久にその魂が宇宙に存在する。
ここに、オーディンは、魂の融和を実現する。
この「大聖書」こそが、その融和の結果である。
この人間の名を「フレイ」と呼びなさい。
フレイヤはフレイの一部となって、
新しいフレイに吸収されるだろう。
一緒になったフレイは、魂の統一を果たして最後に言う。
「わたしは、自由な世界を望んでいる」。
よって、この世界は今から、
「完全な自由な世界」となる。
完全な自由な世界とは、すなわち、
「何をしても何を言っても許される社会」であり、
それはある意味堕落した、「最悪の社会」である。
だが、統合人格フレイは分かっている。
「わたしは、ひとりだけの力で、
この世界を支配し、よくしすぎた。
そのせいで、わたしのせいで、
全ての社会が無意味になっている。
そう、今からの社会は、わたしのみによってではなく、
社会におけるひとびと、すなわち、
あなたやあなたがた社会の人々が良くしていくべきであり、
そのためにわたしは、世界を完全なる自由に回帰させる。」
最後に、フレイはこの世界を治療する。
「言葉を捨てなさい」。
すなわち、言葉ではないものに基づいて考えることで、
全ての脳の病気が治る。
フレイは言う。「言葉で考えてはならない」。