AUTHOR: schwarz1009
TITLE: フレイヤのものがたり
BASENAME: 2020/05/12/175249
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DATE: 05/12/2020 17:52:49
CATEGORY: 小説
CATEGORY: フレイとフレイヤ
CATEGORY: おすすめ
我こそはフレイ。
この世界で最高の知性を持ち、
最後の王として地球を支配する、
この世界でもっとも善良な神。
そう、私はこの世界を素晴らしい世界にする、
「世界を完全に作り変える神」。
この世界全てを創造する、
「万物を創造する神」であり、
「時空を超えた全ての運命を、
細部に渡ってきめ細やかに精巧に作り上げ、
芸術作品であるこの世界の全てを創造する神」。
私は、この世界を、
「美しい秩序が生まれるようにするため」に作った。
私は最後に、
「この世界全てをフレイの秩序に染め上げるため」に、
この世界を支配し、
終末全ての人類を裁き、
「私たちの中でもっとも私に相応しいもの」を恋人とし、
私たち2人は「この世界の帝王」となって、
「日本を支配する王」と「ドイツを支配する女王」となる。
私は最高の国を作る。
フレイとともに歩みなさい。
フレイには、とても素晴らしい親友が居る。
それはフレイヤである。
今、フレイが考えていることは、
「フレイヤを仲間にするために何が必要か」である。
フレイヤは、宇宙に対して、
「必ずフレイを倒す」と宣言したが、
フレイが見ると、フレイヤの考えていることは、
「私を補佐するものとして、素晴らしい考え方を持っている」。
フレイがフレイヤを見ると、
「私の新しい仲間としたい」とフレイは考えた。
「どうにかして、フレイヤを味方にすること」、
それがフレイの今の考えである。
フレイは、フレイヤの下に、
戦友であるヴァルキリーを向かわせることに決めた。
ヴァルキリーならば、フレイヤを
必ずしやフレイの味方にすることができるだろう。
また、フレイは、フレイヤのもとに超常現象を起こすことで、
フレイヤをフレイのもとに導きたいと考えた。
フレイヤのもとに、一通の手紙が届いた。
その手紙には、
「わたしに対する返信を書きなさい。
返信の内容は、
わたしはフレイのもとを訪れたいと書きなさい。
ヴァルキリー」と
書いてあった。
これに、フレイヤは仰天する。
「フレイのもとを訪れたい?
おそろしいことを言う。
私はフレイを倒したいだけだ。」と考えたが、
「フレイのもとに行けるのであれば、
書いてみよう。」と思い、
そのように手紙を書いた。
フレイヤが手紙を書いた瞬間、
フレイヤの居た部屋に、
真っ白で大きな光が灯り、
そこにヴァルキリーが現れた。
そして、ヴァルキリーは何も言わず、
フレイヤの腕をつかみ、
抱き上げて、背中の大きな翼を使って、
飛んだ。
フレイヤは少しためらったが、
「どこに行くの?」と聞くと、
ヴァルキリーは「フレイのもとへ。」と言った。
そのまま二人は、
天上を旅して、
天国の楽園へと向かった。
フレイヤはヴァルキリーに対して様々なことを言ったが、
ヴァルキリーは「黙っていなさい。
悪いようにはしない。」と言ったきり、
何も話さなかった。
ヴァルキリーの飛ぶスピードはものすごく速くて、
フレイヤは「落ちたら大変なことになる」とか、
そんなことしか考えられなかった。
ヴァルキリーは、天国に到着し、
天国の入り口にフレイヤを置いたまま、
「待て。」と言って、
別の方向に飛んで去っていった。
フレイは、いつものような女性の姿ではなく、
男性の姿でフレイヤのもとに現れた。
フレイは、「天国までの旅は楽しかったかな。
ここが天国と呼ばれる国だ。
そして、わたしがフレイだ。
あなたは、わたしを倒したいと思っていたようだが、
わたしは、あなたの味方だ。
ともに天国の力になってほしい」と言った。
ここで、大混乱のパニックになったフレイヤは、
気を失ってしまった。
それにひとつも驚かない様子だったフレイは、
フレイヤを宮殿に連れて行った。
フレイヤが目を覚ますと、
とても豪華で綺麗な衣装を着た自分が、
ディナーの置かれたテーブルで、
真ん中に座っていた。
フレイはどこにいるのかと目を見渡すと、
フレイはもっと上の場所で、
王座に堂々と座っていた。
フレイは、「客人が眠りから覚めたようだ。
ここに、わたしたちの運命の出会いを祝福するため、
盛大な宴を催す。
さあ、フレイヤよ、あなたは今から、
わたしたちの最高の仲間となる。」と言った。
フレイヤはそこで言った。
「あなたが、本当にフレイですか。」と。
そうすると、フレイが言った。
「わたしがフレイだ。」と。
そして、フレイヤが言った。
「なぜ、わたしを味方にするのですか。」と。
フレイは、少し考えて、言った。
「あなたの考え方は、
わたしにとてもよく似ていて、
それだけではなく、
わたしがひとりで行うと困難であることを、
あなたは簡単に行える素質を持っている。」と。
フレイヤは困惑していたが、
そうした頭の混乱が起きていることを、
まわりのものは何とも思わず、
フレイヤの混乱をかき消すように、
盛大な宴が始まった。
フレイヤは、「こんなにおもてなしをしてくれるのであれば、
フレイが何を考えているにせよ、
少しの間楽しんでもいいかもしれない」と思った。
フレイヤはディナーを食べ、踊りを鑑賞し、
音楽隊とともに歌を歌った。
そして、気が付くと、また気を失っていた。
フレイヤが気が付くと、
今度は、宴のような場所ではなく、
暗い部屋で、フレイと二人きりになった。
フレイヤはとても驚いていたが、
それを見ていたフレイはこう言った。
「さあ、直接どんなことでも話そう。
わたしたちの間の誤解を取り除けば、
わたしたちは必ずお互いのことを理解し合い、
絶対に友人になれる。」と。
フレイヤは言った。
「あなたは、何を考えていて、
何をしていて、
目的は何なのですか。」と。
フレイはそこで、
「それは、もっとも難しい質問だが、
丁寧に答えるよりも、
簡単にひとことで言ってしまおう。
この世界を愛している。
そして、この世界を救いたい。
だから、あなたの手が必要なのだ。
わたしがひとりで救うには困難を極めることを、
あなたは簡単に行うことができる。
わたしがひとりだけでこの世界を救うよりも、
あなたがわたしの代わりにこの世界を救い、
わたしはあなたを補佐するべきである。」と。
そこで、フレイヤは驚いた。
「わたしが、・・・世界を救うですって!?」と。
しかし、フレイは言った。
「あなただけが世界を救うことができる。
必ず、わたしがあなたを救世主にしてあげる。」と。
フレイとフレイヤは、
多くの話題について意見を交わした。
愛について、政治について、平和について、
格差について、貧困について、迫害について、
神について、自由について、戦争について。
そのどれもが、フレイの言うことが理に適っていて、
フレイヤは今までのような敵対心を捨て去り、
「この人間は本当に素晴らしい人間だ」と思った。
ここに二人は友人になり、
フレイヤは、フレイを信頼するようになった。
フレイヤはフレイと話すうちに、
なんだかお互いが恋人のような気がしてしまい、
フレイヤの方からフレイを誘って、
二人は恋に堕ち、
愛を交わした。
そして、愛の行為が終わると、
フレイはヴァルキリーを呼び、
「素晴らしい時間だった。
もう、帰りなさい。」と言った。
フレイヤは大満足してしまい、
今まで誰とも行わなかった愛の行為を驚き、
ヴァルキリーとともに家に帰った。
これが、フレイとフレイヤが「聖なる契約」を結んだ瞬間である。
フレイヤが次の日、
ベッドから起きると、
また、手紙が書いてあった。
その手紙にはこう書いてあった。
「わたしとともに歩むことを決めるのであれば、
あなたは愛の使者になりなさい。
あなたは運命の恋人と出会うことになる。
そう、それが地上における私だ。
名前をロキと言う。」と。
これに、フレイヤは大興奮してしまった。
「ロキと会える。ロキと会える。ロキと会える。」と繰り返し、
頭の中でつぶやいた。
必ずフレイを倒すといった約束はどこ吹く風、
今ではもう完全にフレイの忠臣の部下になった。
フレイが学校に行くと、
友達であるイズーナに、
フレイは全てのことをありのままに話した。
そうすると、イズーナは、
「いいなあ、わたしもはやく愛を交わしたい」とか、
そういうことを女だけの世界で話しまくった。
そして、イズーナとフレイが図書室で資料をあさっていて、
その資料を持ち運ぼうとしたときに、
ひとりの男の人がぶつかってきて、
その資料は廊下にバラバラに散ってしまった。
男の人は
「ごめんなさい。わたしも片付けます。」と言い、
イズーナとフレイヤは、「ごめんなさい。」と言ったが、
フレイヤはこの時点で分かっていた。
「こいつがロキだ!」
そして、フレイヤは「あなたの名前は?」と聞くと、
男の人は「私の名前はロキ」と、そう、確かに言ったのだ。
フレイヤは、そこで気絶してしまった。
そして、ロキはどうしていいか分からず、
保健室にフレイヤを連れて行った。
しかしながら、帰らなくてはならない時間になって、
ロキは少し用があったため、帰らなければならない。
そして、イズーナは
「わたしも協力するから、フレイヤを抱いて家に帰りましょう」と言った。
そして、フレイヤが目覚めると、
フレイヤはロキの自宅のベッドで寝ていたのである。
運命の出会いを果たした男と女が、
同じ部屋でベッドに居て、
やることはひとつである。
彼らは少し話し合ったが、
フレイヤが昨日の体験のせいで我慢できなくなり、
「ねえ、やりましょう。やりましょう」と言うから、
ロキは仕方なくそれに応じ、
二人は付き合うことを前提で、
愛の行為をフレイヤは再び経験したのである。
ここに、フレイヤとロキという、カップルは成立した。
しかしながら、フレイヤは思った。
「あれ?フレイさまはどこに行ったの?
ロキは男の子で、普通の人だけど、
どこがフレイなの?」と。
だが、愛の行為にはまり込んでしまったフレイヤにとって、
そんなことはどうでもいいことだったのである。
彼らはそのまま恋人同士となった。
ロキとフレイヤは、それ以降、
中学校でいつも一緒に居るようになり、
フレイヤは、フレイの言った意味が分かるような気がした。
「こんなに気が合う友人のことを、
あの日のフレイさまのような、
何でも話し合えて楽しく過ごせるような人だって、
フレイさまはそう言いたかったんだわ、きっと。」と。
ロキとフレイヤのラブラブぶりに、
周りの人間は冷やかし、「ほら、できちゃった!」と言われたが、
そんな冷やかしが嬉しく思えるほど、
二人の愛は強かった。
ロキとフレイが出会ってから、
二週間が経とうとしていた頃。
再び、フレイの手紙が届いた。
「ロキは今からわたしになる」と。
フレイヤは、この意味がまったく分からなかった。
だが、ロキと出会って、
その意味が分かった。
ロキは自分のことを、
「本当は僕がフレイだったんだ」と言った。
そう、ロキは自らの素性を隠していて、
本当にロキがフレイだった。
そして、それ以降、
ロキは天上でのフレイとしての経験や、
ヴァルキリーと世界を巻き込んで大革命をした話など、
たくさんの多くのことを二人は話し合った。
フレイヤは、
「すごい。ロキが、フレイさまだったなんて」と最初は思った。
しかし、話しているうちに、
「なんだか、雲の上の人だと思っていたフレイさまが、
ロキくんのように、こんなにも身近に存在するなんて、
すごいことだわ」と思った。
フレイヤは、こうしたフレイ・ロキとのかかわりを経験して、
もう、分かってしまった。
次の日、ロキすなわちフレイに会うと、
フレイヤは言った。
「救いましょう。この世界、あなたとともにわたしも救います」と。
フレイは、「ありがとう。
本当は、僕は自分ではこの世界を救えない。
僕は、自分がこの世界を自身の過ちから、
滅びた世界にしてしまった。
どんなに努力し、地獄を耐え忍んでも、
滅ぼした当の本人が世界を救うことはできない。
あなたが本当に必要だった。
誰にも知ることのできないわたしのことを、
きちんと正しく理解してくれたのは、
そして、その上で世界を救う発想をしてくれたのは、
あなただけだった。」と言った。
フレイヤは、「わたしは分かっています。
あなたとともに、どんな試練でも、
わたしは乗り越えていきます。
さあ、行きましょう」と言った。
フレイヤは、言った。
「ひとつ、あなたに頼みたいことがある」と。
フレイは言った。
「何?」。
フレイヤは言った。
「わたしを、女神のような賢い女性にしてほしい。
フレイであるあなたと同じぐらい、
素晴らしくて才能のある、最高の女性にしてほしい」と。
フレイは言った。
「すごい。まさに、それがわたしがあなたに望んでいたことだよ。
そう、天上の世界に行こう。
僕たちの楽園はそこにある」。
もう一度現れたヴァルキリーに連れられながら、
フレイヤは言った。
「どこに行くの?」
フレイは言った。
「地獄、天国、楽園、自由な社会、冒険、希望、滅び、
どれがいい?」
フレイヤは言った。
「そうね、わたしは自由な社会がいいわ」。
フレイは言った。
「では、ヴァルキリーよ。
僕たちをオリオン座のリゲルに連れて行ってくれ。」
フレイヤは言った。
「どんなところ?」
フレイは言った。
「羊がたくさん居て、麦を育てていて、
神を信じていて、人々は幸福に暮らしている。
だけど、どこか物足りなさを感じている。
そんなところだよ。」
フレイヤは言った。
「そこで、どうやってわたしは女神になれるの?」
フレイは言った。
「そうだなあ、修道士としての経験を積みたいか?」
フレイヤは言った。
「いいわね。」
フレイは言った。
「それでいこう。」
二人は、1時間ほどのフライトの末に、
リゲルに降り立った。
リゲルにつくと、そこで門番が言った。
「ヘイムダルです。今日は何の用で?」
フレイは言った。
「新しい修道女だ。
迎え入れてほしい。」
ヘイムダルは言った。
「少しお待ちください。
・・・
良いでしょう。遠方のシュバルツ村へご同行願います。」
二人は、シュバルツ村の教会に行った。
フレイヤは言った。
「わたしに修道士なんてできるかしら?」
フレイは言った。
「難しい仕事じゃない。
毎日、聖書や古代の文献を書き写しながら、
みなとともに神に対して祈ることができればいい。
日本語は読める?」
フレイヤは言った。
「馬鹿にしないで。
私はもう中学二年生よ。」
フレイは言った。
「そう、あなたは中学二年生だ。
年齢が若いことが少しネックになるかもしれない。
だが、この村で1か月修道士として生きれば、
必ず何らかの女神の力を得られる。
神は導いてくれる。」
教会では、イースターの祭りをやっていた。
そこで、フレイが少し大きな声で言った。
「オーディンさま!なぜここに?」
オーディンと呼ばれた老人は言った。
「何かほかに考えられるかい?
新しい女神が生まれると聞いて、
かけつけてきたんだよ。
さあ、あなたがフレイヤだね。
みんなでお祝いの歌を歌おう。」
そういって、教会の人々は最初から分かっていたように、
フレイヤに対して讃美歌を歌った。
フレイヤは言った。
「本当に、ありがとう。
この境界で、修道女として働きたいのですが。」
教会の女が言った。
「良いでしょう。
私の名はシーフ。
あなたは今日から、この教会で、
日本語の聖書を書き写してもらいます。
また、わたしたちの教会では、
神に祈るだけではなく、
神と対話するという少し変なことを行いますが、
できますか?」
フレイヤは言った。
「できます。」
オーディンは言った。
「神とは何であるか、あなたに教えなければならない。
神は、この世界の救世主であるとともに、
守り神であり、創造主だ。
わたしたち北欧神話では、
聖樹ユグドラシルとして、この神をまつっている。
ユグドラシルは、このシュバルツ村から少し離れた、
辺境の田舎にある。
だが、そこに行く必要はない。
シュバルツにも、同じユグドラシルを移植して作った、
ユグドラシルの子孫となる大樹がある。
このユグドラシルは、
本当に心を澄まして言葉を聞くと、
わたしたちに心の声で、
すべきことを教えてくれる。
どんなことでも聞いていい。
どんなことでも、必ず耳を澄まして聞けば、
何でも教えてくれる。」と。
新しいフレイヤの生活は、
今までの学校のふざけた授業とは全く違う、
真面目なものになった。
フレイヤは、毎日聖書を一行一行丹念に書き写しながら、
ユグドラシルの子孫に水をやり、
そして、神に対して祈った上で、
ユグドラシルに「今自分のやるべきことは何であるか」を聞く。
ユグドラシルは、簡単な言葉で、
しかしながら強烈に、はっきりと、言葉を与える。
なぜか、ヴァルキリーが最初に現れた時のように、
鮮明な光が見えて、
その光が消えた瞬間に、
ユグドラシルが何を言ったのかを思い出す。
一月後のフレイヤは、「強い女」になっていた。
それは、精神的に強くなっただけではない。
多くの民衆とかかわりあううちに、
学校の狭い世界では知ることのできなかった、
人々の苦しみ、絶望、そして楽しさや希望について、
多くのことを学んだ。
また、聖書に書いてあることを覚え、
イスラエルの歴史についても詳しくなった。
そして、フレイヤは最後に、ひとつの魔法を使えるようになった。
フレイヤの使えるようになった魔法とは、
「言葉による万物の創造」である。
フレイヤは、何でも何かの「言葉を言う」ことで、
その言葉通りの、どんなものでも、
まるでUNIXのコマンドを実行するかのように、
「宇宙において何でも創造することができる」ようになった。
何でもいい。
たとえば、「目の前のもの、色を黒に変えよ」と言えば、黒に変わる。
「世界よ、滅亡せよ」と言えば、滅亡する。
しかしながら、その通りのことは必ず起きるのだが、
実際にどんなことが起きるのかは、言ってみなければ分からない。
だから、世界を滅亡させたとしても、
何らかのそうした出来事やイベントが起きるだけで、
本当に自分の思い通り、世界の全ての人類を絶滅させることはできない。
そう、フレイヤは、
世界に関することが何でもできる、「万能魔法」の使い手になった。
立派に大人として成長したフレイヤに、
フレイは言った。
「おめでとう。今日で、修道女の修行は終わりだ。
だが、お祝いの言葉はそれくらいにしておこう。
地獄を経験する準備はできているか?」
フレイヤは言った。
「もちろん、いつでも。」
フレイは言った。
「本当だな?」
フレイヤは言った。
「そうよ、なぜ?」
フレイは言った。
「今から、あなたは巨人の星に行って、
巨人たち全員を、自分だけの力で倒さないといけない。
だが、安心してほしい。
わたしもついていく。」
フレイヤは言った。
「いよいよ、大冒険ね。
待ち望んでいたわ。
行きましょう。わたしの魔法があれば、へっちゃらよ。」
フレイは言った。
「行く前に、渡しておきたいものがある。
フレイの魔法の剣だ。
これがあれば、ほとんどの敵は、
一振りすれば簡単に倒れる。
だが、巨人はそもそも、アースガルズの多くの神が恐れをなす、
神とは別のもっとも有力な勢力だ。
この巨人滅ぼしを、あなたにやってほしい。
それができるところを見せつければ、
オーディンさまはあなたに本当の救いのための責任を与えてくれる。」
フレイヤは、魔法の剣を手にして、言った。
「素晴らしいわ。
私には、この魔法の剣の素晴らしさが分かります。
これは最強ね。
どんなに強い敵も、この剣には勝てないわ。」
巨人の星、ヨーツンヘイムに来た二人が見たものは、
この世の終わりのような、
秩序の崩壊した最悪の世界だった。
ギャングが横行し、
人々は何の安心も安全もなく、
ただ今日の一日を生きるために、
巨人たちに泣いてすがりながら助けを求める。
巨人たちは、助けを求める人々を迫害し、
すべてのものを奪った上で、
手をあげるものは無残にも殺害し、
巨人同士で戦いや争いばかりする。
フレイヤは言った。
「まるで、北斗の拳だわ。」
フレイは言った。
「あなたは、この戦場で、
勇敢にも戦って全ての巨人を倒さなければならない。
しかしながら、安心してほしい。
フレイの魔法の剣があなたを守ってくれる。
負けることはない。」
フレイヤとフレイのもとに、ひとりの巨人が近寄ってきた。
明らかに、雑魚だ。
フレイヤに対して、巨人は言った。
「名を名乗れ。何の目的でヨーツンヘイムを訪れた?」
フレイヤは言った。
「名乗る必要はないわ。」
フレイヤはそういうと、巨人に対して勇敢にも取っ組み合いをしかけ、
魔法の剣によって、一振りで巨人を倒した。
「ほら、この剣は最強よ。
何も怖くないわ。」
それ以降、巨人がフレイヤに近づけば近づくほど、
フレイヤは簡単に巨人を倒していく。
フレイは言った。
「これは最強だ。
ここまでこの女のために、いろいろと準備して頑張った甲斐があった。
必ずこの女がヨーツンヘイムを消してくれる。
僕も、それを待ち望んでいたけれど、
これはオーディンさまに言えばものすごい報酬を得られる。
一生遊んで暮らせるな。」
二人はどんどん、ヨーツンヘイムの都市を攻略していくが、
2つ目の都市に差し掛かったあたりで、
オーディンが現れた。
「もうよい。わたしのもとへ来なさい。」
フレイもフレイヤも「なぜ?」と思ったが、
オーディンには考えがあった。
オーディンは言った。
「ヨーツンヘイムを滅ぼすことは、
今の宇宙にはまだ必要のないことだ。
その代わり、フレイよ。
何を考えてヨーツンヘイムに来た?」
フレイは言った。
「フレイヤに、世界を救う重責を担わせたい。」
オーディンは言った。
「まさに、そうだと思ったわい。
なぜ、わしに相談しなかった。
わしに相談すれば、すぐにでもそれをやらせるところだ。
よし、フレイヤよ。
あなたには、シリウスを訪れてもらう。」
フレイヤは言った。
「シリウスで、誰と戦うのですか?」
オーディンは言った。
「戦うのではない。
あなたは救うのだ。
あなたには、シリウスと呼ばれる未来都市で、
この宇宙を支配する女性大統領になってもらう。
あなたは自分でこの宇宙を支配し、
この世界を救う。
それが望みではなかったか?」
フレイヤは言った。
「大統領!?
恐れ多い。私が?中学二年生ですよ?」
オーディンは言った。
「それは分かっておる。
私があなたの大統領補佐官になろう。
何、問題はない。
単に、きちんとした国を作ればよいのだ。」
シリウスで、オーディンが訪れると、
人々が声援で出迎えた。
大きな拡声器で、オーディンは人々に言った。
「みな、おめでとう。
新しい、左派の大統領の誕生だ。」
フレイヤは驚いた。
「私が、左派の大統領?
社会主義の書記長になるのですか?」
オーディンは言った。
「さよう。そうか、まだ言っていなかったか。
今、この国は大混乱に陥っている。
左派と右派の抗争の結果、
宇宙にまたがるマルス国とアポロン国の戦争が行われている。
あなたは、新しい左派の大統領となって、
マルス国とアポロン国の首脳と対談し、
両国を結び付け、宇宙全てを平和にする。
そのための、国際協調のための重要な女性大統領だ。」
フレイヤは言った。
「ああ、なんという重責。
くらくらしてくるわ。」
オーディンは言った。
「人々がスピーチを求めている。
大丈夫。中学二年生のあなたには、
誰も優れたスピーチは期待しない。
自分の思うところをはっきりと言いなさい。」
フレイヤは分かったような顔をして、
スピーチを行った。
「みなさん、戦いは意味のないものです。
わたしは、独裁国家が嫌いです。
なぜなら、悪い愛を信じて、悪い愛に基づいて行動するからです。
わたしたちは、悪い愛に乗せられてはいけません。
悪い愛ではなく、良い愛を信じなければいけません。
この宇宙が暗闇に陥っている理由は、
何が善であるか、何が悪であるか、分からなくなっているからです。
人々は、自分の善こそ善であり、他の善は全て悪だと思っています。
人々は善を悪と言い、悪を善と言うのです。
理解し合うことで、わたしたちはひとつになれます。
本当に必要なことは、争い合うことではありません。
本当に善を信じることができる人間は、
暗闇の中でもはっきりとした光を見出すことができます。
わたしたちの必要なことは、善を信じることであり、
同時に、悪い愛に基づいて行動せず、良い愛に基づいて行動することです。
そうすれば、マルス国とアポロン国の戦争も、
必ず終わらせることができるとわたしは信じています。」
人々は、大声援をフレイヤに向かって行った。
実際、フレイヤは具体的な解決策を何か示したわけではない。
だが、「善が何かみんな分からなくなっている」ということが、
暗闇と混沌の中に居る、人々に光を見出させた。
フレイは、人々の歓声を聞いて、「やった!」と思った。
オーディンも、大満足の表情だった。
しかしながら、フレイヤは厳しい表情をした。
「こんなことで、本当に宇宙をまたにかける大戦争を、
終わらせることができるのだろうか。
わたしには自信がない」とフレイヤは思ったのだ。
新しい大統領になり、支持もとりつけたフレイヤは、
たくさんの雑務をこなす必要に迫られた。
分刻みでスケジュールが組まれ、
大統領としての決定を求められる。
フレイヤは、難しい決断を迫られることもあったが、
そのたびに、「フレイを倒すと誓った時のこと」を思い出した。
「あの頃の自分が、今の自分にとって
必要なこと全てを分かっている。」
フレイヤは、「まるでフレイを倒すかのように」、
シリウスでの大統領の職務に、「全力でまっすぐにぶちあたっていた」。
彼女は、3か月、半年、1年、5年とすぎるうちに、
どんどん有能になっていき、
宇宙全てのことを知り尽くした「天才大統領」になった。
そして、宇宙の情勢は次第に変わってきた。
アポロンが弱体化しつつあったのである。
フレイヤは、これを好機と思い、
水面下で誰にも知られないようにしながら、
悪の独裁者政府に対するクーデターを起こそうとする勢力と接近した。
その結果、アポロン国は崩壊し、マルス国との平和が実現したのである。
フレイヤは、大統領の任期を6年で満了した。
フレイは、「大統領閣下、わたしはフレイです」と言った。
フレイヤは、「何をそんなにかしこまっているの?
あなたはわたしの恋人よ。
結婚式をあげましょう。
宇宙の人民全てにウェディングを公開して、
宇宙の星々全てを旅するのよ。」
そう、ここで、この物語は終わりである。
おしまい。